以前に書いた以下の記事より。
この記事から「今、これからの時代では、日本の国民性は非常に不向きであり、貧しくなりがちなものである」という話をまとめて、動画にしておきたいと思います。
最大の目的はやはり、できるだけ多くの皆さんに理解して頂くことですね。
次に、私の思いつかない画期的な方法を見つけられる人がいたら、嬉しいなと。
では、本題。
今の日本には「日本がこうなったのは政治が悪いからだ!」と言う人が、たくさんいます。
こうなったというのは、こんな感じです。
※国土交通省様の資料より(最後にリンクしました)
中には、それで思考停止にまで陥っている人もおられます。
確かに政治にも、至らないところは数多く含まれていました。
しかし、そもそもの最も大きな原因は、誰のせいでもありません。
それは、我々の持つ国民性が時代の流れに対して、非常に不向きであることからきています。
別の言い方をしますと「日本人の生産活動と価値観は労働に集中しているが、これが時代の流れに反している」とも言えます。
これが最も大きな原因です。
そこで、日本がもう一度、金銭的なものも含めて豊かな国になるために、まずはこの原因を知らねばならないのです。
というわけで、これを細かく三つに分けると以下。
1,地理的な要因(日本は島国でかつ、言語は日本語のみ)
2,歴史的な要因(江戸時代の武士の価値観の影響が多大)
3,自然災害が多い(独自の価値観である無常観等を生む)
3番の自然災害は1番の地理的な要因に含まれるものですが、わかりにくいので分けることにしました。
地理も歴史も自然災害もすべて、誰のせいでもありませんよね。
この三つでどうなるのかと言いますと、以下。
1,人材かつ労働者の供給過剰が起こりやすい
2,石高制で「生産活動=労働(に限る)」が固定
3,能動的な人材の過剰評価と評価能力の不足
1番について、この真逆で絶好調の国がありまして、それがスイスです。
スイスという国は陸続きで海がなく、農業に不向きな山岳地帯が国土の大半を占めています。
またスイス国民は、二かこく語あるいは三かこく語以上、話すことのできる人がたくさんいます。
それで昔から、傭兵などの出稼ぎのために出て行く国民がとても多かったのです。
その出て行く国民を繋ぎ止めるために、スイス政府は雇用の創出や人材の育成に非常に力を入れていました。
それらが功を奏して、今の活況に繋がっています。
(他にも理由がありますが、ご興味ある方は『スイスの物価と人件費が高い理由を知ると、日本が何故貧しくなったかの真の理由がわかる』をどうぞ)
日本ではこのような対策をしなくとも、四方を海に囲まれているし国民の使える言語は日本語だけだしで、日本から出て行くのは難しいことです。
その上、昔から勤勉な国民性を持っています。
何もせずとも国民がこぞって働き、働くことに誇りを持ち、ついでに働かない人をバカにする傾向までありますから、労働者の供給過剰が他国に比べて起こりやすいと言えます。
2番について、我々日本人の価値観の本質とは、江戸時代にあります。
何故なら、明治維新以降に別の新たな価値観に移行するかと思いきや、敗戦によってお金の価値が下落した時に、強烈な揺り戻しがあったからです。
その価値観とは「生産活動=労働(に限る)」というもので、お金を稼ぐ目的は生産活動のはずなのに、いつの間にか労働が目的になっている、というものです。
かつての日本、敗戦後から高度成長期を経てバブル崩壊前までは、この価値観のままでも何の問題もありませんでした。
何故ならば「日本国内の需要が大きく、労働需要もまた大きかったから」ですが、そのような時代は既に過ぎ去ってしまいました。
そもそも労働とは、生産活動における非常に有効な手段であり、それが非常に有効なのは事実ですが、手段はどこまでいっても手段であり、目的ではありません。
この「生産活動=労働(に限る)」かつ労働が目的となってしまった理由が、江戸時代の石高制にあると私は考えています。
何故ならば、お米というものは労働力でしか増やすことはできないからです。
もちろん買うという手段もありますが、それは別のところにお米が存在し、それが売られている時に選択できる手段です。
大規模な飢饉などでお米が存在しない場合には、この手段は使えません。
敗戦時にお金よりもお米が貴重となった時に、日本人にはこの価値観への揺り戻しが起き、それが本質的な価値観となり、そこから新たな情報を用いて更新し、昭和の価値観に至ったのではないかと。
(以前は私も、昭和の価値観が日本人の本質的な価値観だと考えていましたが、本質的な価値観はそれよりも深いところであると、考えを変えました)
さらにもう一つ、日本を直近の時代かつ長い間事実上支配していたのは、労働者階級である武士でした。
これが、王侯貴族が実権を握っていた欧州と決定的に異なるところであり、それ故に彼らから生まれた芸術というものが、日本にはなかった理由でもあります。
