(香港の重慶大厦・チョンキンマンションは両替の聖地。治安が悪そうな雰囲気が充満していますけれど、緊張感を持って臨めば多分大丈夫…かな?記事とは関係ありません(^_^;)
ブロックチェーンに限らず、新しい技術が普及・発展していくためには、「産官学」の連携が必要かなと思います。
このうち、産業界や行政の動きは新たな技術に直接的にかかわっているために具体的な姿が見えやすいのですが、「学」の動きは基礎的な技術や知見の積み重ねが中心なので、外からはなかなか見えてこない感じがします。
ただ、「学」をめぐる動きは技術や知見の交流をともなうために、人的なつながりがそうした場で形成されていくという機能を果たしていることもあり、技術の普及・発展のプロセスにあっては、見逃すことができないのかなと思っています。
今回は香港で結成されたブロックチェーンに関する団体の動向が目に留まりましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・「アジアブロックチェーン学会」の深圳分会が成立
・「アジアブロックチェーン学会」って?
・学会結成の目的はどこに?
香港のニュースサイト「香港文匯網」に掲載された記事によると、「亞洲區塊鏈學會(アジアブロックチェーン学会)」が深圳で開催した「2018年亞洲區塊鏈商業應用高峰論壇(2018年アジアブロックチェーンビジネスアプリケーションサミット)」の席上で、学会の深圳分会の成立を宣言したそうです。
アジアブロックチェーン学会は、今回の深圳分会の設置によって「更好地拓展大灣區金融、保險、醫療和商業等領域區塊鏈技術應用機遇(大湾区の金融、保険、医療と商業などの領域のブロックチェーンアプリのチャンスをより一層拡大する)」ことを目指していくようです。
ここで言及されている「大湾区」というのは、深圳・珠海・佛山・中山・東莞・肇慶・惠州・江門の都市にまたがる経済圏のことを指しています。
日本語では「珠江デルタ」という形でこれまで認知されてきた地域ですが、最近では、これらの都市に香港・マカオ・広州を含めた「粵港澳大湾区」という表現が中国政府によって推進されています。
僕も以下の記事で、こうした経済圏と香港の立ち位置について少し触れましたが、こうした経済圏の中心として想定されているのは、やはり香港ではなく深圳なのかな?ということを、今回の動きによって少し感じました。
日本語で読める香港情報を発信している「香港ポスト」の以下の記事を見ても、香港市民の「粵港澳大湾区」に対する期待は高いとはいえないようですから、学会がわざわざ深圳分会を設置した経緯もこのあたりにあるのかな…と勝手に想像しています。
アジアブロックチェーン学会は、公式ウェブサイトによると2018年4月に専門家を中心として結成されたばかりの学術団体であるようです。
とりわけ…
包括美國哈佛大學、哥倫比亞大學、英國劍橋大學、香港大學、香港中文大學、中國中國社會科學院、北京大學、清華大學五道口金融學院等個多名專家教授擔任學術顧問(アメリカのハーバード大学、コロンビア大学、イギリスのケンブリッジ大学、香港大学、香港中文大学、中国の中国社会科学院、北京大学、清華大学五道口金融学院などの多くの著名な専門家の教授を学術顧問に迎えている)
とされ、そのほか、法律や税制の専門家のサポートやブロックチェーン開発企業や金融機関からの賛同を得ていると説明されています。
また、「香港文匯網」に掲載された学会結成当初の様子を伝えた記事によると、イギリスでブロックチェーンの業務展開を進める「卓越國際集團(EXCEL PREMIER INTERNATIONAL LIMITED)」がおこなっている「ONTOP」というプロジェクトと提携し、ブロックチェーンをめぐる理論と技術の提供によって、このプロジェクトに参画することが報じられています。
「卓越國際集團」がどういう企業であるか、というところまで情報を追いきれていないのが恥ずかしい限りです…
ただ、記事によれば、学会の会長である蔡志川さんは「ONTOP亞太運營中心(ONTOPアジア太平洋運営センター)」の投資顧問だということですから、学会の性質としては、純粋な学術団体というよりも、「産学連携」のプラットフォームという感じなのかもしれません。
学会の公式サイトには、「學會使命」として、「學習」、「創新(イノベーション)」、「交流」、「公益」、「改變」の5要素が挙げられています。
ただ、具体的な活動の展開はまだまだこれからですし、学会の規模もまだ明らかにされていません。
本会と分会の創設のニュースが先行しているので、組織づくりをおこなっている段階なのかなと感じますが、企業のプロジェクトととの関連が報じられていますので、これからの動きに少し注目していきたいと思います。
まだ具体的な動きはこれからという組織に注目するのは、まず先に触れたように、この学会が「粵港澳大湾区」でのブロックチェーン開発に寄与することを目指しているからです。
中国政府が「粵港澳大湾区」をひとつの経済圏として押し出す背景には、これまで中国の経済発展を牽引してきたこうした地域の「てこ入れ」という側面も少なからずあるのだろうと思います。
ただ、そうであるだけに、新たな技術として生まれ、これからの発展が大いに期待されているブロックチェーンの活用をビジネスチャンスのひとつ、経済浮揚の重要な柱のひとつとして、技術の開発が進められていく可能性があるのではないかと感じます。
そうしたところへアプローチする組織の動向は、この地域の動きがこれから成功するか失敗するかということを見ていくうえで、少し追いかけておきたいなということがあります。
文中に挙げた「香港文匯網」の学会結成に関する記事のなかには、学会の主要人物のコメントとして、ブロックチェーンをめぐる現状認識が以下のように語られています。
目前人們都在談區塊鏈生態,2018年也被認為是區塊鏈應用的元年,而實際上的發展卻還不能為應用落地提供支持,不管是各種公鏈的進度,還是基礎設施的建設,都還不夠成熟。(目下のところ、人々はブロックチェーンエコシステムについて語り、2018年はブロックチェーンアプリ元年だといわれている。しかし、実際の発展はまだ、アプリを実際に提供することをサポートすることはできないし、各種のパブリックチェーンの開発進度や基礎インフラの建設はまだ成熟には程遠い)
そのうえで、学会は基礎インフラの整備に、基礎的な理論や技術を提供することによって貢献することが語られています。
「学」がかかわる動きはなかなか見えにくいだけに、特定の地域を想定した動きや果たすべき役割が明示されている組織は貴重かなと感じます。
これから学会の組織や活動がどうなっていくのか、続報がちゃんとあるのかは未知数ですが…できる限り、注目していきたいと思います!
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