2018年7月31日に、ALISがMyTokenとの提携を発表しましたね。
台湾・香港・中国のブロックチェーン・仮想通貨の動向に関心を持っている身としては、MyTokenについて何か記事を書きたいなと感じていたのですが、あんまりよく知らない…ということもあって、記事にするのを躊躇していました。
ただ、今回、記事を書くきっかけがあり、少し考えたり想像したりするところもあったので、自分のこれまでの記事とも絡めながら記事として書き留めておきたいと思います。
(この記事は、僕の他の記事と少し体裁が違っていて、本題に入る前に「記事を書くきっかけ」という一文が入っています。本題に関心がある方は、この部分は読み飛ばしていただいても支障ありませんので、よろしくお願い致します)
・記事を書くきっかけ
・MyTokenのコミュニティへの志向
・資産管理アプリからコミュニティの発展へ?
・ネットの次世代産業を見据えて?
ALISとMyTokenの提携が発表されてすぐ、僕自身は以下のように感じていました。
現地の情報に基づいて記事を書くスタイルなので、これといった情報が流れていないことに対して記事を書くことにはためらいがあったので、他の方の情報を待っていました。
そこで、MyTokenがどういうサービスを提供しているところなのかということについて、しまりすさんの記事が上がってきましたから、僕自身はこれで納得していた部分もありました。
と思っていたら、ALISをアンバサダーとしているアリスマン(億ラビットさん命名)から、思いがけず、記事リクエストをいただきました。
これは、「台湾・香港・中国をフィールドにしていると自称しているのなら、グズグズと他の人の記事を待っているんじゃなくて、あなたがサッサと記事にしなさい!」という叱咤激励だなと感じました。
というより、僕自身がなんとなく心の片隅で思っていたことを見透かされたような気がしましたので、これは記事にしよう!と改めて思い立ちました。
とはいえ、先のツイートに書いたとおり、MyTokenに関する手持ちの情報は限られています。
どうしようかと思案していたときに、中国事情に詳しい奥悉太さんが以下のようなコメントをくださいました。
このコメントを見て、「あ、そっか、MyTokenが目指しているところを、相場アプリの現状と照らし合わせながら想像してみればいいのか…」という観点から記事を書いてみようと思いました。
そこで、ホワイトペーパーなど、MyTokenが発信している情報に、僕が以前に書いた記事などの雑多な情報を掛け合わせて、MyTokenの視点を少し想像してみることにしました。
この想像が合っているか間違っているかは、とりあえず記事にしてみなさんに読んでいただかないと僕もわからないので、僕個人の想像として書き留めてみたいと思います。
冒頭に挙げた提携発表の記事には、今回の提携によって、「ALISとMyTokenは、お互いのコミュニティ発展を目的に日本と中国におけるCryptoマーケット状況や規制などの最新情報を相互にシェアしていきます」と書かれています。
ALISが「コミュニティ発展」を掲げるというのは、ある程度自明のこととして自然に理解されるところですが、他方、MyTokenも同様の考えを持っているというところが、初見で記事を読んだときには「?」と感じた部分でした。
というのも、MyTokenは仮想通貨の価格や情報を一覧できる「仮想通貨資産管理アプリ」を主力のサービスとして提供している企業です。
「資産管理アプリ」と「コミュニティ発展」…ということが、一見するとすぐにはつながらないように感じるのですが、
冒頭に挙げた記事には、「(MyTokenが)日本をMyTokenコミュニティ拡大のための重要な拠点として定めており、アプリの日本語対応、コミュニティマネージャーの採用を意欲的に進めています」と書かれていて、MyTokenも「コミュニティ発展」を目指していることがわかります。
この点について、たとえばMyTokenの公式ウェブサイトを見ると、企業の方向性を示すキャッチコピーとして「打造加密货币投资新生态(暗号通貨投資の新たなエコシステムを打ち立てる)」というフレーズが掲げられています。
