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11. 十一人目の死者は好評誤字脱字配信中だった
賑やかなのが好きなわけではない。かといって、ずっと一人でいられるわけでもない。誰かにかまってほしいのに、うざいのはイヤだなんて、わがまま三歳児丸出しだ。
ポルターガイストって言うじゃない? お騒がせお化けみたいなやつだよ。陽気に騒いでくれたら嬉しいじゃない。気味悪いお化けは勘弁だけど、なっ。
ネットを見てるとさ。つい誤字や脱字が目に入ってくる。おせっかいなもんだから、わざわざ教えてあげたくなる。みんなはあんまり気づかないのかな。それとも気づいてもほっとくんだろうか。道路に一円玉が落ちてても拾わないのと一緒? ぼくは拾っちゃうもんな。
とにかく僕は教えたくなる。このところ何件かそういうことをしてたら、そのうち打ち間違いじゃないのに、こっちの勘違いまで報告しちまった。それも勉強になるからいいけどさ。で、同じ人のページでもう一箇所見つけたから、 今度こそと思って教えてあげましたよ。そしたら他にもまだまだ誤字脱字を無料で配布してますって言うんだから、なかなかお洒落な返事じゃない。
あんまり賑やかすぎるじゃれあい、ふざけ合いは苦手。でも、僕は人生自体が丸ごとおふざけみたいな人間だから。とにかくネット上で素敵にふざけてる人と遊ぶのは大好きってわけ。そうしてふざけすぎてあきれられて、勝手に一人で気まずくなってるわけだよ。
それにしても日本語ってやつはドーオンイギゴとかいうのが多すぎる。こっちは使者と言ってるのに死者とやられたんじゃ、なんとも縁起が悪いじゃないか。しかしそれはこっちの演技がヘタなせいかもしれないな。もっと上手に声色を使えばグーグル先生だって上手に聞き分けてくれるかもしれない。そうすればぼくだって、いつまでも聞き分けのない子を演じなくてすむってもんだ。
そうそう、音声入力とかいうふざけた技術の話ですよ。
それにしても死者と目にしてナムアミダと唱え始める感性こそが抹香臭いというもんで、もうじき冬至を迎えようっていうこの季節、自らもいっぺん地獄への門をくぐることにして、死と再生の儀式でもやらかすほどの覚悟を持ちたいところじゃないの。そうすりゃほんとは、生者も死者も紙一重ってことがはっきり分かるんだし、人間なんてみんな、人間の皮(がわ)を被った妖怪にすぎないのが分かるってことよ。
だからさ、五十四年も生きてきて、すっかりがちがちに固まっちまったエゴの鎧にとどめを刺してね、重苦しくもカビ臭く古びた古い抜け殻を脱ぎ捨てちまえばいいの。そうすりゃ、いつも心の奥底に潜んで隠れん坊をしてたボクの光真白き霊魂だって、ぴかぴかの新品の体をその周りにまとい直して、第二の人生を歩き始めてくれるだろうってもんだよ。
とまあ、そんなこんなでこのさわがしい爺さんは、今日もまた懲りもせずにおふざけをしゃべっては書き飛ばしては、君の元へと届けることになるのさ。
[初稿 2018.12.06 西インド、プシュカル]
[改稿 2018.12.13 同上]
☆この作品は次の作品の続きとなっています。合わせてお楽しみください。
[断片小説] 十番目の使い
○今日のおすすめ漫画
「11人いる!」は、言わずとしれた少女漫画界の第一人者、萩尾望都氏の古典的名作です。
宇宙大学受験会場、最終テストは外部との接触を絶たれた宇宙船白号で53日間生きのびること。1チームは10人。だが、宇宙船には11人いた! さまざまな星系からそれぞれの文化を背負ってやってきた受験生をあいつぐトラブルが襲う。疑心暗鬼のなかでの反目と友情。11人は果たして合格できるのか? 萩尾望都のSF代表作。(この節amazon.co.jpより)
11人いる! (小学館文庫) 文庫 – 1994/12/10
萩尾 望都 (著)
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