知ってしまうと気になり始めることってありませんか? 例えば正しい言葉遣いとか。
一例を挙げましょう。
「捏造」はみんな「ねつぞう」と読んでいますが、実はこれは慣用読みで、正しくは「でつぞう」なんです。
私は不幸にしてこのことを中学時代に知ってしまったのです。知ってしまうと「でつぞう」と言いたいじゃないですか?
でも、そもそも中学生で「捏造」という言葉を知っている奴は限られているので、知らない同級生は何も気づいてくれないだろうし、逆に知っている同級生や大人には「読み方間違えてやがる」と思われるのが関の山です(笑)
結局、正しく読んでいるのに間違えていると思われる屈辱感に耐え切れず、自分も慣用読みで通すことにしました。なんという腰砕けでしょう(笑)
でも、元々は「でつぞう」であっても今では「ねつぞう」が堂々と辞書に載っているので、これはそれほどでもないのです。
例えば、私の取引先の優秀な営業マンが「思惑」を「しわく」と読むと思い込んでいて、しかも会話の中でそのシワクを連発するので、教えてあげるべきか聞き流すべきか、随分悩んだことがあります。
言葉の間違いは読み方だけではありません、意味を間違えて憶えているというのもよくあることです。
例えば「妙齢」。
これ、世間では、中年女性などを指して「妙齢のご婦人が」などとよく言っていませんか? でも、辞書を引くと「妙齢」は「若い」という意味なんですよね(そして、女性にしか使えない表現です)。
多分誰かが冷やかし半分に「妙齢の美女」などと使い始めたんでしょうね。でも、いくら綺麗な女性であっても(いやいや、美醜に係わらず)40代や50代に使う表現ではありません。
私は自分の知っている、決して若くはない女性が、「妙齢の美女」などと形容されているのを聞くとツッコみたくてうずうずしてしまいます。でも、そこ、ツッコミにくいとこなんです。でも、ああ、気になるぅ!
それからもうひとつは「破天荒」。
これは大抵、「型破り」、いや、どっちかと言うと「ハチャメチャな」という意味で使われていませんか?
でも、本当は「前人のなしえなかったことを初めてする」という意味なんです。「破天荒な大事業」などと使うのです。
我々がよく耳にするのは「破天荒な人物」という言い方で、社会の枠組みから外れてしまっている人間ではあるが、ものすごい成果を上げている──というような意味になっています。
でも、本来は「前代未聞」や「未曾有」と同じくもっとシンプルでストレートな言葉であり、ストレートに褒め称えるときに使う表現なのです。
どうです? こういうのを読んだらいろんなことが気になってくるはず。
身の周りに気を配り、耳を澄ましていると、そういう間違った日本語を使っている例は山ほどあるのです。私が前に書いた「課金する」「はんなりとした」もまさにそういう類の単語です。
さあ、どうしましょう? その場で正しますか? それともさりげなく「あ、なるほど、そういうオモワクなんですね」とか「いやあ、破天荒と言うよりは型破りですな」などと教えてあげるようなあげないような微妙な対応で逃げますか?
教えたって感謝されるとは限りませんよ。逆ギレされるかも。あるいは正しく読んでいるのに「あいつは漢字の読み方を知らない」と馬鹿にされるかも。
さて、あなたはどうしますか? えらいもん読んでしまいましたね(笑)