どうもふくねこです。
ある方の記事で「ICO詐欺の立件の可否」について書かれていたのですが、
みなさんが気になるのって刑事上の詐欺よりも
民事上のICO詐欺じゃないですか??
別にその人が刑務所に入るどうこうはどうでもよくて、気になるのは金銭やBTCを払った分が返ってくるかどうかじゃない?
てなわけで初心者向けの法律講座をしてみたいと思います!
連載するかはわかりません!(笑)
知ってる人はごめんなさい(笑)
>もくじ・民事上の詐欺との刑事上の詐欺の違い
・ICO詐欺の事例を用いて検討してみよう!
そもそも詐欺と言っても詐欺には2種類あります。民事上の詐欺と刑事上の詐欺です。民事とは、民法が適用される場面のことを言い、当事者で争う場合のことを言います。つまり、民事上の詐欺をめぐる争いでは、被害者VS詐欺者となるわけです。
それに対して、刑事とは、刑法が適用される場面のことを言い、当事者で争うわけではなく、悪いことをした人に罰を与えるために、国に代わって検察官が詐欺者と争います。つまり、国(検察官)VS詐欺者なわけです。
なにが違うかというと目的がそれぞれ違います。
民事は被害者を救済するため、刑事は加害者に罰を与えるべきか判断するために行われます。
ではそれぞれの条文をみてみましょー
まずは刑事上の詐欺
刑法246条(詐欺)
1、人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2、前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
条文にもある通り、ここには「お金を返してもらえる」とは書いていません。なので刑事上の詐欺に当たってもお金が返ってくるかはわからないわけです。
ちなみに、1項の「財物」とは有体物を指すと考えられていて、仮想通貨は電子上にしか存在せず「財物」とみなすことができないことから、仮想通貨の詐欺罪は2項により成立します。
次に民事上の詐欺です。
民法第96条(詐欺または脅迫)
1、詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2、相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において は、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3、前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
読んでみて気づいた方いるでしょうか?
民法の詐欺の条文にも詐欺られたモノを取り返せるとは書いていません!!
取り返すには別の条文を使う必要があります。それが次の条文です。
民法第703条(不当利得返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
上のどちらの条文を使ってもかまわないですが、「詐欺」に当たると判断されれば損害賠償請求、もしくは不当利得返還請求をすることができます。
ほかにも、民事上の詐欺と刑事上の詐欺との主な違いとしては、もし被害者が途中で詐欺に気づいて財物の交付をやめた場合、民事上の詐欺は成立しませんが刑事上の詐欺では詐欺未遂罪が成立します。
また、民事上の詐欺の場合、もし詐欺が認められても詐欺者が詐欺について何も知らない人に詐欺で得たものを渡しちゃうと被害者は96条3項により取り返せなくなります。(もちろん、その何も知らない人から取り返せなくなるだけで詐欺者に損害賠償は703条により「利益の存する限度」で請求できます!)
長くなりました、、、
さいごにICO詐欺についてどうなるか考えていきましょー
一応刑事上の詐欺は成立はしますが、相手は海外にいるので立件はできません。日本国内に当該ICOの責任者がいれば可能ですが、まず不可能でしょう。
民法の適用範囲については「法の適用に関する通則法」というのがあるので、それをみてみましょう
第十条(1~2項省略)
3 法を異にする地に在る者に対してされた意思表示については、前項の規定の適用に当たっては、その通知を発した地を行為地とみなす。
第十四条 事務管理又は不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因となる事実が発生した地の法による。
条文によると、日本法が適用されると考えられます。
もちろん相手国の法の適用がどのようになっているかで問題は変わってきますし、このように解釈できるとしても相手に訴状を届ける方法や強制処分を下す方法がない以上、意味をなさないでしょう。
結論:詐欺による被害額返還はムリ!
<国内の場合>
まず、刑事上の詐欺の定義は「相手方の処分行為を誘発する現実的危険のある行為」なのですが、ICO詐欺の場合、「買えば絶対もうかる!!」「○○に上場予定!!」などの売り文句に根拠がないことが明白かどうか、掲載ホームページの内容が嘘であるかどうかなどが重要になります。取引の慣行上行われる駆け引きの範囲であれば相手の処分行為を誘発するものであったとしても許容されるので、そういった売り文句やICOでのPR行為が明らかにウソだったと証明しなければなりません。ICOは購入者もリスクを承知のうえで購入するという投機的性質上、こういった事情が明白であるかどうかが大事になります。
次に争点になるのは、加害者に故意があるかどうかです。つまり、だますつもりでICO詐欺を働いたのかということです。そりゃそうだろ!って思うかもしれませんが、加害者側が「ワザとじゃなくて経営上の失敗でなってしまっただけだ!」というのが証明できてしまえば、故意が認められないとして詐欺罪が成立しないことになります。加害者の故意を証明するには、加害者が実際にコインを配布したかどうか、コインの発行元に経営の実態があったか、加害者にコインを買わせるためにウソの情報発信をしていた事実があるかなどを証明することが大事になります。
民事上の詐欺の成立には「加害者が欺罔行為(真実でない事実を真実であるかのように表示する行為)により、被害者が錯誤(勘違い)による意思表示をすること」が必要です。なので、ICO詐欺では、ICOに関する加害者の情報発信内容が真実でないこと、被害者はそのウソの情報を信じたためにコインを購入した(情報がウソなら購入していなかった)ことを証明する必要があります。
詐欺が成立すれば、不当利得返還請求により被害額の返還を受けることができます。この被害額は「利益の存する限度」という条件付きになっています。利益の存する限りとは現存利益を指し、例えばICOにより100BTCの調達に成功して加害者がそのBTCで10000XRPを購入した場合、10000XRPの返還を受けます。100BTCで車を買った場合はその車を競売にかけて売却された額の返還を受けます。
この現存利益にはいわゆる「浪費」は含まれないと考えられており、もしICOで調達した100BTCを加害者が全部FXに溶かしてしまった場合、返還を受けることはできなくなります。
また、上の例でいうと、車を競売で売却した額の返還では実際の被害額よりもかなり減るのでできれば車を売った人から100BTCを取り戻したいところです。そこで大事になるのが、車を売った人が加害者の詐欺を知っていたかどうか(96条3項の「善意の第三者」にあたるか)が大事になります。もし知っていれば、その車を売った人に直接返還請求をすることができます。
冗長になりましたね、、、
以上ふっくんでした!
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