“ぜったいなーんかおもしろいことがおきるんだな。”
引用元:不思議の国のアリス
過去数十年間で、技術革新は直線的なトレンドに従っていない事が明確になった。技術的なシンギュラリティを信じる信じないにかかわらず、多くの分野で進歩は指数関数的であることは否定できない。そればかりか、テクノロジーの普及率は加速しており、気が付いたら地元の校庭の茂みは消え去り、子供たちは代わりにスナップ・チャットで遊んでいる。指数曲線は、あなたがそれに気づく前にあなたの顔面をひっぱたく傾向がある。
ビットコインは、急激に成長するテクノロジーの上に構築された指数的に成長するテクノロジーである。Our World in Dataは、1903年に固定電話が導入されて以来、テクノロジーの普及スピードが急速に高まっていることを美しく示している。固定電話、電気、コンピュータ、インターネット、スマートフォン。いずれも価格性能比と普及が指数的傾向に従っている。ビットコインもそうである。
ビットコインには1つではなく、複数のネットワーク効果があり、それら全ては、価格、ユーザー、セキュリティ、開発者、市場シェア、世界通貨としての普及などそれぞれの分野において指数的成長パターンをもたらしている。
幼児期を生き延び、ビットコインは1つ以上の側面で、日々成長を続けている。確かに、このテクノロジーは成熟期に達してはいない。まだ思春期にいるかもしれない。だが、テクノロジーが指数関数的である場合、無名の状態から普遍化への道のりは短い。
2003年のTED talkで、ジェフ・ベゾスは電気をウェブの未来へのメタファーとして選んだ。電気、インターネット、ビットコインと言う3つの現象はすべて、他のことを可能にする実現技術、ネットワークである。これらは本質的に基盤となるインフラである。
今や電気はしばらく前からありふれた存在である。我々はそれを当然と思っている。インターネットは少しだけ若いが、それでも多くの人々は同じように当たり前と思っている。ビットコインは10才であり、前回のハイプ・サイクルの中で世間の注目を浴びてきた。ごく最初期のアーリー・アダプターだけが、ビットコインを当たり前のものとしてきた。もっと時間が経つにつれ(※翻訳者注1)、より多くの人々がビットコインを単純にそこにあるものとして認識するだろう。
1994年、インターネットはいまだ分かりにくく直感的ではなかった。Today Showのこの古い録画を見れば、今では自然で直感的に思えるものが、その当時では実際そうではなかったことがはっきりと分かる。ビットコインは依然、分かりにくく大多数の人にとって異質なものだが、インターネットがデジタル・ネイティブにとっては第二の天性であるように、サトシ(翻訳者注:ビットコインの最小単位)を消費し、貯めることが未来のビットコイン・ネイティブにとっての第二の天性となるだろう。
“未来はすでにここにある。 — それはただあまり公平に分配されていないだけだ。”
ウィリアム・ギブソン
1995年には、米国成人の約15%がインターネットを利用した。ピュー・リサーチ・センターの歴史的データは、インターネットが我々すべての生活にどのように組み込まれて行ったかを示している。カスペルスキー・ラボの顧客調査によれば、回答者の13%が2018年にビットコインとそのクローンを利用して、商品の支払いを行っている。支払いがビットコインの唯一のユースケースではないが、このことは我々がインターネット時代のどこにいるのかを示すいくらかの兆候にはなる。90年代初期~中期の辺り。
1997年、ジェフ・ベゾスは株主へ宛てた手紙の中で、インターネットの、ひいては自身の会社の未開発な大きな可能性を認識し「今日がインターネットの第一日目です。」と述べた。ビットコインにとって、今日がどんな日であれ、広大な量の未開発な可能性があるのは、ほとんどのカジュアルな観察者以外の目には明らかである。
ビットコインの最初のノードは、サトシがジェネシス・ブロックをマイニングしたのち、2009年にオンラインになり、ソフトウェアは荒野に放たれた。彼のノードは、長い間、孤独だったわけではない。ハル・フィニーはこのアイデアを取り上げてネットワークに参加した最初の人々の一人である。10年後、この記事の執筆時点では、75,000以上のノードが、ビットコインを走らせている。(※翻訳者注2)
指数的に成長しているのは、プロトコルの基本レイヤーばかりではない。セカンド・レイヤーのテクノロジーであるライトニング・ネットワークはさらに速い速度で成長している。
2018年1月、ライトニング・ネットワークは40ノードと60チャンネルだった。2019年4月、ネットワークは4,000以上のノードと約40,000チャネルへと成長した。これはまだ資金を失う可能性がある実験的テクノロジーである点に留意してほしい。しかしながらトレンドは明白である。何千もの人々が無謀にも熱心に利用している。
ウェブの華々しい急成長を生き抜いた私にとっては、インターネットとビットコインの類似点は明らかである。両方ともネットワークであり、両方とも指数関数的テクノロジーであり、そして両方とも新たな可能性、新たな産業、新たな生活様式を可能にする。インターネットがどこに向かっているかを理解するのに、電気のメタファーが最適だったように、ビットコインがどこに向かっているかを理解するのには、インターネットが最適のメタファーかもしれない。もしくは、アンドレアス・アントノプロスの言葉を借りれば、ビットコインはお金のインターネットである。こうしたメタファーは、歴史は繰り返さないが、しばしば韻を踏むことをよく思い出させてくれる。
指数関数的なテクノロジーは把握しがたく、しばしば過小評価される。私もこのようなテクノロジーに大変な興味を持っているが、進歩とイノベーションのペースには常々驚かされている。ビットコイン・エコシステムの成長を見るのは、インターネットの台頭を早送りで見ているようなものだ。非常にワクワクする。
ビットコインを理解しようとする私の探求は、歴史の道筋を一つ以上の方法でたどる事となった。古代の社会構造の理解、過去のお金、そして通信ネットワークがどのような進化をしてきたかを知ることはすべてこの旅の一部であった。手斧からスマートフォンにいたるまで、テクノロジーは間違いなく何度も我々の世界を変えてきた。ネットワーク化されたテクノロジーはとりわけ変化をもたらすものである。文書、道路、電気やインターネット。これら全ては世界を変えた。ビットコインは私を変え、そしてこれからも、ビットコインを勇気を持って使おうとする人々の精神と心を変え続けるだろう。
ビットコインは私に、過去を理解することは未来を理解するのに不可欠であることを教えてくれた。そして未来は、まだ始まったばかりだ。
(C)Gigi "21 Lessons" クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に基づき翻訳
※翻訳者注1:リンディ効果に関してはALiS内のこちらの記事が秀逸。
※翻訳者注2:ビットコインを“走らせている”
サトシから世界で初めてビットコインを受け取り、その開発に貢献した伝説の暗号化研究の専門家・プログラマのハル・フィニー氏の記念すべきツイートに敬意を表して翻訳。RIP.