首都圏では新型コロナウイルス(COVID-19; coronavirus disease 2019)の感染拡大を受けた外出自粛が要請されて初めての休日を2020年3月28日から迎えています。小池百合子東京都知事が東京都のロックダウンの可能性に言及して以来、自粛疲れなどという弛緩した雰囲気の引き締めには効果がありました。
東京都が東京オリンピック・パラリンピックの開催を目指し、新型コロナウイルス対策が遅れたことは批判の対象になるでしょう。シリコンバレーではFail Fastが合言葉です。早期に延期を表明できれば無駄な作業を減らせて、コロナウイルス対策に集中できました。オリパラの重しがなくなったことで、本腰を入れ始めたと感じます。
東京都と都に隣接する神奈川、埼玉、千葉、山梨各県の知事は2020年3月26日夜にテレビ会議を開催し、新型コロナウイルス感染拡大防止の共同メッセージを出しました(「5都県知事、「都市封鎖」回避へ共同メッセージ…若年層に慎重な行動求める」読売新聞2020年3月26日)。テレビ会議という形式は真剣さが伝わります。政府のコロナウイルス対策の会議は旧態依然とした会議であり、会議自体が感染拡大のリスクがあるのではないかと突っ込みたくなるものでした。
一方で若年層に慎重な行動を求めるとの内容は疑問です。新型コロナウイルスは世代を選ばないもので、世代を問わず慎重な行動は求められます。慎重さを求めたくなる愚行があることは否定しません。アメリカ合衆国では21歳の男性がコロナウイルスチャレンジCoronavirus Challengeと称して便座を舐めて、新型コロナウイルスに感染しました。アメリカ版ヤンキーの愚行です。
また、若年層を狙い撃ちにした理由として、若年層は自身に症状がなくても、他者を感染させる場合があるため、自分だけの問題ではないことを認識して欲しいとの思いがあるのでしょう。しかし、愚行も他者への影響も若者に限定されません。日本では成田空港で離陸直前の航空機内で新型コロナウイルスに感染していると発言したとして、偽計業務妨害の疑いで69歳の男性が逮捕されました(「成田で離陸直前に「俺、陽性」 業務妨害容疑で無職男逮捕」共同通信2020年3月27日)。
この種の昭和の冗談の感覚こそ21世紀には批判の対象となります。吉本興業ホールディングスの岡本昭彦社長のパワハラ発言「冗談のつもり」は社会的批判を集めました(林田力「吉本興業・岡本社長のパワハラ言い訳は何故腹が立つか」ALIS 2019年7月28日)。昭和の感覚こそ慎重さが求められます。
セグメンテーションをするならば世代よりも地域を考えるべきでしょう。中野セントラルパークサウスのコールセンターではクラスターが発生しました(林田力「中野のコールセンターで新型コロナウイルス9人感染」ALIS 2020年3月26日)。
ところが、この事実は公に発表されておらず、知らずに中野セントラルパークサウスに隣接する中野区立中野四季の森公園で遊ぶ親子連れも見かけました。日本版コロナウイルスチャレンジになっています。外出を一切しないことは不可能ですが、外出するにしても感染地を避けることでリスクを大きく減らせます。自衛のための情報公開が必要です。