列車に鹿が巻き込まれ、復旧に時間がかかりそうなので、JRにタクシー代送してもらうことになった件は、この記事に書きました。
そのタクシーの運転手に聞いた話がとても興味深かったです。
鹿が列車に巻き込まれることは北海道ではよくあること。
それよりも、宗谷本線は乗降客が少なく、特に去年、今年はコロナの関係もあってひどい状態。
もともと無人駅が多い。
それでも住民が多少は利用してはいたが、今では、殆ど乗降客のない駅も稀ではない。
とある駅(抜海駅)などは、一日に、病院に通うおばあさんと、学校に通う女子高生の二名しか乗降しない習慣が続いている。
宗谷本線の年間赤字は何(十?)億円(数字を忘れました)JRとしては、廃線にしたい。
仕方がないという声はある。
今、廃線に反対している人は、むしろ移住してきた鉄道マニアなど、地域の実情がよくわかってない人だったりする。
だけどね・・・利用している人はどうなるんだろうね。
元はといえば・・・・国鉄の民営化が悪いんだ。
そこから中央や、一部の経済効率の高い地域を重視して、その周辺を切り捨てていくことが始まっているんだ。
国鉄民営化・・・私の生まれる前の話でよくわかりません。
国労という労働組合やそれに賛同する国民と、政府や経営陣との激しい闘いがあったことは、私の彼氏からも聞いていました。
国労というだけで差別されたり、運転士などを誇りを持ってやっていた人が、民営化反対運動したことを理由にキヨスク(売店)などに「左遷」されたり、研修所という名の「収容所」に送られた「恐怖政治」のようなものが長く続いてとも聞いたことがあります。
(初めから誇りを持って売店で働いていた人に失礼があったら、ごめんなさい。)
タクシーの運転手と話が合うのか、彼氏が色々質問していました。
「コロナの影響など、タクシー業界はどうですか?」
「ひどいもんだよ。稚内勤務の私の場合で、月の収入は2万円ぐらいだね」
「2万円!?」
「緊急事態宣言で今月はもっとひどいかもしれないね。なにしろお酒を出す店は休業だろう。飲んだあとにタクシーで帰る人もいない。夜の街が寂れていくことは話題にはなっているが、その影響がタクシー業界に及ぶことまでは、取り上げられること自体少ないね」
「それでやっていけるんですか」
「会社から多少の援助金はあるものの、厳しいね。稚内ではどこに泊まっていたの?
ホテルの前にずっと一日中張り付いているタクシーがいただろう。もしかしてという利用をただただ粘って待つしかないんだよ」
旅に出たらタクシーの運転手と土地の話を聞けと言います。
それにしても、今回聞いた話はひどく悲しいものばかりでした。
そのあと、アイヌ差別の話なども彼氏とタクシーの運転手はしていて、アイヌの有名な活動家の名前なども二人の間で飛び交っていましたが、私は知らない人だったり、知らない話が多かったです。
幌延の駅で降ろしてもらった後も、運転手はしばらく駅の前に止まっていました。
JRの代送サービスはここまででしたが、私たちが宿を決めていないと言っていたので、またホテルまでの移動が必要にならないか、様子を見てくださっていたのかもしれません。
しかし、私たちは適当にキャンプを張るつもりでした。
夜も更けた無人の駅舎内で私たちが手持ちの食料を広げて食べ始めると、諦めたのか、運転手は出発してしまいました。
やがて、稚内行きの今日の最終便が停車するころ、降りる客を待つタクシーが二台、駅前にやってきました。
しかし、誰一人降りません。
それを見届けるとタクシーは行ってしまいました。
最終列車が出発すると駅舎は灯りが消え、鍵が閉められると聞いていたので、私たちは、テントを含む荷物を背負って出発しました。