世間に名をとどろかせたOpenAI社が出したワールドコイン、それは現在認証を経ればトークンがもらえるとして世界中のOrb承認所に行列ができている。しかし、それと時を平行にして、ステーブルコイン界隈においても大きな動きがあった。その一つがPYUSDだろう。
大手デジタル決済サービス企業であるPaypalは、8月7日に新しい通貨「PYUSD」を発行することを発表した。PYUSDはいわゆるステーブルコインといわれるもので、その価格が乱高下することなく法定通貨とペグして動くことで知られている。
ワールドコインの熱狂の裏に隠れてあまり知る由がないPYUSDだが、これは大手金融としては初の試みであり、暗号通貨の界隈に新しい風が吹いていることを象徴する出来事といっていいかもしれない。
現在において、ステーブルコインの未来は楽観視されている。市場規模17兆円ほどのマーケットは今後5年で400兆円規模にまで膨れ上がるというデータもある。また、日本や米国などG7各国においてもステーブルコインを導入に意欲的な意見が多くみられ、今後は導入されていく流れがさらに本格化していくものと予想できる。
しかし、ステーブルコインが世界の市場に姿を現したとき、それが一種の通貨代替的弊害を生むかどうかという点は議論される余地のある所として認識されている。やはり、既存の法定通貨圏に全くの新顔であるステーブルコインが入り込むことによって影響を受けるセクターもあるということらしい。その代表例が新興国経済である。
新興国経済においてステーブルコインのウェイトはまだ小さいものの、それが世界的な潮流となって表れた時、そういった国ほどステーブルコインの影響が無視できなくなるのではないかといわれている。いわゆる通貨代替が起き、国家のコントロールが効きにくくなるという問題が懸念されている。
いうまでもなく、お金は一種の文明コントロール要素である。お金があるからこその秩序があるわけだが、それはあくまで地域圏内での影響にとどまるものであり、不安定な存在となるような要請はどこにもない。
新興国というと、インドの存在は無視できないところがあるが、インド政府は国産ウェブサイトにブロックチェーン署名を実装することを提案しており、クリプトに対して強い拒否反応があるわけではないようである。しかし、暗号通貨事態に対しては依然として慎重な態度を鮮明にしており、今後の動向が気になるところである。
2022年に壊滅的被害を受けた暗号資産界隈は、今年に入ってからやや回復基調に差し掛かっている。しかし、この分野におけるユーザーの大半は欧米諸国ではない。暗号資産の普及率ランキングのトップを走るのはベトナム、次いでフィリピン、ウクライナにインドと続いており、白人先進国家はトップ10にアメリカただ一つしかない。
これは一つに、クリプトカレンシーが有色人種・低所得層の使用率が高いからであり、同時に普及が進んでいる地域は発展途上国に多く見受けられる。なぜそのような広がり方をしているのかはまだ未開な部分が多いものの、想定の範囲内ではこれまでの白人経済圏に対する好ましくないイメージの表れだという説もある。
これについては、いろいろといい方があるかもしれないが、確かに従来の堅苦しくことが全く進まないような経済圏というイメージは暗号通貨を利用するものからしたら強く感じざるを得ないだろう。しかし、アメリカの黒人コミュニティがやたらと嫌悪する「白人階級」に対して現状のクリプト産業をてこに新しさを見出すのは多少ずれているようにも思える。
上記にも紹介したように、ステーブルコインに対して大手金融機関の手が伸び始めていることは確かであり、上手くやればクリプトすらも彼らが掌握してもおかしくはないからだ。