[紫蘇] Perilla
旬=夏 ◎効能=食中毒の改善、風邪の予防、気分の落ち込みの改善
中国南部、ヒマラヤ、ビルマ (ミャンマー)原産のシソ科の一年生草本。
日本へは8~9世紀に中国から伝わり、奈良時代にはすでに薬用、または食品香味料として重宝されていたし、薬膳料理に重用された。
仏典には「お釈迦様は、弟子の僧侶が病気をすると、シソを治療に使った」と書かれている。
シソは普通刺身などの「つま」として用いられるが、βカロチン、B1・B2・Cなどのビタミン、鉄、カルシウム、リンなどのミネラル、クロロフィルなどを多く含む立派な緑黄色野菜で、特にβカロチンとカルシウムの含有量は、野菜の中ではトップクラスである。
シソに特徴的な成分は、あの独特の香りの成分であるペリルアルデヒド。防腐作用(制菌作用)があり、魚やカニの中毒に対しては解毒剤として用いられる。
刺身に添えられているのは、このためであろう。また、発汗、利尿、鎮咳、去痰作用もあるので、風邪に用いても大変効果的だ。
さらに、神経を落ち着かせる作用もあるので、ノイローゼやうつ病、自律神経失調症に使われる漢方薬の「半夏厚朴湯」の主成分になっているのもうなずける。
その他、シソの葉 (蘇葉) を含有した漢方薬として、「神秘湯」(気管支喘息の薬)、「参蘇飲」(風邪、発熱、頭痛、咳の薬)、「香蘇散」(風邪、胃弱、うつの薬)などがあるが、シソのペリルアルデヒドの効能を考えれば、よく理解できる。
シソには他にリノール酸やa -リノレン酸などの不飽和脂肪酸が含まれていて、脳卒中や動脈硬化の予防、免疫力増強に効果のあることがわかってきた。
このα-リノレン酸は、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)に変わり、消炎効果を発揮するので、アレルギー疾患(喘息、アトピー等)のある人は、シソの葉を味噌汁に入れたり天ぷらにするなど、多用するとよい。
赤ジソの紫色の色素(シソニン)にも強力な抗酸化作用があり、万病の予防に役立つ。
さらに、シソの葉に含まれるルテオリンにも抗アレルギー効果がある。
最近、シソの葉のエキスが入ったアトピー性皮膚炎用の塗り薬が市販されているが、このルテオリンの効能によるところが大きいと思われる。
刺身に添えられているシソの葉は必ず食べたほうがいい。
【民間療法】
風邪……10gのシソの葉とコップ1杯の水を鍋に入れ、半量になるまで煎じたものを、1日3回に分けて温服する。
▼風邪・気管支炎……ショウガ湯に、火であぶって乾燥させたシソの葉2枚を刻んで入れたものを、1日2~3回飲む。
魚・魚介の食中毒……シソの葉30g、細かく刻んだショウガ5gをコップ3杯(540cc)の水で半量になるまで煎じて飲む。
吐血……シソの葉5gと黒豆1合を約600cccの水で半量になるまで煎じたものを飲む。
イライラ・精神不安・不眠……シソの葉10gを火であぶって乾燥させてもみ砕き、
コップ1杯の水で半量になるまで煎じ、すりおろしたショウガ汁5~10滴を加えて飲む。
●切り傷・水虫・発疹・アトピー性皮膚炎……水に浸した葉を手でよくもんで、傷口や患部に貼る。
冷え性・神経痛・生理不順・腰痛……シソの葉数枚を湯船に入れて入浴すると、保温効果が高まり、症状が改善する。