テレビ朝日のテレビドラマ『相棒 season18』が2020年2月5日に第15話「善悪の彼岸~深淵」を放送しました。2週連続スペシャルの後編です。情動失禁が鍵になるという衝撃的な展開でした。シャーロック・ホームズを下敷きにする本格推理ドラマ風にしながら、情動失禁という物悲しさが残りました。
情動失禁は情動の調節がうまくいかない状態です。感情失禁(emotional incontinence)の方が知られています。感情の抑制がきかず、僅かな刺激で過剰に泣いたり、笑ったり、怒ったりします。典型は脳の動脈硬化や脳梗塞のために起こる脳血管性認知症の症状です。
タイトルに「善悪の彼岸」とあり、終盤では情動失禁者は善悪の彼岸にいると、情動失禁者を同情させるような演出になりました。しかし、情動失禁者に巻き込まれた被害者は迷惑極まりません。
杉下右京(水谷豊)の正義の矛先は情動失禁者にも容赦ないものであってこそ一貫性があるのではないかと感じます。情動失禁者には何を言っても仕方ないという感覚があるのでしょうが、これまで右京は善悪の価値観が完全に外れている人々を糾弾していました。
右京は冠城亘(反町隆史)が連続殺人のターゲットになると考え、亘に特命係を止めるように言います。これに対して亘は右京こそがターゲットになるのではないかと反論します。右京は、それならば良いと応じます。一見すると矛盾のように見えますが、自分への攻撃は良いが、他人が巻き込まれることは許せないという考えです。相手の嫌がるところを攻撃する卑怯者に対応した健全な感覚があります。