黄金に輝く金塊100トンが遥か彼方の惑星に現れ、替わりに地球の海面に没したアフリカ大陸の体積、約五一.七六立方キロメートルが無くなったが大勢に影響なしだ。真にもっていい商いが出来た。
ホタルクジラの生きのいい奴を土産に貰ったうえに、日本円で六四四二億円の霊子《レイス》の残高が増えたんだから惑星カサンドラに立ち寄ったのは本当に運が良かったと言えよう。
「流石は霊子バージョン三.0ね。アルドさん、今の速度は?」
「いわゆる光速の二五六倍です。惑星カサンドラから約一光年の距離です」
「実験は成功だわ、超光速航行中の大質量のトレードの成功。ついに、新たな仮想通貨の時代の幕開け、魂の絆を因果で結びし霊子V三.0よ!」
「うん、ネコさん。もしかしてハイテンションなのは、超光速酔い?」
「いいえ、不眠不休で作業を続けた研究者が時々踏み込む魂の迷宮よ。そこは気にしないで!」
「マスタ、また夜空の星が見えなくなりましたね。昨日までは見えていたのに今宵はまた三つの月が見えるだけ」
「また、竜が悪戯しているんだろう。ネコから届けられたこのクジラは美味いな。特に夜にこの輝く身を食すのは興が乗るものだ」
「ホタルクジラと呼ぶそうです。なんでもカサンドラという星の名産とか」
複雑に周りを映し込む青いドレスを着たホムンクルスの少女が、光輝く刺身を口に頬張ると目を細めた。
「下僕一号、お前も竜の元へ行き新しい世界をその目で見て来るが良い」
「そんな、マスタを一人置いて行けません。それに七ニ柱の魔人のうち、未だバアルを探し当て使い魔に出来ておりません」
「まあ、行き詰った時は息抜きも必要だ。なに、我はいつでも何処へでも其方の元にはすぐに行ける。宇宙を見て参れ、我が娘、・・・・・・」
「わかりました、夜明け後に出発します。それまで、お側にお仕えさせて下さいまし」
「ああ、・・・・・・わかった」
「ネコ船長、乗船申請がありますがどうしますか?」
アルドが穏やかにネコに尋ねていた。
「誰だにゃ、この忙しい時に?」
「下僕一号というそうです、人間の名前の範疇では結構な偏差がありますね」
「なにー、こ、断ったり。返答が遅れたら後が怖いにゃ。許可するにゃ、すぐ乗船させるにゃ」
「・・・・・・ ふーん、船という割には揺れないのね。許可ありがとうね、ネコ。ところで、竜はどこ?」
ホムンクルスの少女が、コントロールルームを見渡しながら訪ねた。
「ご主人ならまだ、部屋でお休みにゃ」
ばた、ばた。
「マスター、お久しぶりです」
使い魔のアンドロマリウスが慌てて、下僕一号の前に跪く。
「アン、変りは無かった?」
「はい、針路上に敵影は見当たりません。オールグリーンです」
「そう、温い生活で弛んだ竜に活を入れてやるんだから。見てなさいよ」
「お、お手柔らかに願いますマスター」