夏の終わりに、ろくに土も草もない東京の家のベランダにコイツがいた。捕まえて腹の先を見てみたら「卵管」がないようなのでたぶんオス。昆虫界でも食物連鎖の上にいるカマキリは、人に捕まっても堂々としている。強い武器(カマ)がを持っているからか、妙に落ち着いていて、人の指をぎっちり挟むくらいで、あとはあまりジタバタしない。
自然の中では、草の上などでじっと獲物を待つので、部屋に放しても静止している。小さい頭に細い触覚、引き締まった胴(胸部)、太すぎない腹。そして手の代わりでもあるし殺戮の武器でもある「カマ」…。夜だから複眼は真っ黒だ。自然の精緻な造形が誇らしげだ。細いけれど力強いフォルムを神から与えられて、人間で言えば「細マッチョ」の体を見せつけるように堂々としている(でもオスの場合はメスに食べられちゃうんだけど…)
夏の終わりにわが家に迷い込んできたアイツ。写真を撮った後は隣家との隙間の少しだけ草のある場所に放したけれど、アスファルトだらけの街で、その後どうやって暮らしたのか?夏から秋にかけてやたら降った雨に流されたかもしれないし、カマキリは冬は越さないので、この個体限りの命だったのかなと思う。たぶんメスとの出会いはなかっただろう。出会っていたら食われただろうし…。でもどこかで生きているかも知れない。もしそうなら、また遊びに来て欲しい。