以前に書いた記事で、台湾の銀行がブロックチェーン技術の応用にいろいろ取り組んでいますよ~というトピックを取り上げましたが、そうした取り組みのひとつとして、決済システムの試験運用が始まっているようです。
ブロックチェーンの応用としても興味深い事例ですが、「産官学」の共同事業としても注目される取り組みですので、書き留めておきたいと思います!
台湾のガジェット情報を配信しているiThomeで配信されたこちらの記事によると、台北富邦銀行が2018年5月13日に、台北市郊外にある国立政治大学と提携し、ブロックチェーン技術を利用した決済システムを大学付近の商店に試験導入する形で運用を始めたことを明らかにしたと報じています。
具体的には、台北富邦銀行の口座を持つ利用者に提供される「Lucky Pay」というアプリを通じて、商店に表示されているQRコードを読み込むことで決済が完了するようです。
なお、利用者は当面、政治大学の教職員・学生に限定され、利用希望者には決済用の銀行口座が付与されているとのことです。
記事には、台北富邦銀行が「臺灣首家提供可商業運作區塊鏈支付的銀行(台湾で初めてブロックチェーン決済を商業ベースに乗せた銀行)」であり、国立政治大学は「第一個區塊鏈支付示範區(初めてのブロックチェーン決済モデル地域)」になったと報じられています。
台湾内でも注目を集める取り組みであることが伝わってきますね!
台北富邦銀行は、2005年にもともとは台北市の公的銀行だった「台北銀行」と、保険業から始まった一大金融グループの「富邦金控(富邦フィナンシャルホールディング)」傘下の「富邦銀行」が合併してできた、比較的新しい銀行です。
台北市近郊では有力銀行のひとつであるとともに、台湾高速鉄路(台湾新幹線)の主要株主としても有名で、高鉄の駅には台北富邦銀行のATMがよく設置されています。
記事によると、台北富邦銀行と国立政治大学は、2017年3月から共同で、政府の行政機関である科学技術部(科技部)による「區塊鏈支付網路的關鍵技術與工程研發(ブロックチェーン決済ネットワークの基盤技術と開発)」についてのプロジェクトに取り組んできたとのことです。
また、そうした取り組みのなかで、台北富邦銀行は2017年9月に政府の行政機関である金融監督管理委員会(金管会)から「區塊鏈自行支付的銀行(ブロックチェーン自動決済銀行)」の指定を受け、同年10月には銀行の内部ホストシステムをブロックチェーンに接合する作業を始めていたようです。
こうした取り組みの結果として、2018年4月25日からサービスの試験運用を開始したということです。
政治大学との提携から1年超、銀行内で関連作業を開始してからは約半年でサービス開始までこぎつけたということですね。
技術的には、台湾のフィンテック・ブロックチェーン開発企業である「AMIS(帳聯網公司)」が開発した、イーサリアムベースのアルゴリズム「伊斯坦堡拜占庭容錯演算法(IstanbulBFT)」というものを使用して、決済スピードを1秒以内に(!)おさめたシステムを構築しているようです。
このAMISという企業、台湾の仮想通貨交換業者であるMaiCoinの創業者である劉世偉さんが創業した会社であり、台北富邦銀行など台湾内の有力銀行が出資しているようです。
この会社、なかなか興味深い感じがするので、また記事をあらためて深堀りしてみたいと思います!
ともあれ、こうしたシステムを利用することによって、決済スピードを高め、商業利用を拡大していこうという意気込みが感じられます。
実際に、試験運用先を政治大学周辺の商店としたことの理由のひとつとして、学生街に特有の「昼食時の混雑解消」ということがあるようです。
決済システムの検証という意味でも、こうした事象が毎日生じるこの地域は、格好のモデルケースということになるのでしょうね。
台湾で初めてのブロックチェーン決済サービスの商業運用事例ということで、大きな注目を浴びていると同時に、「産官学」の共同事業としても注目の的である今回の取り組み。
これが成功するかどうかで、台湾におけるブロックチェーン普及の行方が決まってくるのかもしれません。
これからさまざまな問題が出てくるのかもしれませんが、そうしたことも含めて、前向きにサービスを拡げていってもらえたらいいなあと思います。
このサービスのこれからが楽しみであると同時に、後を追う企業が多様なサービスをこれから展開していくのかなと思うと、ワクワクしますね!
これからの動向を、今後も追いかけていきたいと思います!
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台湾の銀行によるブロックチェーンの取り組みについては、以下の記事を書いています。