東京地検特捜部は2020年1月7日、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の妻キャロル・ナハスさんについて偽証の疑いで逮捕状を取ったと発表しました。タイミング的にゴーンさん出国の腹いせの意趣返しにしか見えません。日本の司法の恣意性を示すものです。日本の司法は中世並みという世界の批判を裏付けます。
ゴーンさんは1月8日に記者会見をする予定でした。会見では事件が日産自動車のクーデターであり、逮捕・起訴の背後にいた日本政府の関係者の実名を挙げる予定と報道されました。クーデターとの見方は突飛なものではありません。テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(2019年1月6日)で玉川徹さんも指摘しました。日産内部の権力闘争があり、検察の力を使ってゴーンさんを権力の座から降ろした疑いがあるとします。
会見前日の逮捕状に対して、ゴーンさん側は「過去にゴーン本人が記者会見を行う直前に本人を再逮捕したように、今回も会見の前日にキャロルの逮捕状をとった」と批判します。検察の裏金を告発しようとした矢先に逮捕された三井環・大阪高等検察庁公安部長の事件を連想します。
キャロルさんは2019年4月、東京地方裁判所でのゴーンさんのオマーン・ルートの特別背任事件の証人尋問で証言しました。検察側は日産自動車の資金の一部がオマーンの日産販売代理店、スハイル・バハワン自動車の幹部の個人口座などを通じてキャロルさんが運営に関わっていた会社に流れたと疑いを指摘しました。これに対してキャロルさんは「幹部を知らない」などと証言しました。これを検察は偽証とします。しかし、ゴーンさん側が「キャロルは9か月前に日本で検察官の尋問に応じ、いかなる罪に問われることなく解放されている」と指摘するようにゴーンさんの出国後にとって付けられた感があります。
日本の司法に対してゴーンさんのような金持ちでも逮捕拘留される平等なものという擁護意見がありました。しかし、それは金持ちだろうと何だろうと「お上」に盾突く人間は手段を選ばず徹底的に潰すという意味での「平等」に過ぎません。これは政治権力が恣意的に大商人を投獄して財産を没収した中世と変わりません。この意味でも日本の司法は中世並みとの批判は正しいことになります。