芸術とは、明治維新後に西周によって付けられた訳語であり(元々は藝術)、それまでの日本ではこの芸術という概念そのものがありませんでした。
それ故に、芸術やラグジュアリーのビジネスを非常に苦手としており、現在でもこの部分の国益を取り損なっている状態が続いています。
3番について、能動的な人材の過剰評価を一言で言えば「プレイヤー至上主義」と言えます。
そして評価能力の不足とは、受動的な人材の能力、すなわち客側の能力を過小評価していることから起こっています。
江戸時代のようなテクノロジーが未発達の時代は、能動的な人の評価は非常に高くなります。
何故なら、その当時は機械がないので、人力というものは非常に貴重なものとなるからです。
また、今、これからの時代でも、災害時に使えて当たり前のインフラ(特に電気)が使えなくなった時には、人力は貴重となります。
それに加えて、生死を分けるほどの大災害に巻き込まれた時に命を落としにくい人は「何とかして助かろう」という強い気持ちを持つ能動的な人であり、その反面「怖い、誰か助けてー」という受け身の人は、命を落とす可能性がより高くなります。
さらにたくさんの財宝を持っていても、災害で失う可能性も他国に比べて高いですから、そのような理由もあって「無常観という価値観が生まれた」り、逆に「芸術という概念が生まれなかった」りしたのでしょう。
しかし今は、何かをするのに必要な「情報」というものまで、インフラ化し「得放題(取り放題)」となりました。
インターネットのない時代であれば、まずは有力な情報を得ようとするところから、能動的な行動を起こさなければなりませんでした。
そして情報が得られにくい時代でかつ、テクノロジーが未発達な時代では、一つ二つの有力な情報からの行動で巨万の富を得ることも可能でした。
その一例として、紀伊国屋文左衛門の「ふいご祭りの話」が挙げられます。
この話にご興味ある方は『「男は度胸、女は愛嬌」が正しかった時代の話』という記事をどうぞ。
しかし今は江戸時代ではなく、生活に必要な物はほとんど満たされ、必要なインフラもすべて整った状態です。
この状態でかつ情報も取り放題となりますと、むしろ「数多くの情報の中から価値ある情報を評価し、それを選択し、得た情報を分析して上手く使う」という能力が必要となってきたわけです。
つまり、能動的に情報を得る能力よりも受動的に得た情報を上手く使う能力が問われるようになったわけです。
ここまでは情報の話をしましたが、これは「信用」という情報が本体である「お金」にも当てはまる話です。
例えば、日本円は日本の国力という信用が日本円の本体であり、一万円札などのお札や硬貨は、それを扱いやすいように実体化したものです。
つまり日本が貧しくなったのは、お金(本体は信用という情報)を上手く使うことができない、という理由が含まれています。
お金を上手く使うということをもう少し細かく言いますと「使うとなくなる消費ではなく(さらに大きなお金になって戻ってくる)投資をする」ということ、これがお金の上手い使い方です。
投資には、運用をして増やすという金融商品への投資という行為だけでなく、自らの能力に対して投資する自分への投資という行為もありますが、日本人はこれらの投資というお金の使い方が非常に不得手であり、それが貧しさへと繋がっています。
そしてさらに追い打ちをかけるのは、日本以外の欧米の先進国を始め、欧米の植民地になった国々が、日本の苦手なところに上手く対応していることです。
具体的には、欧米では金融商品への投資が日本より優れており、新興国ではリープフロッグ現象を追い風に、個人が自らの幸せを追求する自分への投資に優れています。
(ユーチューブやツイッター等を駆使する自分への投資は人口が多いと有利です)
そのため、それらが不得手な日本は相対的に敗れていると言う状況です。
これを別の言い方をしますと「生産活動が著しく労働に偏っている日本は、それらが分散している諸外国に比べて、著しく不利な状況にある」とも言えます。
(日本以外の先進国が金融商品への投資に長けていることを表しているのは、以下のいつもの図です。
そろそろ飽きてきました。笑)
さて、冒頭の三つの要因をここで、もう一度表示します。
1,地理的な要因(日本は島国でかつ、言語は日本語のみ)
2,歴史的な要因(江戸時代の武士の価値観の影響が多大)
3,自然災害が多い(独自の価値観である無常観等を生む)
さらにもう一度言いますが、日本の地理も歴史も自然災害もすべて、誰のせいでもありません。
それによって培われた価値観が時代に合っていないのも、誰のせいでもありません。
それ故に、日本人にとっては逆風の時代と言えます。
が、ここまでの原因がわかれば、後はそのことを強く意識し対策を練り、それを実施することで、この状況を打破することができます。
ここまでお付き合い頂きまして、ありがとうございました。
なお、記事を書く途中で見つけた国土交通省様の資料が面白かったです。
PDFですが、ご興味ある方はどうぞ。