NHK大河ドラマ『どうする家康』第30回「新たなる覇者」が2023年8月6日に放送されました。清須会議、天正壬午の乱、賤ケ岳の合戦、北ノ庄城の滅亡が描かれました。織田家のヘゲモニーをめぐって、羽柴秀吉と柴田勝家が対立します。『どうする家康』では市が反秀吉の総大将という位置づけです。翻弄されるだけの女性ではありません。『鎌倉殿の13人』の尼将軍・北条政子を目指していたのでしょうか。
徳川家康は織田家の争いには距離を置き、信長が亡くなって空白状態になった甲斐、信濃の領国拡大を目指します。これは戦国大名としては合理的です。しかし、天下人を目指す上で正しいかは別問題です。
関ヶ原の合戦で毛利輝元は四国、上杉景勝は最上領に兵を出し、家康を攻撃しませんでした。自分の領地の周辺地域を拡大する戦国大名的発想と天下を目指す家康の視線の違いがあり、それが輝元や景勝を敗者にしました。この時点の家康が戦国大名的発想に立つことは自然ですが、『どうする家康』の家康は本能寺の変の前に天下を意識しています。領土を増やすだけでは中央の権力に対抗できないということを理解していません。小牧長久手の合戦で勝利したのに秀吉に臣従せざるを得なくなったことで学ぶのでしょうか。
甲斐と信濃は信長の領国でしたが、信長から統治を委ねられた河尻秀隆は国人一揆に殺され、森長可は本領の美濃に帰国し、空白地帯になりました。それを家康が自国領にしようとするものであるため、火事場泥棒のようなものです。しかし、『どうする家康』では秀吉も織田のために北条と戦っていると家康の行動を認めています。
市は幼い頃の約束から家康が助けに来ることを期待していました。それでも動かない家康はドラマの主人公としてはどうなのかと思いますが、家のために妻子を犠牲にした家康が幼い頃の約束で動かないことは一貫性があります。
本多正信は感傷を断ち切る冷徹な意見を述べます。総スカンとなりそうな正論ですが、重臣の酒井忠次と石川数正も賛成します。後に数正は秀吉への対応で孤立し、出奔しますが、現時点でそのような要素はありません。
家康が市と交わした約束を果たさなかったために茶々は家康に不信感を抱くことになります。大坂の陣につながる構図が生まれました。家康は噓つきという悪印象は方広寺鐘銘事件や大坂冬の陣の和議で繰り返されそうです。
方広寺鐘銘事件は卑怯な言いがかり
茶々は市の野望を継承します。茶々にとって秀吉は手段でしかないかもしれません。『どうする家康』の豊臣秀頼役はジャニーズJr.内グループ「HiHi Jets」の作間龍斗さんです。ムロツヨシさんの秀吉とはギャップがあり、秀頼が秀吉の子ではないという俗説も現実味が出てきます。
秀頼は馬に乗れないほど太っていたとする説もありますが、『どうする家康』の秀頼は異なるものになりそうです。颯爽とした秀頼となり、家康は脅威を感じて何が何でも自分が生きているうちに豊臣家を滅ぼそうとするのでしょうか。
『どうする家康』第29回「伊賀を越えろ!」99.9%の克服
『どうする家康』第28回「本能寺の変」立ち止まって中止する決断力
『どうする家康』第27回「安土城の決闘」信長と家康と光秀の三角関係
『どうする家康』第26回「ぶらり富士遊覧」本能寺の変の新たな黒幕説か