日本による植民地統治という歴史を持つ台湾には、今でもその当時の建築物がいろいろと残っています。
近年、台湾南部の高士村に再建された「高士神社」は、そうした「リバイバル」の動きの中に位置づく建造物のひとつです。
こうした神社関連のモニュメントは台湾各地にいろんな形で残っていたり、あるいは「歴史的遺産」としての保存が進んだりしていますが、今回は少し変わった形で「あの頃の記憶」を留めている場所を書き留めておきたいと思います。
その場所というのは、台湾の南部、台南にある「林百貨」です。
「百貨」という名前からもわかりますとおり、5階建てのビルのなかには雑貨などを扱うお店がいくつも入っていて、いわゆるショッピングビルのような感じになっています。
で、入り口のところを拡大してみると…
ローマ字で「HAYASHI」と書いていることがわかりますね。
そうなんです、ここはもともと日本統治期に「ハヤシ百貨店」として建てられた建物をリバイバルしてショッピングビルにした場所なんです。
このあたりの歴史的な経緯については、「林百貨」の公式ウェブサイトに日本語のページが開設されていますので、そちらをご参照ください。
あと、台湾のテレビ局「公共電視」がYoutubeの公式チャンネルに、リバイバルの様子を記録した動画が公開されています。
言葉がわからなくても、ビルの雰囲気などを感じることができますよ。
この5階建ての建物、当時は屋上に上がることができなかったようなのですが、今ではこんな感じで…
現代の台湾で、案内板に中国語で普通に「神社」って書いてある…
こういうところにも単純ではない「歴史」の捉え方が含まれているわけですが、それはまたいつか。
で、屋上に上がってみるとこんな感じ。
当時の趣を残しつつ、いろいろな趣向が凝らされた空間になっています。
右側の建物は「記念品ショップ」で、お店の中を抜けると…
と、本殿の跡が見えてきます。
正面から見ると、こんな感じ。
鳥居の一番上の部分がなくなっているのは、戦後になって取り外された様子がそのまま再現されているということです。
鳥居の横には説明文も。
この神社はお稲荷さんだったんですね。
屋上広場の横には、こんな感じの場所も。
これは今風に作られたものですが、ひとつの「意匠」として神社を取り込んでいる様子がうかがえます。
神社を象徴する「鳥居」や「灯籠」、「絵馬」や「お札」といったようなものは、「あの頃の記憶」を呼び起こすものであると同時に、ある種の「意匠」「イメージ」として、台湾の歴史の一部として取り込まれようとしていることがわかりますね。
こういった場所は台湾に散在しています。
そんな場所に足を運んでみることも、「歴史」に触れる機会になるのかもしれませんし、台湾の「今」を知るきっかけになるのかもしれませんね。