前々回に【遊技機衰退の原因(その2:メーカー開発社員の開発スキルの低さ)】
を書きましたが、それなら
「社内で評価されて、淘汰されるんじゃないの?」
という話が出てくると思います。
えぇ。普通ならそうなりますよね?
しかし今の遊技機メーカーはそうはなっていません。
それは2000年代初頭までの会社システムと、今のシステムの違いがあります。
1990年代~2000年代初頭まで、遊技機メーカー社内は
なんとなくですが、「師弟関係」が成り立っていました。
これはもしかしたら、他の業種でも同じ事が言えるかもしれません。
1・遊技機に特化した(確率計算等)知識と理論を持った社員の採用。
2・先輩が後輩に(厳しく、時には優しく)教えるシステム。
3・また遊技機の知識に特化した部分と、販売台数に即した社内評価
等が成立していたように見受けられます。
自分がまだ遊技機開発を始めたばかりの頃、例えば打ち合わせで
メーカーの担当の方の横に必ず新人の人が付いていました。
私たちの打ち合わせの最中に、メーカーの方が新人に
「なんで、こういう提案に対して、自分がOK出したか分かるか?」
と聞いていました。
そして新人の方が答えると
「そうだね、その通り」
とか
「違う、ここは〇〇を後に考えなければ、影響が出る」
とかその場で指導していました。
もちろん自分もW先輩の下にいたものですから、
厳しくも、時には一緒に考えて頂いたり、とてもありがたい「教育」を
して頂いたと思っています。
自分はこれを「パダワンシステム」と勝手に呼んでいますw
※スターウォーズのジェダイマスター(騎士)とパダワン(新人)の関係から。
しかし、何故かこのシステムは2003年辺りから崩壊してしまいます。
理由は…
1・販売機種数の減少による、遊技機に特化した新入社員の不採用
2・版権が増えた為に、偏った採用に傾倒。
※【遊技機衰退の原因(その1:メーカーの新入社員の採用ミス)】参照
※それ以上の先輩がそもそも映像に特化した知識を持っていない為、教育できない。
3・ベテラン(先輩)の離職の増加
4・メーカー内での依願退職募集増加(2010年以降)
等が考えられます。
図5:師弟教育の崩壊
ところがさらに拍車をかけて、その後メーカー内で問題が起きます。
それは…
等に伴い、年間の開発機種数を増やさなければならなくなります。
例えば、とあるメーカーの場合…
(パターンA)
市場に設置されている機種数が10万台としましょう。
昔はこの1年間で10万台を総入れ替えするとします。
(それがそのままメーカーの売り上げになるので)
その当時は1機種辺り平均2.5万台売れたとすると
年間4機種作れば良いとなります。
(パターン2)
所が数年前から販売機種台数は減少します。
市場台数が減っているとはいえ、ここではあくまでもそのまま10万台としますと
数年前から1機種辺り平均1万台以下になりました。
となると、10万台の市場を確保するためには、年間10機種作らなければいけません。
単純に2.5倍の機種数にしないと維持できません。
またさらに問題なのが、ここ10年以上の間、メーカー社内では
演出過多に走り過ぎていました。
そして社員のスキル不足。
これを維持するためには、メーカー社内担当者は、
以前(パターンA)は1機種辺り…3~4人
で済んだところが、
今現在(パターンB)は1機種辺り…5~8人
となってしまっています。
こう見ると上記のメーカーの場合、10年以上前は年間のメーカー社内の開発担当者は
4機種×3~4人=12~16人
で良かったのが、今現在は…
10機種×5~8人=50~80人
必要となってしまいます。
※実際は一人が2~3機種掛け持ちでやっているのが現状ですが
正直それぞれの機種を把握できない状態です。
ちなみに自分が10年以上前から様々なメーカーで
「演出が多すぎる!作り手さえも把握できない演出をユーザーは理解できない」
「理解する前に、わけがわからなくて、打つのを止めてしまう」
「わかりやすい勝利の法則(フロー)を作るべき。その為に演出を減らすべき」
と言い続けていました。
しかしどのメーカーの担当者も…
「MAXタイプだから、通常変動中にユーザーを飽きさせない為にもっと演出を!」
「ロム容量が増えたから、もっと入れられますよね?」
「自分がこのアニメ好きで、このシーンを入れたいから」
「MAXタイプだから…」は、まぁギリギリ理解できますが、
それさえも一言三言でカタが付きます。
つまりそれ以外は、メーカーの開発者のエゴだと思っています。
・年間開発機種数増加
・開発ボリューム過多
↓(原因)
・社員数を増やす(1機種辺り5~8人)
・師弟関係が無くなってしまった為に、開発スキルが低い
・辞められると開発機種数が確保できない(管理職)
↓(結果)
・販売台数減少(ユーザー離れ)
・売上減少
・中間管理(社内)に正当な開発スキル、実績に基づいた評価システムがない
↓(仕方ないので…)
・いきなり依願退職者を募る
・能力のある人は真っ先に退職
↓(社内内製に切り替え)
・また人手不足
・またむやみに新入社員増加
という悪しき循環が起きています。
次回はメーカーのエゴ(恐怖心とでも言いましょうか)である
演出過多か、社内分析という名の、自己正当性について
お話したいと思います(多分)
(※次回GW特別企画【企画屋とは何か?必要なスキルとは?】)