仮想通貨の市場がなかなか盛り上がらないなかで、仮想通貨取引所はいろいろな動きを見せていますね。
台湾でもさまざまなタイプの新しい取引所が次々と開設されるとともに、従来の取引所もいろんな取り組みを進めています。
そんななか、台湾の仮想通貨交換業者が台湾で初めてとなるSTOの実施に向けた動きが報じられていましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・MaiCoinがSTOの実施を準備⁉︎
・金管會は6月末までにルールを規定?
・STOをめぐる健全なルールが構築されるか?
台湾の経済紙「經濟日報」が2019年3月4日に報じた記事によると、台湾の大手仮想通貨交換業者である「MaiCoin」が、仮想通貨取引を管轄する金融監督管理委員會(金管會)にレギュラトリーサンドボックスの適用を申請したということです。
台湾のレギュラトリーサンドボックスについては以下の記事で少し触れましたが、試験的に規制緩和を実施し、その結果を基に制度整備を進めていくための取り組みです。
その適用をMaiCoinが申請した具体的な内容は、以下のようにまとめられています。
金管會はセキュリティトークンオファリング(STO)の発行ルールを検討しており、国内ではすでに仮想通貨交換業者のMaiCoinグループが金管會にレギュラトリーサンドボックスの適用を申請している。
(金管會正研議證券型代幣(STO)的募集發行規範,國內已有虛擬貨幣平台業者MaiCoin集團,向金管會申請進入監理沙盒實驗。)
MaiCoinについては以下の記事に書き留めましたが、ICOで多額の資金を調達した「BitoEX(幣託)」と並ぶ「二大仮想通貨交換業者」と呼ばれ、台湾の取引所のフロントランナーとして多様な取り組みを展開しています。
そんなMaiCoinはSTOに以前から関心を寄せていたようで、台湾のブロックチェーン専門ニュースサイト「動區BlockTempo」に2019年1月25日掲載された、MaiCoinの創業者である劉世偉さんの寄稿記事には、以下のように書かれています。
2019年、STOは間違いなく焦点となり、暗号通貨と実体経済をつなぐものであり、これから5年のうちに、必ずもっとも重要で無視することのできないチャンスとなります。
(2019 年,證券型代幣 (STO) 絕對是重點,是密碼貨幣跟實體經濟的連接,在未來五年內,絕對是最重要也不能忽視的機會。)
また、「iThome」の記事では、BitoEXのCEOである鄭光泰さんも「STOは台湾にとって重要である(STO對臺灣來說是重要的)」と述べたそうです。
2019年に入ってから台湾の仮想通貨業界がSTOに関心を持つなかで、MaiCoinが先んじて動いた様子がうかがえますね。
上に挙げた「經濟日報」の記事にあったように、金管會はSTOのルール規定を検討しているようです。
記事によれば、STOの実施によって、交換業者は取引所の運営資金を法定通貨によって調達することが可能になり、投資家にとっては投資によって利益を受ける方法が広がるといったメリットがあるとまとめられています。
こうしたメリットを持つSTOに対して、「經濟日報」の別の記事は、金管會のトップである主任委員の顧立雄さんが以下のように語ったと書かれています。
4月末までに、STOの関連メカニズムを打ち立てるためにスタートアップと検討会を開催し、業界の意見を聴取し、6月末までに関連の発行基準とルールを制定する。
(將在4月底前,針對STO相關機制的建立,與新創業者舉行協調會,聽取業者意見;並在6月底前,訂定相關發行標準與規範。)
以下の記事に書き留めていますが、2018年10月の時点では顧立雄さんは2019年6月までにICOに関する法制を整備すると言及していました。
この方針がどのようになったかというところははっきりしませんが、上に挙げたSTOへの関心の高まりとメリットについて検討するなかで、STOに関するルール整備が浮上してきたということかもしれません。
台湾では2018年11月に、「マネーロンダリング防止法(洗錢防制法)」の対象業種に仮想通貨交換業が明記され、制度整備の方針を示した金管會が仮想通貨を「金融商品」として管理・監督していく方向で動いています。
仮想通貨をめぐる環境整備の一環として、STOが位置づけられていく流れが生まれていることがうかがえますね。
先日、大阪で開催されたブロックチェーンミートアップでも、STOがこれからの資金調達の方法のひとつとして注目されていることが言及されていました。
(僕も参加記を書きましたが、僕のレポではSTOへの言及が漏れていたので、Cosmosさんの詳細なレポートをご参照ください)
STOが注目される背景には、ICOをめぐる不健全な状況があるようです。
金管會によるSTOに関するルール整備を報じた「經濟日報」の記事でも、ICOをめぐる詐欺事件の多さが言及されています。
こうした背景のもと、仮想通貨市場の健全な発展、スタートアップによる資金調達の効率化、投資家保護といった課題を解決する可能性を持つSTOに、関連業界だけではなく、行政組織である金管會も注目しているということだと思います。
ルール整備が具体的にどのような形で進んでいくのか、これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!