昨今のSFでは、よくタイムトラベルものがよく挙げられる。その派生として、タイムリープやマルチバースといった時間の概念を取り扱う作品も生まれている。
それだけ、現在の人間にとって、時間とはかけがえのないものだと考えられている。過去は戻りたいし、未来は早く知りたいものなのだ。
そして、考古学者だってそれを望んでいる。
15年ぶりに、彼が、最後の冒険に帰ってくる。
「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」 公開2023年6月30日(日本)
時というものは、残酷で必ず過ぎていく。だからこそ、考古学という学問は、意味を成す。かつて、私たちの祖先から生き方を学び、これからの生き方に生かす。その先に私たちがあり、今がある。
紀元前から受け継がれる血筋は、時に争いを生み、時に力を合わせて試練を乗り越えてきた。
その最終章たる本作は、ひとつの物語の締めくくりに相応しかったとおもう。
考古学者にとって、長年の研究が身を結ぶときは、その真実にたどり着いた時であろう。それは、過去を辿ることで得られるロマンだ。
こと、ジョーンズ博士にとっても同じことである。過去に行って、それまでの立証がなされた時の幸福は、至高たるものだろう。一個人として、到達しうる喜びとはそういうものだ。
だが、本当に、それが終わりなのか。人が人でいる以上、あなたには家族がいるし、あなたを待つ人がいる。
身勝手とまではいわないが、1人の幸福を求めることのみが生きる形ではない。あなたが追い求める幸福その上に、あなたの身の回りの人がいることをどうか忘れないでほしい。
あなたが犯す過ちを最も悲しむのは、あなたではなくあなたの周りであるのだから。
独りだとは思わないでくれ。
さらば、インディ・ジョーンズ博士。
衰えを知らないその精神を。
それでは、それでは。