テレビCMで観ていて気持ちが悪いと思う表現に「※ 個人の感想です」というのがあります。
ええ、言わんとすることは分かるんですよ。CM の中で健康食品とか増毛剤とかを使った人がものすごく効果があったように言ってるけど、これはあくまでこの人の体験談であって、これを使えば誰でも 100%体調が良くなったり毛が生えてきたりするわけじゃないですよ、って言いたいんですよね?
そう言っておかないと、買ったけど効果がなかったって言う人から必ず苦情が来ますもんね。売っているところに苦情が行くだけならまだしも、その CM を流した放送局にも苦情が来るのはたまらないので、局側が規制している面もあります。
でも、「感想」ってあくまで個人のものでしょう? 個人が感じたことが「感想」じゃないの? 個人以外の「感想」ってあるんですか?
組織や団体の感想なんて成立しないですよね。その団体に100人が所属しているとしたら、当然百人百様の感想があるはずで、もし、それをひとつにまとめることができたとしたら、それはあくまで「それぞれの個人の一致した感想」であって、やっぱり感想は個人のものでしかないと思うんですけど…。
だから、ことさら「個人の感想」とスーパーするところがなんか無理っぽくて嫌なんです。なんでそんな表現を採るんでしょうね?
「誰にでも効果があるわけではありません」とか「効果を 100%保証するものではありません」ではいけないのでしょうか?
何よりも、肯定的な評価をする人だけをわざわざ選んで CM を制作している(ひどい場合は出演者は決められた台本通りに話しているだけ)のに、それを「たまたまインタビューしたらこんな風に褒められました」みたいに「※ 個人の感想です」って書くのはインチキじゃないでしょうか?
──でも、そんなに丁寧に言う必要あるんですかね? そもそも、薬だってよく効く人とあまり効かない人がいるくらいなんだから、ダイエット食品で必ず痩せるって思うほうがおかしいでしょ、って?
ま、それはそうなんですけど、ならばはっきりと「効く人と効かない人がいます」と書けば良くね? 効いた人だけ選んできて「※ 個人の感想です」なんて書くのは、ほんとうに視聴者への正しいメッセージなんですかね?
──いやいや、メッセージなんて大層なもんじゃなくて、ただの宣伝ですから、って?
いやいや、CM はメッセージなんですよ。だって Commercial Message なんだから。
あと、もう一つ同じように気持ち悪いなと思う表現に「※ 写真はイメージです」というのがあります。これもどうなんでしょうね?
意味は分かります。「必ずしもこの写真の通りのじゃないかもよ」って言いたいんでしょ? でも、そのことを伝える表現はこれか?って思っちゃうんですよ。
日本語では「イメージ」はなんとなくぼんやりとした実態のない印象みたいなものの印象がありますが、直訳すれば「像」であり、英語ではむしろ(実態のあるものであれ、頭の中にあるものであれ)はっきりしたものを表す語です。
それにインターネットでは image という語は昔から画像のことですよね。それを略した <img> というタグもまた画像を表しています。
だから、僕は「写真はイメージです」を見るといつもこう言い返したくなります。──「そして、文字はテキストです」。
ネット関連の仕事をしている方には笑ってもらえたでしょうか。