NHK大河ドラマ『どうする家康』第19回「お手付きしてどうする!」が2023年5月21日に放送されました。サブタイトルは結城秀康生母お万の話です。前回は三方ヶ原合戦で感動させましたが、今回は第10回「側室をどうする!」のようなドタバタ感があります。
『どうする家康』第10回「側室をどうする!」側室オーディション
武田信玄の死はあっさり広がります。武田軍の行軍の停止を説明するならば、それくらいしか考えられないでしょう。徳川家康は信玄の死を喜ぶ家臣に「敵とはいえ人の死を喜ぶとはなにごとじゃ」と一喝します。家康は時々良いことを言います。第5回「瀬名奪還作戦」でも正信や半蔵達が成功しないと笑う家臣達に「命懸けで働いておる者を笑うな」と怒りました。
『どうする家康』第5回「瀬名奪還作戦」本多正信と服部半蔵
信玄の死で一息ついた織田信長は足利義昭を追放し、浅井長政を滅ぼします。明智光秀は主君であった義昭に何の思い入れもありません。本能寺の変で義昭が黒幕だったり、義昭を擁立したりする可能性はなさそうです。過激なところも含めて信長に忠実なところは同じ脚本家の映画『レジェンド&バタフライ』の光秀と重なります。
映画『レジェンド&バタフライ』濃姫が織田信長を圧倒
長政の小谷城を攻めた羽柴秀吉は市と三人の娘を保護します。秀吉は気持ち悪さを発揮しています。秀吉は本能寺の変の後に主君であった織田信長の子を容赦なく殺します。それが不思議に感じない秀吉になりそうです。
瀬名は家康とお万の関係に激怒します。『鎌倉殿の13人』の北条政子に続いて怒れる正室です。浮気に怒る妻となると現代人感覚で一夫多妻の歴史を解釈していると批判されることもありますが、正室の権限に基づいて怒っています。当時の感覚に基づいた怒りです。
この時期の築山殿は孤立していたと描かれることが多いです。松平信康ら家族も石川数正ら家臣も瀬名を支持します。逆に家康が孤立しています。家康にとって三方ヶ原の合戦以上にピンチかもしれません。
お万は築山殿に虐められる可哀想な女性と描かれることが多いですが、『どうする家康』では強かです。女性が政治に関わることで戦のない世が作られると考えています。お万は瀬名に期待しましたが、築山殿事件で亡くなってしまいました。その役割は徳川秀忠正室の江が近いでしょう。過去の大河ドラマ『江 姫たちの戦国』につながります。
築山殿がお万に折檻したという話もあります。『どうする家康』の瀬名は、そのようなことはしませんが、折檻したという噂が伝わってもおかしくない展開になりました。三方ヶ原合戦敗走時の焼き味噌や小豆餅のエピソードもドラマでは直接描きませんが、そのような伝承が後世に伝わる内容になっています。独自性を出しつつ、定番の話にも配慮する巧みな脚本です。
次回5月28日は「岡崎クーデター」です。武田勝頼は岡崎城の分断を狙っています。築山殿事件は勝頼との内通が名目ですが、それは表向きの理由で織田信長または徳川家康が信康や信康配下の岡崎城派閥を危険視したことを根本理由とする見解が強いです。これに対して『どうする家康』の勝頼は非常に強そうで、武田信玄が自分以上と認める存在です。築山殿事件を勝頼という強敵との戦いの中で起きた悲劇と描くのでしょうか。
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