<<前回>>
生態学について考えると、大いに繁栄し成功した1つの種がある時、進化がどのように働き、環境的ニッチさやエリアがどのように機能するかの理解が得られます。
充分な食料があり、捕食者がいない等などこうした環境を見つけられた種は大成功できます。そういった種は環境を支配するのです。
例で考えてみましょう。アホなヨーロッパ人がうさぎをオーストラリアに持ち込んだ時に何が起こったか?
うさぎを食べる動物がいなかったため、そこら中がうさぎだらけになった。
「他の種をそのままにして、この種を持ち込んでみよう!うわっめっちゃ増えてるやん!」みたいな感じです。
その特別でニッチな、適応する種が他にいない環境でそんな事をしたらそうなるのは当たり前です。捕食者もいないし、食べ物はたんまりとある。やる事はひとつ。
そこら中がうさぎだらけになるまで、日がな一日ファックしまくりです。
全世代で8匹、だいたい6日毎に飛び出してきます。気が付けば、指数関数的な成長の話になっている。ビットコインとうさぎとを比べるような所は何もないんですけどね。
言いたいのは、ある種が繁栄に成功する環境があった場合、その種はその環境を独占してしまう。でも興味深いのは、その場にその種と似ているけれど、少しだけ効率的でうまくやりそうな種を持ち込んで見ると、完全にうまくいかないという点です。
なぜかと言うと、その環境はすでに独占されてしまっているから。
簡単に言えば、非常に多くの数と言うのはたとえ、新たに持ち込まれる種がもっと効率的であっても、5匹の新種に対して600万匹のうさぎがいては、その環境で広まる事はできないんです。
なので、たとえどうにかその環境でうまくいっても、同じ種の仲間に出会うのが難しい。どこに行ってもうさぎに出会い続けるばかりです。
毎回、食料を得る機会があるたびに、たくさんのうさぎたちが現れる。
ある一種の生物がめちゃくちゃ成功した環境がある場合、その種が環境を支配し、他にもフィットしうる生物全部に対してその環境を閉ざしてしまう。これが生態学的進化の考え方です。
では、ビットコインには何が起こったでしょうか。
ビットコインはとてもユニークなアプリケーションを発見しました。それは、世界中に広がり、完全に検閲されず、分散型で止められない、ボーダレスで純粋なデジタルの形をした“政府のないお金”です。
そのような環境のそのようなアプリケーションは、今の所ビットコインによって独占されています。
なので誰かがやって来て「私たちの方がいくらかビットコインよりもうまくやれます!」と言ったとします。
素晴らしい。ビットコインよりうまい事やれるんですね。でも、誰も気にも留めないんです。
なぜって、ソフトウェア開発者全員、そのビットコインよりいくらかよいビットコインには訓練されていないからです。
ビットコインをとりあえずB、他のをCと呼ぶことにしましょう。次なる繰り返し、“C"itcoin(シットコイン)です。
そんなシットコインがあったとして、「我こそが次なるビットコインだ!」みたいな感じで登場したとしても、まあそれは本当なのかもしれない。いくらかはビットコインより拡張性があって、より良いセキュリティ特性があり使いやすいのかもしれない。ビットコインとの差異も十分にある。もし一緒に同時にスタートしたのなら、ビットコインに勝てたのかもしれない。完全勝利だったかもしれない。
けれども、今、あらゆる開発者がすでにビットコインの扱い方を把握しているこの環境、“マスタリング・ビットコイン”といった本があり、ビットコイン用ソフトウェア・ライブラリも豊富、取引所での扱いもあり流動性も十分、26種類ものウォレットもあり、地元のスターバックスやちょっとましなコーヒーショップで、簡単にトレード相手が見つかったりビットコインが手に入る環境から始めるんです。
それをこんな感じで始めたとして・・・
「このシットコイン持ってる?」
「いや、持ってない。」
「でも、こっちの方がビットコインより良いんだよ!」
「いや、でも持ってないし、それに興味がある知り合いも誰もいないし。」
こんな中、新しい方はどれぐらい差別化されていないといけないでしょう?
これは本当に難しいチャレンジです。十分にビットコインから差別化され、十分にビットコインとは違っていても、この同じニッチな環境を占有するのは難しいからです。
もはやビットコインと競合する事はできません。別の何かとは競合するかもしれない。そのスペースを支配できるかもしれない。そのためには、多くの懸命な努力が必要となります。なぜって、独自のセキュリティで新しい暗号通貨を始めたいのなら、1日目から人々が攻撃を仕掛けてくる環境で、何もない所からそのセキュリティの立ち上げを始めなければならないのですから。
第1日目、誰もビットコインに攻撃なんかしてきませんでした。2日目もそう。1074日目、誰も攻撃せず。誰も聞いた事さえない。誰もうまく行くと思ってない。2500日目、誰も攻撃せず。
ビットコインは、これが実際に動くと誰かが思うに至り、攻撃してくるまで何年も掛かっている。そしてそれまでには、攻撃に対抗するための強化が十分になされていた。
今あなたが表立って「いい考えがある!ビットコインより優れてる!」なんてやった日には、いたる所からシステムに攻撃を受けて、次の日には消えてなくなってしまいます。
なぜって、ハックされ、クラッシュさせられるからです。
表立ってProof of Workをやろうとして、新しいProof of Workアルゴリズムを試したなら、全員がGPUを携えてやって来ます。なんでみんながGPUを持ってるかって?なぜって過去5年間それでEtherumや何やをマイニングしてたからです。十分なGPUを持ってて、数千のGPUでもその新しいコインに投じて、ネットワークを支配できるか試してみましょう。たぶんできるでしょうね。彼らがネットワークを支配した時点でセキュリティは終わりです。
なるほどProof of Workはうまくいかない。それならProof of Stakeを試そう。
Proof of Stakeを始めるのはもっと簡単でしょう。なぜって、攻撃するにはお金持ちじゃないといけないから。
けどなんてこった。周りはめちゃめちゃ金持ちだらけだし、全員クリプトを攻撃しようと狙ってる。Proof of Stakeでは全部のステークを誰が買っているのかを知る事になる。そうリッチなやつら。
そのリッチなやつらが初期の頃にビットコインを買っていなかった唯一の理由は、それがうまく行くとは思っていなかったからです。
でも同じことを今試したなら、全員が次なるビットコインを探していて彼らは“あなた”にそれを売りつける事ができる。クリプトの事を良く知らない人々に向けて。
私はイーサリアムがローンチされた日の事を覚えています。ヴィタリックからメールが送られてきた日の事を・・・
<<その4に続く>>
https://alis.to/katakoto/articles/2xAVMzwMA8NL
次回は、アンドレアスさんがヴィタリックにイーサリアム立ち上げの際に相談を受けた時の裏話から、話はいよいよ“なぜ次なるビットコインもビットコイン”なのかの核心へと向かいます!