NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が2022年8月21日に第32回「災いの種」を放送しました。源頼家は危篤に陥っている間に妻と息子と妻の実家が滅ぼされるという悲劇に見舞われます。頼家が怒ることは当然です。
ドラマの比企能員は小悪党ですが、比企氏は源頼朝が信頼し、重視した一族でした。比企尼は流人時代の頼朝を援助しました。源義経の正室は河越重頼と比企尼の次女との娘です。源範頼の正室は安達盛長と比企尼の長女との娘です。比企氏を中心に頼家と義経、範頼はつながっていました。
頼朝が弟達を殺したことは頼家のライバルを消す政治家としての冷徹さと評価されがちです。むしろ頼家にとっては義経や範頼が生きていた方が源氏の長老として将軍家を盛り立てる方向に働いたでしょう。
『吾妻鏡』では比企一族襲撃時に一幡と若狭局が焼死したとします。『愚管抄』では一幡は逃げ延びたが、北条義時が差し向けた刺客に殺されたとされます。ドラマでは二つの説が共に後世に伝わることが説明できる内容になりました。
北条義時はブラックになりました。大河ドラマの主人公として珍しいです。冷酷な暗殺者と描かれた善児に人間らしい情が出たために逆にやりきれなさが強まります。仁田忠常の死は史料と異なる展開ですが、これもやりきれなさを強調します。
前半では源頼朝がブラックであり、「全部大泉のせい」と全国の視聴者に嫌われました。これからは小栗旬が視聴者に嫌われるのでしょうか。大泉頼朝は冷酷なことをしながらも、どこかしらユーモラスさがありましたが、義時にはそれすらありません。
義時は姫の前(比奈)と離縁します。その前に阿波局(実衣)は比企一族である姫の前の殺害を要求しました。後の源実朝殺害後に阿野全成と阿波局の息子の阿野時元は将軍継承を主張しましたが、義時が鎮圧しました。義時が阿波局の子を大事にしないことは、ここにあるかもしれません。
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