今回は、NFTにおける「プライベートチェーン」と「パブリックチェーン」について述べつつ、既存IPがNFTをどのように攻略していくべきか、という点について述べます。
私の考えを結論から言うと、 「あらゆる試行錯誤は次に進むための道しるべになるので、それぞれの条件や環境の下での仮説検証の結果を持ち寄ってPDCAを回し、世界に目を向けて進んでいけると良いのだろう。」 と考えています。
これは、直接IPの権利を持たない企業や個人であっても、NFTの可能性を信じる人なら、誰もが夢を見て期待していることと思います。 日本には、人気のIPが多いですからね。 これまで、ありとあらゆるIT技術革新の最中で後塵を拝し、辛酸を嘗めて来た我々日本人としては、「今度こそは!!」と思うのもわかります。 そして、期待が大きいからこそ、技術選択で”世界標準”に適っていなような一手をニュース等で見聞きしてしまうと、大きく失望してしまうのですね。
しかし、これは私の憶測ですが、IPが人気のものであればあるほど、中の人達は 「今はまだNFTで大勝負を仕掛ける時期ではない」 と考えているのではなかろうか、と思うのです。
今の時期は、本当の勝負のタイミングが来る前の「練習試合」のような位置づけで、肩慣らしの期間に過ぎないと考えているのではないだろうか?と推察します。 だからこそ、フルオンチェーンではなく敢えて柔軟性のあるパブリックチェーンでの運用だったり、人気IPを差し控えて中堅IPからのスタートを想定しているのではないか? と、私は理解しています。
人気IPにとっての「関が原」は、ビジネス収益的に”NFTゲーム”でしょう。 今後は『メタバース』とも表現されるかもしれませんが、IPビジネスにおける高収益の柱であるゲームにどうやって馴染ませるかが、キーになります。 ここがIP保有者としての"最終ゴール"で、軸として考えると、あらゆる施策の狙いが見えてきそうです。
前提として、 ”NFTゲーム”が今のソシャゲ並の収益になる見込みがなければ、わざわざ、NFTという新しくてリスクのある領域に踏み込むだけの経済合理性はありません。 しかも、メリットどころか、ウォレット内の資産が取り出せなくなったり資産を失うなどのリスクがあります。 そのような事故は、IP側には何ら落ち度の無い、ファンによる100%の過失であっても、ブランドが毀損する可能性があるカオスなのです。
ステイホームでデジタル特需が続き、各社は足元のビジネスも順調で多忙の中です。 法的な賭博規制のためガチャができない国内の”NFTゲーム”の領域にリスクを取ってわざわざ打って出て行き、ひと勝負するぞ!などという機運が生まれることは、通常の神経であれば考えにくい。 よほどの熱狂者が存在しなければ、まず起こり得ないことです。 海外では既に成功事例がありますが、日本国内では残念ながら法的制約が強いため再現は難しそうです。
また、一般的なファンに対してもハードルが高いと考えます。 これまでのユーザー体験や常識が大きく変わるような新体験を浸透させるまでには、顧客教育に多くのコストもかかります。 一部ファンからは、『未知のものへに対する強い反発』が起こることは容易に想像でき、もはや不可避です。 そうなると最悪の場合、保守的ファン層による不買運動に発展する可能性もあり、ブランド毀損のリスクとなります。
既存ファンもポジティブに、かつ、人気IPのブランドを毀損せず、本番の「関ヶ原」へのステップにしていくためには、最初の「練習試合」ですらも絶対に失敗できないと考えるのでしょう。 そうなると、柔軟性を担保するために『プライベートチェーンを選択することが無難』との経営判断が下されることは、わからなくもありません。 IPもプラットフォームも、現実的なリスクヘッジをした上で何とかして前に進むための苦渋の決断をしているのではないか? と、傍目から見ていて思います。
IPがNFT化されることの本質的なメリットは、データの「永続性」と「確からしさ」が分散化されて担保されるようになることです。 どこか1社が中央集権的な管理から開放されることで、ゲームやコンテンツの領域に新しい体験が生み出させるだろう点が魅力のはずです。
ただしこれは、仮に『パブリックチェーン』を採用していたとしても、注意が必要です。 例えば、
メタ情報 画像・動画データ スマートコントラクトに付属するAPI
などが、外部の既存の1社のサーバー(AWSやAzureなど)に置かれていたらどうでしょう。 プライベートチェーンとそこまで違い無いかもしれず、その点は注意が必要です。
山の登り方はさまざま。 急激な崖を、危険を侵してロッククライミングして登っていき、初心者は振り落としながら頂上へ突き進む道。 迂回路(=緩やかな坂道)で、みんなで一緒にジグザグに登っていく道。 途中で行き詰まるかもしれませんが、やってみないことにはわからないことも多々あると考えます。 そして来年にはもう1本の道、「ケーブルカー」が登場予定で、ますます混迷を極めそうです。
2022年には、
イーサリアム2.0+L2チェーン より使いやすいウォレット
などが出てくるでしょう。 今、人気IPや既存ファンにとってボトルネックになっているのは「GAS代」や「UI&UX」です。 これらが大幅に改善されることになれば、多くの人々が市場に参入し、市場環境はガラッと変わってくるでしょう。
今回、もし「練習試合」が行き詰まったとしても、世界に向けて人気IPを広げていく同じ仲間として、ひとつの「ナイストライ」として、もう少し歓迎されてもいいかなと思ったりしました。
既存IPを、頑張って『本当のNFT』に馴染ませることは、相当なエネルギーと長い歳月を必要としそうです。 NFTで遊ぶことのリテラシーの高さやポジティブ層向けに、つよつよIPホルダーがまったく新しい専用のIPを生み出すほうが早かったりしないかなぁ…… と思う、今日このごろです。
※この記事は、パジ(@paji_a)の発信をもとにかねりん(@kanerinx)が編集してNFT記事化しています。
※この記事の元投稿は、HiDΞで連載中のマガジンです。(JPYCの投げ銭も可能)