元TOKIOの山口達也さん宅への家宅捜索にはPolice Harassmentの視点が提示されます。家宅捜索の理由を山口さんが否認したことへの警察の怒りと受け取れる報道があるためです(「異例の展開!山口達也が容疑を一転否認か 警察は〝怒り〟の家宅捜索」東スポ2020年9月24日)。否認の異種返しとして家宅捜索をしたのではないかという問題です。
山口さんは2020年9月22日午前9時半頃、酒を飲んでバイクを運転したとして、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで警視庁に現行犯逮捕されました。警察の取り調べで容疑を認めたが、検察の取り調べでは否認しました(「元TOKIO 山口達也さん釈放 検察の調べに容疑否認」FNN 2020年9月25日)。警察の取り調べが自白強要でなかったか問題になります。
日本の警察や検察が合理的な必要性を無視して、嫌がらせで権力を行使しているとの批判は他の事件でもなされます。カルロス・ゴーン出国に対する東京地検の弘中惇一郎弁護士の事務所への家宅捜索は検察の嫌がらせとの見方が出ました(「検察の嫌がらせ?腹いせ?ゴーン被告逃亡で弘中事務所を家宅捜索」MAG2NEWS 2020年1月29日)。警視庁赤坂署の労働組合事務所への家宅捜索も「捜査の名を借りた組合活動を破壊する嫌がらせ」と批判されました(布施えり子「警視庁が「キャバクラユニオン」家宅捜索 不当捜査で嫌がらせか」2018年8月23日)。
家宅捜索は裁判所の令状がなければできません。ところが、日本では「令状の発付には、裁判所のチェックが必要だが、その甘さから「自動発券機」とも揶揄されてきた」(「「自動発券機」どころじゃない 那覇簡裁の「無効令状」、刑事司法の信頼揺らぐ」弁護士ドットコム2018年12月5日)。
警察の嫌がらせは英語ではPolice Harassmentと言います。アメリカ合衆国ではジョージ・フロイドさんの暴行死(Killing of George Floyd)を契機にPolice Brutalityが大問題になっています(林田力「【共有】警察不祥事を英語にすると」ALIS 2020年7月5日)。多くの市民が怒りの声をあげた背景には日々の生活でPolice Harassmentを経験しているためでしょう。セクハラやパワハラに続いてポリハラも日本語になるかもしれません。
東京地検は東京地裁に山口さんの勾留を請求しましたが、認められませんでした。検察側は決定を不服として準抗告しました。これも棄却され、山口さんは24日夜に釈放されました。家宅捜索は釈放から約1時間後、山口さんが自宅マンションに戻ったすぐ後から始められ、日付が変わる直前まで行われました。
釈放された人物に対して飲酒運転容疑で夜間に家宅捜索することは極めて異例です。ここから大麻や危険ドラッグなど依存性薬物の問題があるのかとの疑問もインターネット上では出ています。ピエール瀧さんや沢尻エリカさん、槇原敬之さん、伊勢谷友介さんと芸能人の薬物事件が相次いでいます。一方で、そのような悪印象を与えることもPolice Harassmentになるでしょう。
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