奥山清行氏は日本を代表する工業デザイナーで、特にフェラーリをイタリア人以外で初めてデザインしたことでも有名です。
その奥山清行氏が、以前「ラグジュアリーには進化と継承が必要で、セイコーには継承が足りない」と仰っていたことがありました。
(私はイベントでこの話を聞いたのですが、検索すると以下の記事が出てきました。
PRの記事ですけれど、参考までに)
というわけで、ラグジュアリーに必要な「進化と継承」ですが。
逆に言えば、プレミアムなら「進化」だけでも十分なんですね。
(「進化」を具体的に言えば、腕時計の場合では「機能」です)
ラグジュアリーにしたいのならば、「継承」が必要となります。
理由は「歴史を作り、それを未来へと保持していくため」です。
故に、それのないプレミアムはコモディティ化を避けられません。
俗に言う「ブランドには物語がある」の物語が歴史に相当します。
(この話にご興味ある方は、この記事もよろしくお願い致します)
ちと長い前置きになりましたが、そんなわけで「継承」の話。
高価で有名な、ストラディバリウス(のバイオリン、この部分以下略)の話です。
参考までに日本音楽財団(日本財団様が全面支援)様のストラディバリウスの画像を頂きました。
これは名匠アントニオ・ストラディバリの作品で、現在は約600挺が現存するらしいです。
検索するとONTOMO様の以下の記事が出てきました。
この記事によると「近年では、2011年に震災復興支援として約12憶7000万円で落札」と記載があります(オークションにかけたのが先ほどの日本音楽財団様)。
すごい金額ですよね。
それに「復興支援として」とはありがたいです。
落札後の話が気になる方は日本財団様のこの記事もどうぞ(PDFです)。
で、そんなストラディバリウスは今でも高価ですが、これからもっと高騰していくことが予想されます。
何故なら、時間が経つと壊れたり状態が悪くなったりするものが出てきますので、良い状態のものはそれ以上に高くなっていくからですね。
(もちろんリーマンショックのような時に競売にかけたら、意外に安かったなどということがあるかもしれませんが。
その時の経済状況によって価格は変動しますけど、価値は上がる一方となります)
お宝として細心の注意を払って良い状態で受け継がれると、価値の上がるストラディバリウスですけれども。
それを生み出したストラディバリはどうなっているのでしょうか?
ウィキペディア様に以下の記載がありました(引用致します)。
ストラディバリの死後に後継者は存在せず、ストラディバリの用いた製法は失われた。1745年にはほとんどの楽器職人がクレモナから去り、クレモナでの弦楽器製作の伝統も途切れた。21世紀現在、クレモナは弦楽器製作の町として復興しているが、これは他の地区から移入された製造技術によるものである。
引用は以上です。
残念ながら、こんなことになっていました。
作品はどんどん価値が上がっていくのに、作者のご子孫は大変なことに。
つまり優れた芸術品を受けた需要側は裕福になっていくのに、生み出した供給側はこんなことになってしまったわけですね。
これを避けるためにはどうしたら良いのでしょうか?
答えは「供給側も継承する」というものでした。
その成功例としては、我が国が誇る伝統芸能の歌舞伎が挙げられます。
松竹株式会社様の中に以下のページがありました。
こちらでは「継承と創造」となっていますね。
やっぱ「継承」がありましたねー。
歌舞伎は役者さんだけでなくて、作者さんも継承しています。
有名なのは鶴屋南北ですが、普通に鶴屋南北と言えば四代目を指すそうです(日本史で問われるのもこの方)。
……ですけれども……今、えらいことになっていますよね。
これは今でいうセクハラやパワハラのようなものを「芸の肥やし」と言い、そのまま「継承」してしまった結果でもあります。
伝統の中でも悪しきものは決して継承してはならないですし、そのことを軽視して継承してしまうと今回のようなことにもなります。
ま、そんな悪しきものを除いて、ラグジュアリーと言えば「継承」が必要で、それは歴史を保持していくために必要である、というお話でした。