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香港のAlipayHKがブロックチェーンを使った国際送金を実現…のニュースを少し違った角度から見てみました

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  • kaz
  • 2018/06/25 17:14
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ブロックチェーン・仮想通貨をめぐる動きは世界中で「日進月歩」よりも速いペースで展開されているので、日々新しいニュースが飛び込んできます。

台湾・香港・中国でも目まぐるしい動きが展開されていて、情報を追いかけるだけで精一杯になってしまい、なかなか情報の整理とアウトプットが追いつきません(^^;

たとえば、ここ数日の中国発のブロックチェーン・仮想通貨に関する情報のうち、日本語で読める形で情報発信が既にされているものだけをピックアップしても…

・中国のCCIDがパブリックチェーンに関する第2回の格付けを公開(僕の過去記事はこちら
・中国科学院が「大数据与区块链实验室(ビッグデータ・ブロックチェーン研究室)」を開設(ソースはこちら
・Tencent(腾讯)が中国政府機関や金融機関を含む諸団体と「中国区块链安全联盟(中国ブロックチェーンセーフティアライアンス)」を結成(ソースはこちら

などの動きがここ10日ほどのあいだに展開されています。

また、Binance(幣安)が「数字资产交易所联盟计划(デジタルアセット取引所アライアンスプラン)」を発表(ソースはこちら)といったような動きも、中国語発信の情報として流れています。

こうした動きをコツコツとインプットしながら、情報整理・アウトプットの作業をしているのですが、なかなか…

そうしたなかで今回は、アリババ(阿里巴巴)傘下のAlipayHK(港版支付宝)がフィリピンのGcashと提携して、ブロックチェーンを使った国際送金システムを構築したというニュースを目にしました。

これも日本語で読める情報が既に流れています(たとえば、日経新聞のこちらの記事)。

この情報自体にもニュースバリューがありますが、情報の詳細については他の日本語記事に任せて、ここでは少し違った観点からまとめてみたいと思います。

(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までに止めてご覧ください(^^;)


もくじ

・世界で初めてブロックチェーン上のデジタルウォレットを使った国際送金を実現!?

・ブロックチェーン・仮想通貨に関するイメージ

・ブロックチェーンのイメージを向上させる「三做三不做」

・井賢棟さんが示すビジョン

・ニュースの見え方はいろいろですね


世界で初めてブロックチェーン上のデジタルウォレットを使った国際送金を実現!?

中国新闻社が経営する「中国新闻网」が報じた記事によると、「AlipayHK(港版支付宝)」を開発・運営している「蚂蚁金服(Ant Financial)」は2018年6月25日にブロックチェーンの技術を使用した国際送金のサービスに関する発表会を開き、AlipayHKの会員がブロックチェーン技術を使って、フィリピンのデジタルウォレットGcashに送金するサービスを開始したと公表しました。

発表会では実際に、香港で22年間仕事をしているフィリピン人のGraceさんが、フィリピンに住んでいる家族に送金するというプロモーションがおこなわれ、わずか3秒で送金されたとのことです。

発表会には、香港財政司司長の陈茂波(陳茂波)さん、蚂蚁金服のCEO井贤栋(井賢棟)さん、长和集团(長和グループ)共同代表の霍建宁(霍建寧)さん、そして、阿里巴巴集团(アリババグループ)の会長である马云(馬雲、Jack Ma)さんが、このプロモーションの様子を見守ったそうです。

「支付宝(Alipay)」や「芝麻信用(Zhima Credit)」を開発・運営する蚂蚁金服の親会社であるアリババのリーダー、香港の伝説的経営者である李嘉誠さんが最近まで率いていた長和グループのトップ、および香港の財政部門の責任者が勢ぞろいしているところに、このサービスへの注目度の高さが感じられますね。

ちなみに、Gcashはフィリピンの大手通信会社であるGlobe telecomが提供する送金サービスで、日本からもサービスを提供しているようです(日本の公式サイトはこちら)。

台湾でもそういえばGcashのマークを見たことがあります。地図を見ると、台湾は意外とフィリピンと近くて、在台フィリピン人の方もたくさんいるんですよね。

記事によれば、今回のサービス開始を足掛かりに、世界中の国・地域でのサービス提供を目指しているということでしたので、台湾でも近いうちにサービスが開始されるかもしれないなと思いました。


ブロックチェーン・仮想通貨に関するイメージ

こうした動きについて、日本語で読める記事では、たとえば上に挙げた日経新聞の記事のように、アリババのジャック・マーのコメントを中心に構成されています。

それに対して、僕が参考にしている「中国新闻网」の記事は、蚂蚁金服の井賢棟さんのコメントを中心に構成されています。

この内容が、ブロックチェーン・仮想通貨をめぐるさまざまな表現に満ち溢れていたので、内容を追いながら少し見てみたいと思います。

まず、ブロックチェーンに対する一般的なイメージとして、「不少人由此想到的是“发币”、“一夜暴富”、“割韭菜”(少なくない人が思い浮かべるイメージは、“发币”、“一夜暴富”、 “割韭菜”というものである)」と書かれています。

