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アクロニム(前編)

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  • yamaeigh
  • 2020/01/26 04:55

アナグラムが日本語化しているのにアクロニムは日本語になってませんね。えっ、どっちも知りません?

anagram はひとつの単語の文字を入れ替えて別の単語を作る遊び。

例えば devil を並べ替えて lived にする。

例えば「おやつの時間(おやつのじかん)」を並べ替えて「歌人のお通夜(かじんのおつや)」にする。

──こういう風に日本語でやる場合もやはり他に呼び名がなくてアナグラムと称してます。

それに対して、acronym は頭文字あるいは単語の一部を取って並べた略語(abbreviation という言い方もありますが)です。

例えばアメリカ合衆国が USA(the United States of America)

例えばペナルティ・キックが PK

みたいなやつです。

Content image

アクロニムには例えば NBC とか BBC (これはアメリカとイギリスの代表的なテレビ局名だと思ってもらっても良いですし、日本の長崎放送とびわこ放送だと思ってもらっても良いのですが)みたいにエヌ・ビー・シー、ビー・ビー・シーとアルファベットそのまま読むしかないものもあれば、JAL(Japan Air Lines)とか UNESCO(United Nations Education, Scientific, and Cultural Organization 国連教育科学文化機構)みたいにジャル、ユネスコと読めるものもあって、どちらかと言えば読めるほうがスマートなような気もします。

読めるからと言うのでそのまま単語になってしまったのが radar (レーダー)で、これは元々 RAdio Detecting And Ranging (直訳すると無線探知照準、ですかね)のアクロニムでした。

米国TV界で situation comedy のことを sitcom と呼ぶのも同じような例で、これも既に1単語になっています。

日本人はこれをシットコムと読んでしまうのでカタカナでそう書いてある文献も目にするのですが、「シットコム」とカタカナ棒読みすると米国人には多分通じません。むしろ「シッカム」と聞こえます。

そう言えばウチの会社の話ですが、米国の TV の業界団体に NATPE というのがあって、これは National Association of Television Programming Executives のアクロニムなのですが、その NATPE の展示会出席のため海外出張しようとした社員が国際部に行ってこう言いました(相手は元NY支局長です)。

社員A:「今度ナトペの展示会に出席しようと思うんですが」
国際部:「ナトペ? 聞いたことないな。何ですか、それは?」
社員A:「え? なんかアメリカのすごく有名な展示会だと聞いたんですけど…」
国際部:「え? ああ、ナッピーね」

と、まあ、ローマ字読みしようとすると通じないわけです(笑)

さて、話は戻りますが、どうせ読めるなら、アクロニムが実際に存在する単語と同じ綴りになって、しかもその単語が如何にもそれらしい単語だったりするとカッコいいわけで、そういうのを必死になって考えることもあります。

例えば国際ペンクラブのアクロニムは PEN です。文筆家の集まりが「ペン」だなんてよく考えたもんだという気がするのですが、実はつぶさに見るとこれは (International Association of) Poets, Playwrights, Editors, Essayists, and Novelists のアクロニムで、いくらなんでもはしょりすぎです。

ホントなら PPEENって、これじゃ読めないじゃないですか!
(もっとちゃんと言えば IAPPEEN なんですがね)

むしろ無理やりこじつけて PEN にしたところが面白いんです。

日本の例では関西の ICカード乗車券(関東の Suica に当たるもの)の名前が ICOCA で、これは I.C. Operating CArd のアクロニムであると同時に関西弁の「行こか」に掛けてあります。Suica が意味もなく(?)スイカに掛けてあるのと比べると随分洒落が効いたと言うか、ちゃらけたと言うか、非常に関西人らしいナイスなネーミングだと思います。

この ICカードは日本各地に KITACA とか SUGOCA とか、いろんな名称(アクロニム)のものがあって、ひとつひとつ検証して行くと非常に面白いのですが、今回は割愛します。

手前味噌になりますが、私の会社で社内LAN(これも Local Area Network のアクロニムです)が始まる前に実験的に組まれたプロジェクト・チーム名が DYNAMIC でした。

実は私もこのチームのメンバーだったのですが、これは "Do You Need A Multimedia Innovation?" Committee (直訳すると、「あなたはマルチメディアの技術革新が必要だと思いますか」委員会)のアクロニムでした。

私は生涯見た中でこのアクロニムが最高傑作だと思っています。

もっとも、こういう言葉遊びに嵌ってしまってチーム名を考え始めたりすると楽しい反面なかなか本題に入れないのも確かです。

でも、どうせなら楽しいほうが良い──これはアクロニムの本質ではないかと思います。

次回はこの続きを書きます。

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放送局で働いていました。今はただの爺です。

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