(写真の地名と記事の内容は関係ありません。念のため(^^;)
金融業界がブロックチェーンにどのように向き合っていくのかということは、伝統的な金融システムとの整合性が問題になるために、熱い議論がおこなわれています。
世界的な潮流としては、仮想通貨への警戒感とは裏腹に、どのようにブロックチェーンを取り込んでいくのかというところに進んでいるようですね。
台湾でも大手金融機関がブロックチェーンの取り込みを模索しています。僕もこれまでに、台新銀行や玉山銀行の取り組みや、台北富邦銀行の決済システム試験運用について記事を書きました。
今回は中国信託商業銀行を擁する中信金控(中信ホールディングス)の取り組みが目に付いたので、書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳ですので、参考までに止めてください(^^; 6月5日、もくじを追記しました。つい付けるのを忘れがちで…)
・中信金控の「Blockchain Brothers」!?
・「共識(Consensus)」で金融システムを変える!?
・台湾を代表して国際的舞台へ
・新しい技術には新しい世代を
台湾のビジネスニュースサイト「數位時代」は最近、ブロックチェーンや仮想通貨、フィンテックについての特集を組んでいます。
その一環として2018年6月4日に組まれた特集は、金融業界で7・8年間、フィンテックに取り組んできたキーパーソンに注目したものになっています。
そのなかで、ブロックチェーンに関する取り組みとして中信ホールディングスのアプローチについて取り上げています。
中信ホールディングスは2016年に「ブロックチェーン実験室」を開設すると同時に、国際的ブロックチェーン金融機関コンソーシアム(國際金融區塊鏈聯盟)である「R3」に台湾で初めて加入しています。(発表当時の記事は、たとえば「INSIDE」のこちら)
そして、この実験室の主任が1991年生まれの李約さん、R3の担当者が1985年生まれの黄晟恩さんという若い男性ふたりなんです。
実験室が所属する數位金融処(デジタル金融部)の処長である蘇美勳さんが、ふたりのことを「Blockchain Brothers」と名付けたそうです。
先に付いてたのか、記事に載るにあたって名付けたのかわかりませんが…なかなかキャッチーなネーミングですね(^^;
「Blockchain Brothers」のひとり、李約さんはブロックチェーンを既存の金融システムにどのように接合するのかということを担当しているようです。
そのアプローチとして注目されるのが、「共識(Consensus、コンセンサス)」を中心に置いたアプローチです。これについては、李訳さんのコメントを引きながら以下のように説明されています。
金融機構在傳統運作上,多是中心組織先有構想、之後才找別的單位加入,但他們則是反過來,讓合作夥伴從構想、概念性驗證(POC)階段就參與,確認彼此需求、了解可帶來哪些效益後,有了共識才會進入下個階段,也因此,不太會有需要誰「配合」誰的問題。
(金融組織の伝統的なシステムでは、多くが中心的な組織がまず構想を持っており、それから他の団体を引き込みます。しかし、彼らは反対に、パートナーに構想段階、概念実証(POC、Proof od Concept)の段階から参加してもらい、お互いの需要を確認し、どんな効果が生まれるうるかを了解してから、コンセンサスを持って次の段階へと進みます。そのため、誰が誰に「配分」するかという問題がそれほど必要ではなくなりました)
李約さんは、こうした「「社群」的合作概念」(「コミュニティ」的協力コンセプト)に基づくアプローチについて、台湾の金融業界ではあんまりない方法であると同時に、世界的には当たり前になっているとコメントしています。
李約さんの視点が世界を向いていることがうかがえますね。
李約さんのこうしたアプローチを、もうひとりの「兄弟」である黄晟恩さんは「R3」の舞台で展開しているようです。
同じく、黄晟恩さんはインタビューに答えるかたちで、国際的な場での「共識」の重要性について、ブロックチェーンが新しい技術であるために、世界各国・企業がみな模索の途上にある。だからこそ、いろいろな企業と協力をしながら検証を繰り返し行っていく必要があり、そのためには「社群(コミュニティ)」的発想で仕事を進めていく必要があると語っています。
そのうえで、黄晟恩さんはR3のコンソーシアムにおいて、国際貿易プロジェクトであるVoltronに参加するにあたって、唯一の「台湾代表」として、台湾の特色が入るような役回りを意識していると語っています。
台湾の特色の一例として、契約時の「押印」の文化が挙げられています。諸外国が契約を「サイン」で済ませるのに対して、台湾では「印鑑」を押すことで契約の有効性を示している。そうした文化の違いを、どのようにブロックチェーンを用いた貿易プロセスの自動化過程の検討のなかで提示していくのかということを説明しています。
契約をめぐる慣習の違いという話がブロックチェーンの話題のなかに出てくるとは…視線は国際的な舞台へと向きつつ、ローカルな商習慣とどのように折り合わせるかという実践的な姿勢が垣間見えて、なかなか興味深いです。
「Blockchain Brothers」が所属するブロックチェーン実験室は、現在、グループ内の銀行、証券会社、保険会社から選抜された約70人のスタッフで動いているそうです。2016年に開設された当初は約50人でスタートしたとのことなので、人員を充実させてきていることがわかります。
なかでも、この記事で取り上げられているふたりは、若手のリーダーとして将来を嘱望されていることが感じ取れます。若い世代が新しい技術を牽引していくという姿勢がうかがえます。
記事の最後に掲載された李約さんの以下のコメントが、こうした姿勢をクリアに表現していると思います。
在手遊神魔之塔中,來自北歐神話中不同種類的符石,都有自己的力量(…)把它們串在一起,神奇的事就會發生。就跟區塊鏈一樣。
(スマホゲームの「神魔之塔(TowerOfSaviors)」では、北欧神話から採った違う種類のルーンがそれぞれ自分の力を持っている(…)これらが揃うと、マジカルな展開が発生する。ブロックチェーンと同じようにね。)
誰がブロックチェーンを発展させていくのか。世界各国でのキーパーソンの動きの大切さを感じますね。これからも、こうした人々の動きを追いかけていきたいと思います!
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文中にも挙げましたが、台湾のブロックチェーンに関する取り組みについては、以下のような記事も書いています。