ブロックチェーンの開発・普及を政府の方針としても積極的に推進している中国では、多様な企業がブロックチェーンへの関わりを深めていますね。
特に、阿里巴巴(アリババ)グループの活発な動きは、日本語の情報としても多く伝えられていますね。
たとえば最近では、「コインポスト」の記事が報じているように、アリババの「BaaS(Blockchain as a Service)」が中国国外でも利用可能になるというニュースが注目を集めているようです。
ただ、もちろん、中国でブロックチェーンの技術・サービス開発に乗り出している大手企業は、アリババだけではありません。
今回は、アリババとしのぎを削るイーコマース大手の「京東(JD)」によるブロックチェーン関連の動きが目に留まりましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・京東が「ブロックチェーン研究実験室」を開設
・京東によるブロックチェーン関連の取り組み
・ブロックチェーンの社会実装を目指す?
台湾の経済系ニュースサイト「鉅亨網」が2018年10月31日に報じた記事によると、中国のイーコマース大手の「京東」がアメリカの「ニュージャージー工科大学(NJIT)」と中国の「中国科学院软件研究所(中国科学院ソフトウェア研究所、ISCAS)」と合同で、「區塊鏈研究實驗室(ブロックチェーン研究実験室)」を開設したということです。
記事によれば、この実験室開設によって、ブロックチェーンをめぐる効率化の問題解決や研究開発の広範化を目指すとともに、以下のような課題に取り組むようです。
当該実験室では基本コンセンサスプロトコル、プライバシー保護、分散型アプリケーションDapps、監査と監督、技術融合などの研究とアプリ開発に焦点を当てていく。
(在該實驗室也將聚焦在基本共識協議、隱私保護、去中心化應用程式 DApps、審計與監管、技術融合等研究與應用研發。)
ブロックチェーンの特性を活かしつつ、基本的な技術から応用・サービス開発までを含めた包括的な開発を進めるという役割を、この実験室に期待していることがうかがえますね。
また、この動きについては、京東自身が自らのブログで、「JD.COM, NJIT and ISCAS announce new blockchain research lab」と題した記事を公表しています。
英語で書かれたこちらの記事には、もう少し詳細な人員配置などが書かれています。
まず、こちらの記事を基に役職などの情報を補足しながらまとめると、実験室のリーダーには京東グループの「JD Big Data and Smart Supply Chain(大数据与智慧供应链事业部)」のトップで、グループの副総裁でもある裴健(Dr. Jian Pei)さんが着いたそうです。
また、NJITからはYing Wu College of Computingの准教授(Assistant Professor)である唐強(Dr. Qiang Tang)さん、ISCASからは研究副主任(Vice Chief Engineer)の張振峰(Dr. Zhenfeng Zhang)さんが、それぞれ、ブロックチェーンと暗号学の専門家として参画しているようです。
ビッグデータやスマートサプライチェーンといった技術とブロックチェーンを統合的に捉えようということがうかがえる人員配置だということがわかります。
同時に、各種の専門家を配して、上に挙げた包括的な開発を具体的に進めていこうという姿勢が垣間見えますね。
冒頭に挙げた「鉅亨網」の記事では、今回の実験室開設が、京東がこれまでに進めてきたブロックチェーン関連の多様な動きに連なるものとして位置づけられています。
記事には、以下のような京東の動きが挙げられています。
・今年8月、BaaSプラットフォーム(JD Blockchain Open Platform)を開設し、企業のブロックチェーン導入を支援
・同じく今年8月(?)、中国の「華泰證券」や「興業銀行」と提携し、「資産担保証券(Asset Backed Security、ABS)」の発行をブロックチェーン上で計画があることを公表
・今年9月、南京本社内に「智慧城市研究所(スマートシティ研究所)」を開設
京東が今年8月に公表したプラットフォームとしては、僕の以前の記事で「京东智臻链防伪追溯平台(security traceability platform)」について少し書き留めました。
その後、少し調べてみると、僕が書き留めたウェブサイトとは別に、「京东智臻链」というサイトが公表されていました。
上述のトレーサビリティプラットフォームは、この大きなプラットフォームの中のサービスのひとつという位置づけのようです。
また、2番目の金融業との提携ですが、中国での情報を見てみるとすでに今年6月の段階で報じられている動きなので、公表のタイミングは6月の可能性が高いのですが、これまでに京東グループで扱ってきたABSクラウドサービスのブロックチェーン導入が進められているようです。
こうした各種業界との提携と、ブロックチェーンに加えて、ビッグデータやスマートサプライチェーンの応用に関する開発を包括的に活かしていくためのひとつの目標が「智慧城市(スマートシティ)」の実現であり、そのために開発されたのがスマートシティ研究所ということになるようです。
ブロックチェーンを含めた多様な技術の開発を着々と進めているようですので、これからのサービス展開がどうなっていくか、楽しみですね!
上に挙げた「京东智臻链」の公式サイトには、京東がブロックチェーンの技術やサービスの開発を進める方向性についてまとめたホワイトペーパー(白皮書)が公開されています。
ホワイトペーパーによれば、京東は「サプライチェーン」、「金融」、「保険」、「ビッグデータ」、「政務・公共」といったフィールドでブロックチェーンを活用することによって、「京东区块链应用场景(京東ブロックチェーンアプリケーションシーン)」を構築することを目指しているそうです。
それぞれのフィールドにおける技術開発を着々と進めている様子が伝わってきますが、その先に構築されるシーンとは具体的にどのようなものになるのか…
実験室や研究所から生み出された技術が社会実装していくプロセスなど、具体化の動きを意識しながら、これからも情報をコツコツと追いかけていきたいと思います!