NHK大河ドラマ『どうする家康』第5回「瀬名奪還作戦」が2023年2月5日に放送されました。本多正信と服部半蔵が登場します。駿府にいる瀬名を救出するため、松平元康は正信を頼ります。
大久保忠世が本多正信を紹介します。後に正信は三河一向一揆で一揆側につき、一揆鎮圧後は出奔しました。正信の帰参を取りなしたのが忠世です。忠世が出奔中の正信の妻に塩や味噌、薪を送り続けたというエピソードもあります(宮城谷昌光『新三河物語 中』新潮社、2008年、44頁)。江戸幕府成立後の大久保と本多の対立からは想像しにくいです。
正信は三河武士達とは異質な存在です。詐欺師と毛嫌いされています。正信も三河武士達を怒らせる発言をしており、嫌われ者になることは無理ありません。後に石川数正が徳川家中で浮いて出奔することになり、正信が最後まで家康の側近であり続けたことが不思議です。
『どうする家康』の元康は真っ直ぐです。謀略家の正信と相性が良いのでしょうか。『どうする家康』の家康も『鎌倉殿の13人』の北条義時のようにブラックな狸親父に変貌していくのでしょうか。
服部半蔵は父が元康の祖父の清康と父の広忠に仕えました。清康は家臣に殺害されました(森山崩れ)。『どうする家康』では広忠も家臣に殺害されたとの説を採ります。清康や広忠を守れなかったことが汚名になりました。服部半蔵の忍者イメージと武士であったとする説の両者を満たす設定になっています。
今回の瀬名奪還作成は史実にないもので、徳川家康というエピソードに事欠かない人物のドラマで史実にない話を丸々一話使うことは大胆です。心から元康の家臣になるための人間ドラマを描きたいのでしょう。
瀬名の屋敷に忍び込む手勢は、伝統的な忍者装束です。忍者は跳躍しますが、いかにもワイヤーという動きです。CC批判が出たために昭和の特撮に逆戻りでしょうか。
元康は正信や半蔵達が成功しないと笑う家臣達に「命懸けで働いておる者を笑うな」と怒ります。家臣達が仕えたくなる主君です。三河武士には忠義というイメージがありますが、祖父の清康は家臣に殺されました。築山殿事件も信康を絶対に守ろうという家臣の動きにはなりませんでした。松平(徳川)家に絶対の忠誠を持っている訳ではありません。家康という個人の魅力があってのものでしょう。
これは今川氏真とは対照的です。関口氏純は「わしらが今川様に見限られておるのじゃ」と言います。氏真は家臣の人間関係を利用したスパイまで使います。まるで全体主義の警察国家の独裁者のようです。氏真は武将として生きず、和歌や蹴鞠に熱中したから長生きできたと位置付けられることが多いですが、『どうする家康』の氏真は多くの独裁者のように家臣からも見放されて滅びる末路になっても不思議ではありません。
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