「逃犯条例」改正案への反対運動をきっかけとして、香港では政府・警察と抗議活動との対立が激しくなっています。
そうした状況のなかで、2019年11月24日に香港区議会議員選挙の投票が行われます。
この区議会議員選挙は、香港の人たちの直近の「民意」のありようを示すものとして注目を集めています。
投票日を迎えるにあたって、今回の区議会議員選挙の概要について少し書き留めておきたいと思います。
今回の区議会議員選挙について、日本語で読める情報のなかで選挙の位置づけについて簡略にまとめられているものとしては、以下のNHKのニュース記事が参考になります。
この記事の見出しに、「全選挙区で親中派と民主派が争う構図」と書かれているように、今回の選挙では全479議席のうち、官選議員である「當然議員」27議席を除く、「民選議員」452議席のすべての選挙区で投票が行われます。
この「すべての選挙区で投票が行われる」というのは、区議会議員選挙のこれまでの選挙では無かったことなんですね。
というのも、香港の区議会議員選挙は日本で言うところの「小選挙区制」で行われます。
つまり、各選挙区で当選するのは1名のみと決まっているのですが、これまでの選挙では選挙区内で1名の立候補しかいない「無投票当選区」(自動當選區)がたくさんあったんですね。
それが今回は、この「無投票当選区」がまったくない状態、いわばすべての選挙区で2名以上の立候補者がいるということになりました。
今回の区議会議員選挙で、すべての選挙区で投票がおこなわれるようになった背景のひとつとして、「反無投票当選運動(反自動當選運動)」の展開があったようです。
この運動の公式Facebookページには、以下のような呼びかけ文が掲げられています。
前回の区議会では4分の1近くの議席が建制派による無投票当選となった。この運動の主眼は、これまでの既成事実を打ち破り、各選挙区の住民全員の選挙参加を強く推し進め、議席を民衆に取り戻す!
(上屆區議會接近四分一議席由建制派自動當選。這運動的核心概念,打破過去常態,致力推動各區全民參選,還席於民!)
まず、香港の政治状況は大きく分けて、各種選挙で多くの議席を獲得していて香港政治に力を持つ、中国との距離が近い「建制派」に対して、香港の民主化運動を担ってきた「民主派」の対立のもとに捉えることができます。
そのうえで、前回2015年の区議会議員選挙では、民選議員431議席中、68議席が無投票当選となり、そのうち66議席を建制派が獲得しています。
建制派の無投票当選議席は全体の議席の約15.3%ですので、上記のFacebookページの呼びかけ文の数値とは齟齬がありますが、現在の香港の社会状況を背景に、「民主派」の人々を中心に全選挙区への立候補を進めたという状況があったようです。
こうした状況のもとで全選挙区での選挙活動および投票が実現したことによって、香港に在住するすべての人々が同時に投票を行うという状況が実現されました。
これはつまり、香港の人々の直近の「民意」が政治の場に反映される状況が生み出されたことを意味しています。
そうした意味で、今回の選挙が注目されているんですね。
今回の選挙については、ここ最近の政府・警察と抗議活動との衝突の激化によって、投票の延期などの可能性も取りざたされていました。
ですが、政府や議会、政党や立候補者はもちろん、香港の主要メディアも選挙期間は激しい衝突が起こらないよう、選挙が公平公正に行われるように呼びかけていました。
実際のところ、香港の区議会の権限は限られていて、今回の選挙で有権者が行うことができるのは、「選挙を通じて、自分の利益を代表して政府に地域事務に関して助言できる区議会議員を選ぶ」こと、「公民権を行使し、市民としての義務を果たす」ことに限られます。
区議会を通じて香港の政治状況が劇的に変わるわけではありませんが、この記事にまとめた視点から、今回の選挙は直近の香港の人々の「民意」を政治的に示すものになります。
その結果がどのように示され、そのことが今の香港の状況にどのような影響を与えるか?
まずは、選挙の結果を見守りたいと思います!
→2019年11月25日追記:選挙結果について記事を書きました。