もずく powered by Web3.0です。
さて、以下の日記編でざっくりと紹介した「TrustとKyberNetworkで見るWeb3.0の可能性」という講演会(2018年7月21日/新宿)ですが、Kyber Networkについての私の疑問については別記事にするとしていました。
今回はその別記事です。
ついでに、2018年7月28日に大阪で開催された以下のトークイベント後の安さんとの会話のことも併せて、私の「アハ!体験」を紹介したいと思います。
まずはKyber Networkについて超簡単に説明しておくと、異なるトークンをユーザが意識することなく交換してくれる機能を提供するプロジェクトです。
Kyberの交換機能はアプリやウォレットに組み込まれているので、ユーザが意識して交換する必要はありません。
Web3.0では数多くのトークンが出回るので、それらをシームレスに交換しつつ利用できる仕組みは必須になります。
ということでKyber Networkには非常に期待しているのですが、同時に「異なるトークンがシームレスに交換できてしまうと、トークンによる囲い込みの効果がなくなってしまうんじゃないの?」という疑問が私の中にありました。
買い物のポイントなどもそうですが、トークンには利用できる特定の範囲があるからこそ、そのトークンを所持しようというモチベーションが生まれると思うのです。
余談ですが、英語圏では「トークンエコノミー」ではなく「クリプトエコノミー」というそうです。「トークンエコノミー」という言葉は地域通貨の文脈で昔から使われていますから、本来は日本語でも「クリプトエコノミー」というべきですよね。
ところが「どのトークンでも使えるよ」となると、入手しやすくて無価値になりにくい人気のトークンですべてを賄おう…という心理が働かないでしょうか。
喩えになっているかわかりませんが、日本人がみんな英語ペラペラになっちゃったら、日本の優秀な人材がみんな海外に出ていき、日本国内の仕事は低賃金でよく働く外国人で埋まりました…みたいなことにならないかな、と。
どう思います? 皆さん
そんな疑問を脳裏に抱えつつ、1週間後に大阪で開催されたトークンエコノミーのトークに参加してきました。
安さんと実際にお会いしたのは今回が初めてでしたが、一番最初に見かけたのは、受付開始5分前にテクテクと会場に入っていく姿でした。
え、講演者って受付開始5分前に到着とかでもいいんだ。なんてフランク…
ビバ、Web3.0。
トーク自体も大変おもしろいものでしたが、そこはCosmosさんが詳しくまとめてくださっています。
そして、トーク後の懇親会では安さんと直接お話できました。
なんと「もずく」という名前を覚えていてくださって、「お会いしたかった」と言いながら両手で固く握手。それでもう もずくさんはKOです。
こうして人の心を掴んでいくのですね。
というわけで、安さんの両サイドを私とCosmosさんで陣取って20分ほどお喋りしました。
余談ですが、会場を出る前にPoliPoliの伊藤さんとも2~3分お話したのですが、受けた印象は本当に普通の学生さんでした。
本人は運が良かったと言っていましたが、運を拾ってちゃんと形にしていく意欲と行動力は誰でも持っているわけではないと思います。期待しています。
私から安さんに一つ質問したのは、
「いまのロジックで信頼度の可視化ができる…ということを周りから納得してもらえるか」
というものでした。
それに対する安さんの返答は、
「技術的なことはやろうと思えばできる。例えば機械学習が必要なら外から技術を借りてくればすぐにできる。大事なのはそこじゃない」[意訳]
というものでした。
その答えを聞いて、私はアハ!と思いました。
それ自体が答えだったわけではなく、Kyber Networkについての前述の疑問と、この日に聞いたクリプトエコノミーの話が、この安さんとの問答によって繋がった気がしたからです。
何が本当に難しいことなのか
ALISはそこがうまくいっているのだ、と。
技術的な部分、例えば、ALISにどういった機能が足りないのか…ということは、エンジニアと時間があれば改善可能なことです。
どのような機能を追加すべきか…ということがわかれば、運営はエンジニアを追加してそれを実現していくでしょうし、事実、公式Twitterの日報を見れば常にエンジニアと面談しているのがわかります。