ちなみに、サイトには日本語ページと英語ページがあり、このキャッチコピーは日本語ページでは「暗号通貨投資の生態系を創造します」、英語ページでは「Create a New Ecosystem of Cryptocurrency Investment」となっています。
ここだけを見ると言語によってそれほど違いはありませんが、詳しい内容になると中国語と日本語・英語で若干、表現の違いが見られますので、以下ではホワイトペーパーの内容も含めて中国語(簡体字)で書かれたものを基準に見ていきます。
さて、こうしたキャッチコピーが掲げられている文章のなかには、以下のような表現が見えます。
MyToken提倡价值投资,推崇去中心化的设计理念和组织结构,作为区块链用户、投资者的桥梁,帮助用户更好更快地参与到区块链世界的变革中。
(MyTokenは投資を価値あるものとみなし、脱中央集権化された設計理念と組織構造を推進し、ブロックチェーンユーザーと投資家のあいだを橋渡しし、ユーザーがブロックチェーンによる世界の変革のなかへよりよく、より早く参加できるように支援することを提唱する)
「ユーザーと投資家のあいだを橋渡し」して、ユーザーがブロックチェーンの世界へ参加することをサポートするというあたりに、「コミュニティ発展」に対する志向を見て取ることができます。
このあたりのことは、MyTokenのホワイトペーパーにもう少し詳しく書かれています。
たとえば、WP中、「MyToken使命」という項目には、以下のように書いてあります。
MyToken 希望能够有效连接区块链世界和传统世界,有效接连基于区块链的项目方和参与者,帮助所有人更好地了解项目和区块链的世界,共同成就整个产业和人类世界的美好未来。
(MyTokenはブロックチェーンの世界と伝統的な世界を、ブロックチェーンに基づくプロジェクトと参加者を有機的に結びつけ、すべての人がよりよくプロジェクトとブロックチェーンの世界を理解できるように支援し、すべての産業と人類の世界が素晴らしい未来を共同で作り上げることができるように望んでいる)
多様な人々やプロジェクトを「結びつける」ということがキーワードとして頻発しているところに、コミュニティ形成への志向をうかがうことができますが、もう少し明確に、以下のような説明をしています。
MyToken 于2017年8月成立,选择以行情服务为切入口,立志于为用户提供一个健 康的,不作恶的加密货币社区平台
(2017年8月に成立したMyTokenは、情報サービスを入り口として、ユーザーに健全な、悪意のない暗号通貨コミュニティプラットフォームを立ち上げる)
ここでようやく、「資産管理アプリ」×「コミュニティ発展」がMyTokenのなかではつながっていることが理解できますね。
それでは、なぜ「資産管理アプリ」は「コミュニティ発展」のための入り口になりうるのでしょうか?
この点、僕が見た限りではホワイトペーパーには必ずしも明示されていなかったように思うのですが…ALISとのトークイベントでは何か言及がありましたでしょうか?
もし、MyTokenからはっきりとしたアナウンスがあればそれに準拠したいと思うのですが、ここからはMyTokenの視点から少し外れて、仮想通貨資産管理アプリを提供している企業の開発目的から少し考えてみます。
というのも、僕が以前の記事で取り上げた「BitUniverse」という企業も、仮想通貨資産管理アプリを提供しながら、コミュニティの形成について言及しているんです。
BitUniverseは台湾の記事では「全球第三大虛擬貨幣管理程式(世界三大仮想通貨管理アプリ)」と呼ばれるサービスを提供しています。
…この「三大○○」って、どれを指すのかがわからないことがよくあるのですが、案の定、台湾の記事中にもどの3つなのかが明示されていませんでした。
「全球」ですから世界的にサービス展開しているもの…BlockfolioとDeltaあたりでしょうか?少なくとも、ここにMyTokenは入っていないようです。
このサービスの創業者である陳勇さんは、資産管理サービスの提供にあたって、以下のように「代幣經濟(トークンエコノミー)」について語っています。
在代幣經濟中,用戶是持有者也是股東,研發人員、代幣經營者與用戶社群之間的關係更加緊密,社群的營運與共建是重要的一環,促動虛擬貨幣市場更健康的發展。