“发币”は「トークン発行」、“一夜暴富”は「一獲千金」、とこのふたつはまだ漢字の雰囲気から想像できると思うのですが、最後の“割韭菜”…これは、「激しいボラティリティ」ぐらいのニュアンスでしょうか。

「韭菜」はニラですね。ニラは刈ると、すぐに新たに生えてくるということから、市場への入れ替わりが激しくて価格変動が大きい様子を示す言葉として、「割韭菜」という表現がよく使われます。

中国・香港の一般的な人々が感じているブロックチェーン、というよりも仮想通貨に対するイメージも、日本とそう変わらないことがここから見て取れます。


ブロックチェーンのイメージを向上させる「三做三不做」

ブロックチェーン・仮想通貨に対するこうしたイメージに対して、井賢棟さんは「こうしたバブルはいずれ弾ける」と指摘し、ブロックチェーンの本当の価値は、「信任アルゴリズム(信任机制)」による、「解决数据、物、资产、合约和人的可信问题(データ、モノ、資産、契約と人とのあいだの信用問題を解決すること)」を目指すとしています。

そのうえで、蚂蚁のブロックチェーンには「三做三不做(3つのやるべきこと、3つのやるべきではないこと)」があると書かれています。

(このコメント、「中国新闻网」の記事では井賢棟さんが言ったものになっているのですが、ジャック・マーさんが言ったことになっている記事もあるんですよね…ここでは、「中国新闻网」に依拠していますが、発言者は明示しない形で挙げておきます)

まず、前半の「三做」は以下の3点です。

要解决有社会价值的实际问题(社会的価値のある実際問題を解決する)
要不断攻克区块链通向大规模实际应用的技术障碍(ブロックチェーンの大規模な実用的サービスを実現するための技術的ハードルを克服し続ける)
要与合作伙伴一起共建开放的区块链生态(パートナーとともに開放的なブロックチェーンエコシステムを構築する)

続いて、後半の「三不做」は以下のとおりです。

不做“空气币”(「スキャム」はしない)
不做违反法律法规的技术应用(法に反する技術利用はしない)
不做任何伤害用户数据安全和隐私的行为(ユーザーのデータの安全とプライベートな行為を害するいかなることもしない)

前半部分はブロックチェーン技術の発展に関する前向きな姿勢、後半部分はおもに仮想通貨にかかわるネガティブイメージを払拭するための方針であることが見て取れますね。


井賢棟さんが示すビジョン

今回の発表会で井賢棟さんは、「很高兴看到区块链技术能用于改善普通人的生活(ブロックチェーンの技術が普通の人の生活をより良いものにするところを見ることができて嬉しい)」と語っています。

自分のところの技術に関するプロモーションについてのコメントですから、「自画自賛」しているとも取れますが、同時に、以下のように語っていることが印象的です。

蚂蚁金服坚信改变世界的不仅是技术,而是技术背后的使命、梦想和价值观。
(蚂蚁金服は、ただ技術が世界を変えるということだけではなく、技術の背後にある使命、夢、価値観が世界を変えると確信している)

また、こうした考え方を井賢棟さんは、「暖科技」というフレーズで表現しています。その指し示す意味は、以下のように説明されています。

通过技术让金融变得更普惠、透明、简单、安全、可信,用金融的善意去真正温暖每一个普通大众、每一个小微企业。
(技術を通じて金融をより一般的に、透明に、簡単に、安全に、信頼できるものに変えていき、金融を通じた善意によって普通の大衆、中小企業に本当のぬくもりを感じてもらう)

蚂蚁金服の公式ウェブサイトには「普恵金融」というフレーズも出てきています。ブロックチェーンという最新技術を一般の人々のあいだに広めていくという姿勢を感じることができますね。


ニュースの見え方はいろいろですね

今回のニュースは、英語や日本語の情報としては超有名人であるジャック・マーさんのコメントにフォーカスが当てられて報じられるものだと思います。

もちろん、世界的に重要なキーパーソンの発言は大切ですから、そうしたことにニュースバリューがあることは否定しません。

ですが、そうしたニュースも追いかけつつ、中華圏のニュースを見ていくと、また違った角度から報じられているものもあり、なかなか興味深いです。

今回の記事では、アリババグループの金融部門を統括する井賢棟さんというキーパーソンの存在と考え方に触れることができました。

そこから見えてくるブロックチェーン・仮想通貨の状況は、日本語で触れる情報からだけではうかがい知れない視点が含まれているように感じます。

ブロックチェーン・仮想通貨に関する情報は多様で、しかも進歩や変化が激しいです。

そうした情報に振り回されず、でもなるべく取りこぼさず、マクロな情報もミクロな情報も、メジャーな情報もマイナーな情報も、出来る限り追いかけていけるように頑張りたいと思います!


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公開日:2018/06/25
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