このシリーズは2003年の1月以来、何回にもわたって私のホームページとブログの両方に書き散らしてきたものです。今回はこれを(これでもw)短めに編集して ALIS に公開し直すことにしました。
トイレのことをWCと言うと知ったのは多分小学生のときです。そしてそれが water closet の略だと知ったのは恐らく高校に入ってからだと思います。
でも、何度かアメリカに旅した時に目にした記憶がなかったので、ひょっとするとこれは和製英語なのかなと思っていたのですが、欧州に行ってみるとあちこちにWCと書いてあるではありませんか。やっぱり使うんですね。
しかし、それにしてもWCとはうまいこと言ったもんです。water という語が入っているところから判るように、正確には全てのトイレを指すのではなく、水洗便所のことです。でも、今は誰も水洗便所なんて言いません。今は誰も電気扇風機とか電気冷蔵庫なんて言う人がいないように。
closet と言うと洋服をしまい込んでおく戸棚だと思いがちですが、もともとは「私室、小室」の意味です。water closet =「水の流れる小部屋」だなんて、まるで阪急三番街みたいじゃないですか(かなり年配の関西人にしか通じない)。
トイレのことをあからさまに言わないという工夫は洋の東西を問わずにあるみたいで、例えば日本では「便所」(=便をする所)と言わずに、「お手洗い」と言います。もちろん手を洗うためだけにも入りますが、本来的な用事は別にあって、その用事を済ませた後、必然的に手を洗うことになる訳です。
「本来的な用事」には言及せずに敢えて「お手洗い」と言うところが奥ゆかしいじゃないですか。「便所」とはえらい違いです。
人前で「便所」などという直截な表現を用いるのははばかられる、という訳で「はばかり」というこれまた奥ゆかしい表現もあります。
では、アメリカ合衆国ではどう言うか。場所を尋ねるときには Where's the men's room? (女性用 ladies' room)。これも巧い表現です。男女別の部屋といえばまず思いつくのが公衆便所です(ちなみに 、男女共通の言い方は rest room と意外につまらないです)。
また、米俗語では男性用トイレのことを john とも言います(女性版の名前もあったはずですが、何でしたっけ?)。
1970年代には、男性用に john、女性用に yoko と書いたトイレがあったそうですが、これなんかビートルズ世代ならではですね。
ところで、プラハのWCに入っていたら、女性用が満員であったらしく、男性用に数人のチェコ人のおばさんたちが侵出してきました。これって往年の大阪のおばちゃんの専売特許だと思っていたのですが、チェコでもそうだったのかとびっくり仰天。寒い国ではそんなこと気にしていられないのかもしれません。
でも、そんなこと気にしない人たちって、きっと「便所行ってくる」とか「ションベンちびりそうだ」なんて言ってるんでしょうね。
まあ、ちびらなきゃそれで良しとしときましょう、この際。
【追記1】
ハワイのマウイ島のラハイナという町に行った時のこと。
レストランで食事中にトイレに行きたくなりました。店のトイレの前まで行ったのですが、はたしてどちらが男性用なのか判りません。なぜならそこにはハワイの現地語で"kane", "wahine"と書いてあったから(文字だけで図はありませんでした)。
「kane → 金 → 金玉 → 男」、「wahine → woman の w → 女」という気がしたのですが、確信がなければ入れません。仕方なく席に戻ってトイレの入り口を観察すること10分。漸く白人女性が wahine に入るのを確認してから、そろりと kane に向かったのでした。
ハワイは日本語か英語でOKと思っていたら痛い目に遭いました。
【追記2】
新入社員の頃、社内の他の部署から上司に電話が掛かって私が取りました。
「○○君いるか?」
「ちょっと席外してます」
「トイレか?」
「はい、多分」
「彼は悄然として席を立ったか、それとも憤然として立ったか?」
「は?」
「解らんか? 悄然は小便、憤然はフンや!」
なるほど、これもあからさまに言わない工夫なんですね。
【追記3】
そう言えば、小学生のときウンコがしたくなったらよく「猪木ピンチ!」と言ったものです(これもかなりの年配の関西人にしか通じない)。
ご存じない方のために解説すると、昔アントニオ猪木とジャイアント馬場がタッグ・チームを組んでいて、猪木がピンチになると馬場が出ました。故に、猪木ピンチ!→馬場出る!→ババ出る!
あ、でも、これでは関西の方以外には解りませんね。
関西ではウンコのことをババと言います。ババは主にヒトのウンコであり、動物のウンコの場合はフンと言います。
だから関西ではババフミコとかババフミオという名前は笑われるのです。
昔、関西のAMラジオの人気パーソナリティに馬場章夫という人がいました。ただし、この人の場合はババフミオではなくバンバフミオです。
まったく、こういう話をしだすときりがないですね。
はてしない話題? いや、はしたない話題?
【追記4】
「アメリカではトイレのことを bathroom と言うのではないか?」との指摘を受けました。その通りです。しかし、これは日本人にはしっくり来ません。
「じゃあナニか? アメリカ人は風呂でうんこするのか?」とまでは言いませんが、便所と風呂に同じ単語を使って、本当に前後の文脈で区別がつくのでしょうか?
昔、姉が持っていたカーペンターズのアルバムに、歌詞が"We'll be right after we go to the bathroom"という1行だけの曲が入ってました。対訳には「ちょっとトイレに行ってすぐ戻ってきます」などと書いてあったのですが、私は「ひと風呂浴びたら私たちは正しいだろう」かと思ってました。