テレビドラマ『白日の鴉2』が2020年5月10日に放送されました。冤罪と貧困ビジネスをテーマにした重厚な前作に比べると、偶然で話が進む展開の粗さが目に付きましたが、むしろ警察が雑な捜査で冤罪を作る現実味が増しました。
警察は見込み捜査で恫喝的な取り調べを行います。大声を出して机を叩くことしかしていません。被疑者が殺された人物を飲みに誘い出したとストーリーを勝手に捏造します。殴られた跡を見れば被疑者の説明の裏付けになりますが、そのような基本的な調査も行いません。愛媛県警の女子大生誤認逮捕も、このようなものだったのでしょう。
探偵物では無能警察は珍しくありません。名探偵の名推理を際立たせる上で意味のある前座です。逆に言えば名探偵が無能警察の誤りをすぐに是正すると期待できるため、視聴者は無能警察に不快感をあまり抱かずに済みます。これに対して『白日の鴉2』は名探偵が鮮やかな推理を披露する作品ではありません。無能警察の不愉快さの印象が強く残ります。それは冤罪の恐ろしさを描く『白日の鴉』からの一貫したテーマになります。
『白日の鴉2』は悪人側の醜さも描きます。チンピラの言い訳の定番は「他人がした」と他人のせいにします。黒幕はまともな人間の倫理観が通用しない人物です。「腐った金の臭いがするレストラン」との評価は的を射ています。値段と価値は比例しません。高級感を出していても、臭いものは臭いです。病院は詐欺企業から寄付を受けていましたが、腐った金で寄付を受けていたことになります。寄付金分を被害者への弁済に充当したのでしょうか。
『白日の鴉2』の女将は森口瑤子さんです。森口さんは『相棒 season18』でも女将として登場しました。捜査権のない警察官が勝手に捜査する点も『相棒』と重なります。
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