ロシア連邦のウクライナ侵攻はソビエト連邦が崩壊したのに未だに連邦意識をプーチン大統領が有していることが元凶です。連邦という概念が有害です。これがウクライナを独立した主権国家として尊重することを妨げています。
ウクライナ侵攻ではロシア連邦軍の非道が次々と明らかになっています。ウクライナの首都キーウ近郊ブチャなどでロシア連邦軍による市民への殺人や連れ去り、拷問、レイプ、略奪が明らかになっています。ウクライナのゼレンスキー大統領はキーウ近郊ボロジャンカの「犠牲者はブチャ以上」と指摘しました。
エストニアとラトビアの議会は2022年4月21日、ロシア連邦軍によるウクライナ市民虐殺を「ジェノサイド(集団殺害)」と非難する声明をそれぞれ発表しました。各国議会や国際機関にも、ジェノサイドと認定するよう促しています。このような非道ができる理由は、ウクライナを主権国家ではなく、連邦に従属する領域と見ているためでしょう。
ここからウクライナ侵攻を批判する際は、批判対象をロシアではなく、ロシア連邦と表現することが適切です。ロシア連邦を批判することで国家の行為であることを明確にできます。
日本ではロシア連邦への嫌悪感から在日ロシア人やロシア料理店への嫌がらせやロシア語の案内板の撤去など的外れなことが行われています。批判対象をロシア連邦と明確にすることは、的外れを避ける意味があります。
これはウクライナ人の心情にも合致します。ウクライナ人はロシア連邦を拒絶しています。ソビエト連邦も拒絶しています。ソビエト連邦は1930年代にウクライナの自営農家の土地を没収し、農業の国有化・集団化を進めました。しかし、民間感覚の欠如した公務員主導の計画は上手くいかず、ウクライナは大飢饉(ホロドモール)に陥りました。
この時代は資本主義国では世界恐慌が起きたため、市場経済の失敗が強調される傾向にあります。しかし、ウクライナ人にとってソ連の計画経済の「発展」は、連邦にアウトプットを吸い上げられるだけの犠牲と搾取でしかないものです。
連邦への拒絶と比べると、ウクライナ人のロシア帝国への意識は多様です。ロシア帝国を自国の歴史として見る向きもあります。ロシア帝国はコサック自治制の廃止やウクライナ文化の抑圧をしましたが、タタールのくびきからの解放として好意的に見る立場もあります。
ゼレンスキー大統領は日本の国会でオンライン演説を行いました。この際に日露戦争に言及して共闘を唱えるのではないかとの前予想がありましたが、外れました。ウクライナにはロシア帝国を自国の歴史と見る感覚があることを踏まえれば、日露戦争で日本を称えることは考えにくいことになります。
ロシア帝国ではロシア人もウクライナ人も同じ国民だったという歴史は、ロシア連邦軍の侵略のプロパガンダに悪用されています。これは100%のフェイクではないために逆に厄介です。だからこそ、ロシアではなく、ロシア連邦の拒絶と明確にする意義があります。
但し、ウクライナでも西部のリヴィウなどはポーランドやオーストリアの領土が長く、ロシア帝国とは無縁です。この点でもロシア連邦が連邦意識からウクライナ全体を自国の影響圏と考えることは無理があります。
ウクライナ侵攻批判では「プーチンの戦争」という表現を用いて、ロシア人やロシア文化と区別する立場もあります。しかし、ロシア連邦軍の戦争犯罪が起きており、独裁者一人だけの問題ではありません。独裁者の下で甘い汁を吸う公務員が独裁を支えています。個々の公務員がプーチンの命令に従っただけと責任逃れすることは許されません。この点でもロシア連邦を批判することは適切です。
楽天の三木谷浩史社長がウクライナに10億円寄付
日本のSWIFT排除参加歓迎ホワイトハウス声明は異例か