NHK大河ドラマ『どうする家康』第36回「於愛日記」が2023年9月24日に放送されました。於愛視点の回想が入ります。於愛は「殿はお慕いするお方ではない」と言います。家康は、お葉(西郡局)からも慕われていませんでした(第10回「側室をどうする!」)。相思相愛は瀬名(築山殿)だけでしょうか。築山殿と不仲だったとする描かれ方が定番の中で意外性を貫いています。
『どうする家康』第10回「側室をどうする!」側室オーディション
今回は歴史の動きよりも家庭劇要素が濃厚な回です。『どうする家康』は家康の人生を描く歴史ドラマであり、関ヶ原の合戦や大坂の陣は期待されます。ナレーターが「神の君」と言っているため、東照大権現となるところも描写する必要があります。
このペースで描写しきれるかが気になります。『真田丸』では9月18日放送の第37回「信之」で関ヶ原の合戦が終わりました。『真田丸』は武田滅亡から放送開始という違いはありますが、大坂の陣を描くならばペースを速める必要があります。
家康は北条との戦を回避しようと交渉します。北条氏政の弟の北条氏規の上洛にこぎつけますが、豊臣秀吉は強引に沼田領を裁定します。ここは通説と異なります。通説は北条氏が臣従の条件として沼田領裁定を求めたとします。
秀吉は沼田領の三分の二を北条氏、三分の一を真田氏の領地としました。沼田領は真田氏が実効支配しており、通説は北条氏に有利な裁定とします。これに対して『どうする家康』では家康が沼田領を全て北条氏に渡す方向で話を進めていたのに秀吉が強引に一部を真田昌幸の領地にしたとします。
『どうする家康』の立場では名胡桃城事件の意味も変わってきます。通説は北条氏の不法な侵略であり、それ故に小田原征伐になったとなります。これに対して『どうする家康』では秀吉の裁定が不公正なものであり、北条氏が不満を持つことは当然となります。
豊臣政権は惣無事によって大名間の私戦を禁止し、天下静謐を実現したと見られています。これに対して豊臣政権は対立する大名の一方の側に立ち、対立相手を軍事力で屈服させただけとの批判があります。『どうする家康』の秀吉の態度は正に豊臣の平和の欺瞞を描いています。
秀吉の新しい側室として茶々が登場します。市を演じた北川景子さんが茶々を演じます。『どうする家康』では家康と市に淡い恋心がありましたが、茶々は賤ケ岳の合戦を様子見した家康に不信感を持っています。家康が市と同じ顔の茶々に憎まれることは堪えるでしょう。
家康は大坂の陣でも茶々を殺したくないと思うかもしれません。市に思い入れのない徳川秀忠が大坂の陣では主戦派になるかもしれません。家康以上に秀忠が主戦派という描かれ方は珍しくないものです。
『どうする家康』は第35回からオープニング映像が新しくなりました。以下のように説明されます。「乱世を乗り越え、天下人となった家康の目には民や町、それらを見守るかのような富士の山。抽象から具象で夢や思想が形になっていくことを表現」
オープニング映像に登場する富士山を中心とした江戸の町は「名所江戸百景・するがてふ」を連想します。これは安政3年(1856)の作品です。ペリー来航が1853年であり、それより後です。徳川家康の大河ドラマで幕末の江戸が登場するならば、幕末を舞台とした大河ドラマ『青天を衝け』に徳川家康が登場しても不思議ではありません。
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