(トークンエコノミーにおいては、ユーザーは所有者でもあり株主でもある。開発スタッフやトークン経営者とユーザーコミュニティとの間の関係はさらに密接なものになり、コミュニティの運営と共創は重要な一部であり、仮想通貨市場をより健全に発展させていくことを促す)
BitUniverseにおけるこうした考え方は台湾への進出を意識して発言されていることを考えると、コミュニティ形成への意識は、アジアのマーケットでの事業展開を考える「資産管理アプリ」運営企業に共通する見方なのかもしれません。
思えば、日本で「コイン相場」を提供するCOINJINJAもトークンエコノミーについて積極的ですよね。
ALIS×COINJINJAのトークンエコノミーについては、億ラビットさんが詳細な記事を書かれていますね。
BlockfolioやDeltaといった資産管理アプリの思想が僕にはまだフォローできていないので、これだけではなんとも言えないところがあるのですが、
MyToken、BitUniverse、コイン相場にとっては、資産管理アプリの役割が情報提供ではなく、「情報共有」、あるいは「情報共創」にあるのかなと感じます。
このあたりが、競合するサービスとの差別化につながると意識されているのではないか…と想像しています。
なお、MyTokenは2018年7月20日に、仮想資産管理(Crypto Wealth management)プラットフォームを提供するスイスの「SwissBorg」とコミュニティパートナーシップを締結しています。
SwissBorgについては日本語で読める情報が多く出ていますが、公式ウェブサイトによると、「CHSBトークン」を介した運営方針へのユーザー投票によってコミュニティを運営に活かしながら、プライベートバンクとしての機能を果たしていくプラットフォームの構築をおこなっているようです。
ここにも、MyTokenが「コミュニティ」をベースとした連携を広く推進している様子が見えてきますし、ALISとの連携もこうした行動の一環として位置づけられていることがわかりますね。
前回、香港で「アジアブロックチェーン学会」という組織が結成されたという記事を書きました。
この記事のなかで、この学会はブロックチェーンに関する基礎理論や技術の提供をおこなうという目的を掲げていることに言及しましたが、なぜ学会がそうしたスタンスを取ることにしたのかについては、はっきりと言及しませんでした。
この点について、記事を書く際に引用した「香港文匯網」の記事のなかに、学会のキーパーソンによる以下のようなコメントが掲載されていました。
回想20多年前互聯網剛剛進入中國的時候就會發現,最早賺錢的公司不是新浪、搜狐和網易三大門戶,更不是現在的百度、阿里和騰訊,而是萬網、世紀互聯等這些為互聯網提供基礎設施的公司
(20年以上前にインターネットが中国に入ってきたときに起こったことを思い返すと、もっとも早くに稼ぐことができた企業は新浪、搜狐、網易の三大ポータルではなく、現在の百度、アリババ、テンセントでもなく、萬網や世紀互聯などのインターネットに基礎インフラを提供した企業だった)
この視点を基に、インターネット・ICTをめぐる産業のフェーズを振り返ってみると、ネットの第一次産業→第二次産業→第三次産業という変遷が見えてくるような気がします。
そう考えると、MyTokenを含むブロックチェーン関連企業が見据える方向性というのは、ネットにおける次の世代、もしくはそれらすべてを包括する「第六次産業」的な位置づけなのかなと思えてきます。
そこで重要な力の源泉となるのが、上に挙げられた諸企業が十分に取り込むことのできなかった「コミュニティ」なのかもしれないな…と想像します。
ネット業界の変遷に詳しい人から見れば、「何を今更…」的なまとめになってしまった感は否めません。
ですが、MyTokenが展開しようとしている「情報共有」「情報共創」のあり方は、それまでのICT産業の中で蓄積されてきた実績や知見を活用しつつ、ブロックチェーンが世界を変えていくという確信のもとで、「コミュニティ」ベースの新たな事業展開を模索しようとしている姿だろうと感じます。
ALISと「コミュニティ」で水平につながることで、MyTokenがどのような事業展開をおこなっていくのか…という視点からも、今回の提携のこれからを見据えていきたいなと思います!
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