イスラエルの大学の研究によると、直感が当たる確率は、なんと90%だそうです!
その実験内容はこうです。
コンピューターのスクリーンに左と右で違う数字を連続して映し出します。
そして被験者には左右の平均値が高い方を選ぶように伝えました。
つまり、左に5・6・9・2のように数字が連続で映し出され、右にも同じように1・7・7・9と数字が映されるわけですね。
それを見て、どっちの平均値が高いのかを当てるというゲームです。
ただ、数字が映される時間はほぼ一瞬!
計算して平均を出すのは不可能です。
なので、被験者はなんとなくの直感で選ぶしかないんですね。
そして結果は6セット終えたところで正解率65%。
24セットでは、90%の人が正解しました!
この研究を行ったマリウス・アッシャー(Marius Usher)教授はこれについてこのような見解を示しています。
「物事を判断する過程で重要なのは、それぞれのオプションを分析し、全体像を見出して価値を統合させること。この研究では、人間には直感レベルでも数値を積分させる能力があると分かった。正しい判断を下すときには、直感を信じるべきなのかもしれない」
このほかにも人の直感の正しさを示す事例があります。
1906年イギリスの科学者のフランシス・ゴルトンは、イギリスのプリマスという地域で行なわれた家畜見本市で面白い発見をします。
見本市では、雄牛の重量当てコンテストが開催されていました。
一頭の雄牛を見せられ、それが何ポンドかを当てるゲームです。
参加者は787人。
それぞれが、素人の勘でなんとなく雄牛の重さを予測していきます。
ゴルドンは優生学を信じていてました。
優生学とはつまり、優秀な遺伝を受け継いだ人物以外は、知能が劣ったな劣等人種で、排除すべきだと言う考えです。
なので彼はこう思っていました。
「無能な一般人には、こんな難しい計算はできないだろう。
きっとみんな素人の勘でデタラメな数字を書いてるに決まってる!」
その考えを証明するためゴルドンは、コンテスト終了後に主催者から投票用紙をもらい、コンテスト参加者の予測測の平均値を割り出しました。
この平均値を割り出せば、コンテスト参加者の集団としての予測能力が明らかになります。
「どうせ、とんでもない的外れな数字が出るだろう」
そう思っていたゴルドンでしたが、その数字は彼の予想を裏切るものでした。
参加者が予測した数値の平均は1197ポンド。
そして実際の体重は1198ポンド。
その差はわずか1ポンド(約453g)しかなかったのです!
参加者はゴルドンが思っていた通り、素人の勘で数字を書いていました。
それなのに、平均値はほぼ正確です!
つまりこれも、直感の正確性を物語ってるストーリーですね。
ただ直感も、毎回当たってるわけではありません。
最初の実験では6セットの場合は正解率65%で、24セットやらないと90%になりませんでした。
雄牛の重量当ても、集団の平均ではほぼ正しい数値でしたが、中にはピント外れな答えを書いた人もいたはずです。
なので、ここで直感は全部正しいと思い込むのは間違いですね。
直感をより正しいものにするためには、いくつもの直感を集めなければなりません。
最初のイスラエルの大学の実験も、何回か回数を重ねるごとに正解率が上がっています。
雄牛の重量当ても、一人ではなく約800人の平均値です。
つまり、直感は重ねれば重ねるほど精度が増すということです。
色んな人の直感を集めたり、何度も同じことを繰り返すことで全体の確率が上がっていくんです。この考えを「集合知」と呼びます。
多くの人が直感で物事を選べば、正しい結論が出る。
だとしたら、民主主義は多くの人が投票するので常に正しい結果になると思われます。
ただ、歴史を見ると必ずしもそうではないことが明らかですよね。
ナチスは国民の投票で選ばれたにも関わらず、独裁を生んでしまいました。
日本だってその時代、民衆の同調圧力で戦争に突き進みました。
なぜ、大勢で選んだ結果なのに間違った道を選んでしまうのか?
その答えは、みんなが一部の意見に流されてしまったからです。
直感の精度を上げるためには、一人ひとりが心から直感で選ばなければいけません。
「直感ではこっちだと思うんだけど、あの人があっちだと言うからあっちした」とか、「あっちにしろと強制された」では、正しい選択ができません。
雄牛の重量当てで、民衆が正しい数値を導き出すことができたのは、みんなが誰の指示を受けずに、個人の判断でテキトーな数字を出したからです。
中にはめちゃくちゃ重い数字を書いた人もいたでしょう。
逆に、めちゃくちゃ軽く見積もった人もいたでしょう。
参加者の判断に何もバイアスがかかっていなければ、過大評価する人と過小評価する人の割合は大体同じくらいになるはずです。
そういった極端な数字は相殺されてしまうので、平均値が正しい数値に近づくんです。
極端な数字を言った人が権力を持っていて「みんな俺と同じ数字を書け」と強制したら、必ず外れるに決まっています。
戦時中、民主主義が間違った方向へ行ってしまったのは暴力によってみんなの意見が捻じ曲げられたからですね。
こういったバイアスさえ取り除くことができれば、民主主義はきっと継続的な繁栄への道を示してくれるでしょう。
あなたがここ最近、直感で選んだものは間違っているかもしれません。
でも、今までの人生で選んできたものをトータルで見ると、割と正しいものが多いでしょう。
誰だって初めてのものを選ぶときは失敗する。
でも、同じような選択を重ねれば学んでいくので正しい選択ができるようになります。
自分には赤が似合うというのが分かってきたり、怒られたら反論するんじゃなくて謝った方がいいと分かってきたり。
世界も、色んな人が色んな事をやって、あーでもないこーでもないと試すから、正しい道が見えてくるんですね。
中には、日本もバンバン戦争を仕掛けるべきだと言う人もいるでしょう。、
中には、武器を部捨てた方が世界が平和になるという人もいます。
こうした幅広い意見があるからこそ、多くの人が納得できる適度な政策がなされるわけですね。
つまり、人は色んな挑戦をするほど直感の精度が上がり、
多様な意見の人を認めることで世界はより良い方向へ進むということです!
生きていれば色んな悩みがありますが、実は脳は考えているフリをして、直感を肯定するシュミレーションばかりやっています。つまり、無意識ではすでに自分の意見は決まっているんですね。こうした脳のメカニズムについては、また後日紹介しますが、条件だとか道徳的かどうかで物事を判断するより、好き嫌いでジャッジできる方が自分らしく生きられます。
これからも僕は理屈っぽいことを並べて色々書くと思いますが、ほとんどが直感の肯定になるでしょう。あなたもどうぞ「好き・嫌い」という直感を大切にしていってください。直感にフタをして自分をごまかすのは辛いだけだし、集合知の観点から言っても、世の中のためにならないので。
参考
河合塾キミのミライ発見 「集合知」で今までにない知の世界を拓く
幻冬舎GOLDONLINE 「集合知のメカニズム」にも関係している、大数の法則