2005年に、鳥インフルエンザが流行したタイミングで、WHOが20世紀中に発生した3つのパンデミックを総括し、「Avian influenza: assessing the pandemic threat(鳥インフルエンザ:パンデミックの脅威を評価する)」という資料を公開しています(PDFファイル)。
この資料の第2章に「過去のパンデミックからの教訓」という章があるのですが、現在の新型コロナウイルスに起因するパンデミックと重ねて読むと、非常に参考になるというか、歴史に学ぶという点で興味深かったので、簡単ではありますが、複数の記事に分けて、極力わかりやすく紹介したいと思います。
16世紀以降の記録上、各世紀において10年から50年ごとに、平均3つのパンデミックが発生しています。パンデミックは、現在のような交通手段が発達し、海外旅行が簡単に行えるようになる遥か前から、非常に早いスピードで広がることが知られています。例えば、アジアで発現した1580年のパンデミックは、1年強で全大陸に広がりました。ヨーロッパ全体は6ヶ月足らずで全て飲み込まれたといいます。
このようなパンデミックは、我々人類が集団的な免疫をほとんど持っていない、非常に伝染性の強いウイルスによって引き起こされます。このようなウイルスは、通常1年以内に広がります。
過去数世紀のパンデミックは、突然始まり、猛烈な速度で拡散し、そして急速にピークに達し、突然沈静化します(第1波)。しかし、第2波、第3波で再発するという傾向もまたあり、多くの場合、より重篤な疾患を引き起こします。
特に、20世紀の3つのパンデミックは、その起源、国際的な広がりのパターン、影響の観点から、非常に深く研究がされ、パンデミック時に採ることができる多くのパターンを示し、いくつかの制御介入(医学的介入、政治的介入等)の評価を可能にし、準備計画の有用な基礎となっています。
以降の記事では、1918-1919、1957-1958、1968-1969に発生した3つのパンデミックについて、それぞれ紹介していきます。