公開番号:特開2018-110514
公開日:2018.7.12
出願人:ダイソン・テクノロジー・リミテッド
いやー、もうなんで「たかが」ドライヤーが5万円近くするのかってことですよ。すごいですよねダイソソ。
→Dyson Supersonic Ionic ヘアドライヤー
妻が美容室に行ったら、このドライヤーでブローされたそうで。私としては「ふーん」程度の話で聞いてたのですが、値段を聞いて椅子から落ちそうになりました。これほどの価格でも商売になるってことは、何かしら秘密があるに違いないってことで、ちょっと特許検索をしてみました。
ダイソン社の最近の公開公報に、ドライヤーに関するいくつかの記載がありましたが、製品の基本コンセプトに関しての出願はおそらく今回紹介する「特開2018-110514」ですね。優先日は2016.12.20です。
【課題】本発明は、モータ及び当該モータを具備する携行式製品に関する。
【解決手段】本発明に係るモータは、ロータ組立体及びステータ組立体を支持するためのフレームであって、内部壁と、外部壁と、内部壁と外部壁との間に延在している複数のディフューザ羽根とを具備するフレーム;シャフトと磁石と軸受組立体と羽根車を具備するロータ組立体;ボビンとステータコアとボビンの周りに巻回されている巻き線とを具備するステータ組立体;及び金属製ハブと外側部分とを具備する羽根車であって、外側部分が、複数のブレードを備えていると共に、プラスチック材料又は炭素繊維複合材料から形成されている、羽根車;を備えている。
では、特許請求の範囲を見てみます。
【特許請求の範囲】(請求項数17より抜粋)
【請求項1】
ロータ組立体及びステータ組立体を支持するためのフレームであって、内部壁と、外部壁と、前記内部壁と前記外部壁との間に延在している複数のディフューザ羽根とを具備する前記フレーム、
シャフトと磁石と軸受組立体と羽根車とを具備する前記ロータ組立体、
ボビンとステータコアと前記ボビンの周りに巻回されている巻き線とを具備する前記ステータ組立体、及び
金属製ハブと外側部分とを具備する前記羽根車であって、前記外側部分が、複数のブレードを備えており、プラスチック材料又は炭素繊維複合材料から形成されている、前記羽根車、
を備えていることを特徴とするモータ。・・・
【請求項15】
携行式製品を通過する空気流を発生させるために請求項1~14のいずれか一項に記載のモータを備えていることを特徴とする携行式製品。【請求項16】
前記携行式製品が、ヘアケア装置とされることを特徴とする請求項15に記載の携行式製品。
モータそのものの発明と、それを搭載したヘアケア装置ってことですね。さすがモータについては生産者だけのことはあります。というか、特許出願の仕方をみると、ダイソンの基本的な考えとして、モータ屋さんという自意識があるのかもしれませんね。
引き続き明細書を読んでみますと、背景技術とそれに対応する手段が記載してあります。
【背景技術】
【0002】
携行式製品を開発する場合には、エンドユーザに影響を及ぼす多数の要因を検討することが重要である。例えば、利用者が製品を容易に取り扱うことができるように、及び、利用の際に製品が利用者に不快感を与えないように、製品の大きさ及び重量を下げ続けなくてはならない。他の重要な検討事項は、製品が発する騒音である。利用の際に携行式製品が不愉快及び/又は不快な騒音を発生させないことが望ましい。さらに、長期に亘り製品が定期的に利用されるならば、過度な騒音によって、利用者の聴覚が傷められる可能性がある。製品が発する騒音を許容可能な大きさに維持するために、例えば発泡材料のような防音材料が製品に付加的に含まれる場合がある。代替的には、モータは、モータ自身が発する騒音を低減するために、比較的低い出力で動作可能とされる。言うまでもなく、上述の解決策はいずれも特に望ましくはない。例えば発泡材料のような構成部品を追加することは、製品コストを高めることになり、モータを比較的低い出力で動作させることは製品の性能に悪影響を及ぼす。
なるほど、確かにドライヤーってすごくうるさいですよね。利用者の聴覚が傷められるほどかといわれると、どうかなと思いますが。
本願発明は、こういった背景技術の上に、「製品全体の重量及び利用時における製品の騒音に対して」の解決手段を提示するものであるとのことです。
さらに明細書を読んでいきますと、、、
【0013】
幾つかの実施例では、羽根車が、13枚のブレードを備えている。付加的又は代替的には、利用の際に、ロータが、携行式製品を通過する空気流を発生させるために、50krpm~120krpmの速度で回転する。ブレードの数量及び回転速度に起因して、利用時にモータが発する騒音の一部が、人間の可聴域から外れるので、モータの音響的騒音の低減に貢献する。
なんだかすごいですね。騒音の一部が人間の可聴域からはずれるので騒音が低減されるのですか。つまり、音は低減させてないけど、人間が聞こえない領域にズラしました、ってことですね。
じゃあ、具体的にどこの周波数帯域にズラしたのかなあ、と思って読むと,,,
【0022】
図3は、モータ5の分解斜視図である。モータ5は、フレーム10とロータ組立体20とステータ組立体40とを備えている。図4は、フレーム10の断面図である。フレーム10は、内部壁11と外部壁12とを備えている。複数のディフューザ羽根13が、内部壁11と外部壁12との間に延在している。フレーム10は、亜鉛から形成されており、例えば機械加工若しくはダイキャスト、又は機械加工とダイキャストとの組み合わせによって形成されている。亜鉛は、音響減衰材料であるので、フレーム10は、利用の際にモータ5によって発生される音響周波数を効果的に吸収することができる。従って、亜鉛製フレーム10は、利用の際に製品1によって発生される騒音の全体的なレベルを低減するように作用する。
あ、発明のキモはここですね。なになに、亜鉛フレームを使っていることによって、騒音を低減させるんですね。おや?人間の可聴域とか、どこいったんですかね。
と思ってさらに読んでいくと、どうやら羽根車(つまりファン)の羽根の枚数を限定することに意味があるようです。
・・・図6に表わす羽根車30は、11枚のブレード27しか有していない図3に表わす羽根車24と比較して、より高い周波数を有している音響的トーンを発生させる。モータ5についての予想される動作速度において、13枚のブレード27を具備する羽根車30によって発生される音響的トーンの周波数は、人間の一般的な可聴域から外れるのに十分な高さを有している。これにより、モータ5の音響的反響が低減され、さらには、利用の際に携行式製品すなわちヘアドライヤ1によって発生される全体的な騒音が低減可能とされる。
そうなのかー。ちょっと私は素人なもので、ここはもっと詳細に書いてもらったほうがよかったなあ。
審査状況としては、このブログ執筆現在、二回目の最初の拒絶理由通知(え、二回目の最初?意味ワカンネ、という人はスルーしていいです)がなされているというところですね(拒絶理由は、どちらも特許法第29条第2項違反。つまり進歩性なし)。よって、まだ特許権にはなっていません。『特許出願中』ってやつですね。
製品としては、比較的静かで、また、モータが持ち手の部分にあることから、使用時にモータの重さを感じにくい設計になっているようです(私が使ったわけではないのでなんともいえませんが)。製品としてはとてもいいものなのかもしれません。5万円の価値はどうなんでしょうか。
一つ言えることは、我が家での導入は無理であります。