Vitalik Buterin氏が2015年にローンチした暗号資産の二大巨頭のひとつ「イーサリアム」が、ついにその新しい形へと変貌する第一歩を踏み出そうとしています。イーサリアムと聞けば、もはやそれが何を指しているのかはあらかたわかる人が増えてきたのではないでしょうか。(もうひとつはビットコイン)
イーサリアムは暗号資産業界で2番目に大きな時価総額を誇るコインであり、イーサリアムブロックチェーンのネイティブトークンでもあります。イーサリアムの特徴はビットコインとは異なり、ブロックチェーン技術の上により広域な金融システムを展開していることにあります。とはいっても、現在ではSolanaやAvax、Nearなどの新しいL1、L2の強豪やDAppsの登場によって、その勢いに陰りが見えてきています。
イーサリアムは、2013年から開発が進められており、順にフロンティア、ホームステッド、メトロポリス、セレニティの4段階をへて完成となるように設計されているようです。そして、Mergeというのはその中のセレニティの第一段階に当たる作業であり、いろいろと情勢を鑑みて内容が変わってきて遅くなっていました。
✔ フロンティア
✔ ホームステッド
✔ メトロポリス
✔ セレニティ
⇒ Merge【今ここ】
⇒ Surge
⇒ Verge
⇒ Purge
⇒ Splurge
セレニティのことをしばしばイーサリアム2.0と言ったりしますが、これはMerge後のイーサリアムを指す言葉でも使われていました。しかし現在はあまり使われていないのも事実です。
Mergeには、さらに2つのフェーズがあり、最初のフェーズが、ビーコンチェーンとイーサリアムメインネットのマージになります。そして、そのあとにシャードチェーンという、イーサリアムのスケーリングに重要な役割を果たすツールの実装を行います。
実は、このMergeが遅れた理由は、シャードチェーンの実装が問題になったからだと言われています。なぜなら、2021年末のイーサリアムの利用者の急増が原因です。イーサリアムの容量をオーバーしてしまい、また、それ以上にほかの「イーサキラー」といわれていた各種ブロックチェーンが軒並み「Proof of Stake」というコンセンサスアルゴリズムを取っていたため、もともとProof of workだったイーサリアムは路線変更を選んだというわけです。
ちなみに、シャードチェーンの実装と並行して、zkロールアップも考えられていましたが、これは飽くまでもスケーリングを手助けする案の一つであることが重要であり、Mergeの項目に予定されていたわけではないということが言われています。
Proof of Stakeへの移行は、もともと2022年の4月から6月付近を予定されていましたが、事情によって下半期へと延期になりました。では、その事情とは何だったのでしょうか。
一概には言えませんが、Beikoという関係者の発言からみると、シャドーフォークの結果を憂慮したものだと言われています。イーサリアムはすでに巨大なネットワークになっており、その根幹であるシステムの変更になるため慎重に行うという意味合いと考えられます。
コンセンサスアルゴリズムが変わることで、これまでビットコインと同じだったProof of Workから卒業することになり、いろいろな採掘デバイスが不要になります。それは、ある程度今までのマイナーが不利になることはありそうです。
とはいっても、現在暗号資産業界の詐欺やポンジスキームの温床になっているのは中央集権取引所ではなくDEXであり、DeFiです。今年の初めからこれは想定できましたが、いよいよ一般的にDeFiが認知され、それは最早「ラガード」の餌食になってしまったようです。
その中で、プルーフオブステークというある程度成熟しきったシステムに変更するわけであるイーサリアムは、非常に注目の的になっています。プルーフオブステークは、バリデータの保有するコインの枚数によってブロック生成の権限が与えられ、報酬を受け取ることができます。これはステーキングという行為として知られており、分散型金融では利潤を得る手段の一つとして知られていました。しかし、現段階では、市場のシュリンクもありそこまで注目されてはいないように思えます。
そのステーキングができるようになるということで注目されているのですが、イーサリアムのステーキング自体はできることはできます。しかし、それは最低ステーク量が32ETHであったり、ロック期間があり預けたら引き出せなかったりと、いろいろとリスクオンなものでもあります。それを解消すべく、リキッドステークなどのサービスも出てきていますが、stETHはディペッグしたりと不安定であります。
この移行が成功するかどうかは、イーサリアムの今後の活動次第だと言えますが、イーサリアムにはその正当性を懸念する声も非常に多くあります。それは、ビットコインやSolanaなどのほかのプロジェクトを見たときに感じるものでもあり、もっと言えばブロックチェーンや暗号化技術など、広くテクノロジーを「どう使うか」「何を目的とするのか」「どのような意味があるのか」といった風に考えたときに思うものでもあります。