もっと言えば、ALISなんて開発がまともにスタートしてまだ半年も経っていませんから、いまからでも同等以上のサービスはすぐにつくれるはずです。
でも、ALISの運営陣は自信を持って「それだけではALISには追いつけない」と言うだろうと思います。
ここから少し横道に入ります。
これまでのWeb2.0では、ユーザは提供される機能や体験でアプリやサービスを選んできました。
しかし、機能自体は技術的に簡単に再現できる時代になってきました。
製造業ではないので、優秀なプログラマを数人確保できればいいのです。
そうして、他のアプリで人気のある機能をどんどん追加していくと、どれも似たり寄ったりのサービスになってしまいます。
その結果、勝ち残るアプリは各領域で一つだけ…ということになります。
二番じゃダメなんです。一番じゃなくちゃ意味がないのです。
しかし、そういった流れはWeb3.0の時代によって変わっていきます。
開発元によるデータの囲い込みがブロックチェーンによって解かれ、二番手でも三番手でも、そこにニッチなユーザが一定数いるかぎり、そのアプリは生き残れるようになります。
ユーザはたくさんの候補の中から、自分好みの体験を提供してくれるアプリを自由に選べるようになります。
詳しくは↓(宣伝)
さて、ここまでは前提の話です。
Web3.0になっても、技術的な障壁が下がったことによる問題は依然として残っています。ユーザから求められる機能を無節操に追加していくと、結局どれもこれも似たようなアプリになりかねません。
そこにきてKyber Networkがトークンの垣根すら取っ払ってしまったら、ユーザは何を基準にアプリを選ぶようになるのでしょう?
そう、“コミュニティ”ですよね
なんやそんなん、みんな言ってることやん…って話なんですが、私としては、ぐるっと一周まわってきて再度ここに辿り着いた気持ちです。
上の方で書きました。
何が本当に難しいことなのか
ALISはそこがうまくいっているのだ、と
答えはこうです。
本当に難しいのはコミュニティの形成であり、
ALISはそれがうまくいっているのだ、と
ホントに~? と思うかもしれません。
でも、今回のトークンエコノミー大阪に参加して、各プロジェクトのファウンダーたちが口々にALISのコミュニティづくりを称賛しているのを見て、ああ、これは本当に難しいことなんだなぁ…と私は感じました。
学校や会社の中でつくったコミュニティではないんです。
同じ趣味を持った人たちのコミュニティでもないんです。
「信頼度を可視化する」という極めて抽象的な目的を掲げ、ICOやトークン購入で出資した人たちに囲まれながら、一からプロダクトをつくりはじめたばかりのプロジェクトに勝手に集まってきた人たちのコミュニティなんです。
それも数百人規模の。
そんなコミュニティをまともに形づくることがどれだけ難しいことか、いまも挑戦している人たちにはよくわかるのだと思います。
しかも、コミュニティが自発的にDiscordサーバを立てて、運営が頼みもしないのに続々と企画を打っているわけです。ALISをディスる企画まで。
ALISのプロジェクト(=ALISのコミュニティ)が、様々な方面から称賛され、応援されていると、懇親会で安さんが繰り返し言われていたのが印象的でした。
安さんに「運営からの反応がもっとあってもいいのでは?」と訊いてみたのですが、現在は、コミュニティに対して運営からできるだけ干渉しないように意識しているフェーズだということです。
私は知らなかったのですが、ICO前後は運営全員が1日20時間くらいかけてコミュニティと対話していたそうです。
それだけのお膳立てをした上で、やっと距離をおいてコミュニティの様子を伺える状態になったということだと思います。
そもそも、誰かが常に干渉してコントロールしないといけないようなコミュニティはDecentralizedではないですよね。
これも安さんが繰り返していた言葉ですが、ALISは運営のものではなくコミュニティのものです。運営にあーしてほしいこーしてほしいとお願いするのはフラットな関係ではありません。
私たちが創っていって構わないのです、自分たちの欲しいALISを。