楽天の三木谷浩史・代表取締役会長兼社長が2022年2月27日、ウクライナに10億円を寄付するとTwitterで表明しました。
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僕達にできることは本当に限られていますが、家族と相談し10億円をウクライナに寄付することにしました。
Consulting with my family, we Mikitani family have decided to donate 1 billion yen to Ukraine.
Attached is my letter to President Zaranskyy. Our hearts are with you.
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三木谷さんのTwitterのアイコンとヘッダーはウクライナ国旗になっており、Stand With Ukraineの姿勢を明確に表明しています。三木谷さんはTwitterのアイコンやヘッダー画像をウクライナ国旗にすることも呼び掛けています。
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賛同していただける方は、プロフィール画像やバックグラウンドをウクライナの国旗にして頂けませんか?
よろしくお願いします。日本もウクライナの人々と民主主義を応援しているというメッセージを送りましょう。宜しくお願いします。
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三木谷さんがウクライナを応援することは楽天の経営者として十分に意味のあることです。楽天のメッセージアプリViberはウクライナのスマホ利用者の97%が導入しているとされます。日本におけるLINEのような位置付けです。ウクライナの人々は楽天にとって顧客になります。
三木谷さんがウクライナを応援することはIT企業経営者としても十分に意味のあることです。ウクライナはIT立国です。オフショア先として発展し、優秀なエンジニアが育っています。メッセンジャーアプリWhatsAppの設立者Jan Koumはウクライナ出身です。
ウクライナ政府はデジタルトランスフォーメーション省を設け、「スマートフォンの中の国家」構想を掲げています。これは日本政府も見習う価値があります。「スマートフォンの中の国家」構想には電子政府で透明性を高め、公務員主導の計画経済下で横行した公務員の汚職をなくすという狙いがあります。日本政府も電子政府は推進していますが、効率化や利便性向上が中心で、公務員の裁量を減らし、透明性を向上する視点が乏しいです。
ウクライナが消滅することはITの世界の人々にとっては大きな損失です。これは逆にウクライナから見ればウクライナはIT立国であるために世界中のIT関係者のシンパシーを得られるということになります。IT立国は海外のIT企業から投資を呼び込めるだけでなく、有事において有形無形の支援を得られます。IT立国は有効なソフトパワーになります。
ロシアのウクライナ侵攻に対して日本は対岸の火事ではないとの主張があります。日本と最も国境の近い隣国がロシアです。ロシアが帝国主義的な発想に立つならば黒海・地中海に出るためにはウクライナ、太平洋に出るためには日本を抑える必要があります。ロシアはクリミア半島や千島列島を自国領土にしており、黒海にも太平洋にも直接出られるようになっていますが、それだけではロシア都合の安定的な海洋進出には不十分となるのでしょう。ロシアから見るとウクライナと日本は近い立ち位置になります。
ロシア側の表向きの主張は、ウクライナは純然たる外国ではなく、兄弟国となります。しかし、それを言うならばウクライナ西部のリヴィウはポーランドやオーストラリアの影響が強く、ロシア帝国の伝統とは無縁です。リヴィウも含めた全ウクライナを影響圏と主張することはスターリニズムの結果でしかありません。また、キエフ(ウクライナ語発音はキーウ)がロシア人の故地だからと言うならば、コーカサスやシベリアをロシアの領土とする資格がなくなります。
日本が対岸の火事ではなく、IT立国が有効なソフトパワーになると考えた場合は悲観的になってしまいます。コインハイブ事件のように日本の行政はIT立国を阻害するベクトルがあります。