ゴボウ
〔牛蒡】 Edible Burdock
○旬=冬~春 ◎効能=大腸ガン予防、抗高脂血症、抗糖尿病、強壮・強精作用
ヨーロッパからアジアの熱帯地域原産のキク科の越年生草本。中国では最初、薬草として用いられ、日本へも千数百年前に薬草として伝えられた。
平安時代から食用になったが、ゴボウを食用にするのは、世界で日本人のみ。
第二次世界大戦に日本の捕虜収容所で、外国人の捕虜にゴボウのおかずを与えたことが、後に「木の根を食べさせて虐待した」と問題になったという逸話もある。
主に炭水化物より成っているが、その中のセルロースやリグニンなどの炭水化物(食物繊維)は腸のぜん動を刺激し、腸内の善玉菌の発育を助けることなどにより、便通をよくする。
その結果、コレステロール、中性脂肪、糖分、発ガン物質などの余剰物や有害物が大便と共に排泄され、高脂血症(→脳卒中、心筋梗塞)、糖尿病、大腸ガンなど、栄養過剰で起こる生活習慣病の予防・改善に役立ってくれる。
特に、切り口の褐色になった部分にできるリグニンには強力な大腸ガン予防効果があることがわかっている。
1697(元禄10)年に刊行された『本朝食鑑』に「ゴボウは男性の強精剤である……」という内容があるが、これはゴボウに含まれるアルギニンによる滋養強壮効果だと思われる。
東洋医学による「相似の理論」からすると、人間の下半身は植物の根に相似するので、ゴボウが下肢・腰の力をはじめ、泌尿生殖器の力を強化するのは当然である。俗に「ゴボウ5時間、ニンジン 2時間、ヤマイモたちまち」といわれる理
由もよくわかる。
また腎臓の働きを高め、利尿作用があることも、この理屈からよく理解できる。科学的にいうと、ゴボウに含まれる利尿成分はイヌリン(炭水化物)である。
フランスの植物療法家、M・メッセゲ氏はゴボウを薬草として用い「頭の皮膚病の草」と呼んでいる。ゴボウにはタンニンが含まれ、消炎作用や収斂作用を発揮するので、皮膚病の他、潰瘍ややけどに奏効する。また解毒作用や発汗作用にもすぐれ、にきびや発疹など、体内に老廃物が溜まって起こる病気にも効果がある。
【民間療法】
・便秘・むくみ…キンピラゴボウを毎食食べる。
口内炎・切り傷・湿疹・虫刺され……煎じ汁(ゴボウ10gを刻み、コップ1杯の水
で煎じて半量にする)を、冷まして使用。
口内炎、歯茎の腫れには、「うがい薬」として、切り傷・湿疹・ジンマ疹・虫刺されにはガーゼにひたして「湿布薬」として用いる。
あせも・ジンマ疹……根を刻んで湯船に入れて入浴する。
マガン(特に大腸ガン)の予防、再発予防……ゴボウ100gを刻み、水500Sと黒砂糖適量を入れた鍋でドロドロになるまで煮つめたものを、1日2~3回に分けて飲む。
痔……ゴボウの煎じ汁を冷ましたものを、ガーゼか脱脂綿に含ませ、患部に貼る。