書名 カラフル
著者 森絵都
発行 文藝春秋
ジャンル 転生もの
ページ数 259
ぼく 魂だけの存在。前世で悪事をはたらいた。上級天使によって期限付きで小林真の肉体の中に入る。前世の罪を見つけるように言われる。
プラプラ 下級天使。ぼくのガイド、相談役。
小林真 美術部所属の中学生。絵がうまい。容姿と背丈にコンプレックスを持つ。睡眠薬で自殺し、ぼくの魂が入る。
満 高校生。真の兄。真への言葉が悪く、愛情を心に隠す。
父 人当たりのいい真・満の父。会社のトラブルに乗じて昇進する。
母 何をやっても続かない、飽きっぽい性格の真・満の母。真の自殺の遠因となる。
ひろか 色気と狂気を併せ持つ不良の中学生。真の自殺の遠因となる。
唱子 小柄な真の同級生。真が好き?
早乙女 真の同級生で一番の友人。
「ぼく」は魂となった自分を発見します。自分が誰だったか思い出せません。天使プラプラに、死んだ小林真という中学生の肉体に入り、期限内に前世の罪を見つけるよう申し付けられます。
小林真となったぼくは、家族や学校での周りの人達を俯瞰して見ますが、徐々に自分らしさを出していきます。周囲は真が変わったことに驚きますが、少しずつそんな真を受け入れます。
数か月後、真と周りの人達へ情が湧き、真を彼らへ返してあげたいとぼくは望みます。プラプラはぼくに24時間の猶予を与え、前世の罪を思い出すようあらためて課題を出します。学校で唱子と話すうち、ぼくは自分が誰だったか、前世の罪は何だったか思い出します。
真の好きな絵と関連し、人や世界はいろんな色(側面)を持つという著者のメッセージです。
ぼくのなかにあった小林家のイメージが少しずつ色合いを変えていく。
黒もあれば白もある。きれいな色もみにくい色も。
ときには目のくらむほどカラフルなあの世界。あの極彩色の渦に戻ろう。
---- 本文より抜粋
1990年代後半に書かれた作品ですが、現代の流行のテーマがこれでもかと詰め込まれ、大ヒットしたのもうなづけます。
まず、転生です。現在、転生はジュブナイルとして一大テーマとなっています。人はこれまでの人生をやり直したいものなのでしょうか。
次に、性とヤンデレです。真の後輩のひろかは真にはやさしく接しますが、実は不良で売春で稼いでいます。あっけらかんとして倫理観は皆無で、病気や妊娠に対する不安もなく、ときどき人を傷つけたり破壊したいという衝動にかられるという狂気をもはらんでいます。
それから、多様性です。カラフルとは多様性のことも表していると思いますが、ひろかはひろかのままでいい、真も真のままでいい、それを汎化すればあなたはあなたのままでいいという包摂性が表現されています。真は背が低く、頭もあまり良くないですし運動もからっきしでいじめられてもいましたが、そういったコンプレックスを持った人にはことさら響く小説です。大部分の人はなにかしらコンプレックスを持っているので、それも本作が大ヒットした一因でしょう。個人的には、ひろかはあのままでいいかは疑問ですが、ひろかがなぜああなってしまったのかを掘り下げるのはあまり意味がないことです。本作に弱点があるとすれば、そこでしょう。
ページ数は多めに見えるかもしれませんが、口語で書かれており短時間で読み切れます。中高生におすすめできる作品です。
以上