今回のお話は、前に以下の記事で触れたことがあるものです。
以下、該当部分を引用します。
“一億円の腕時計”は時計という道具ではなく“信用(信頼)の証し”です。
「“一億円の腕時計”は、誰もが売ってもらえるものではない」
「“一億円の腕時計”は、重量で金額が決まるものではない」
故に、いざという時(戦争などの緊急時)に持ち運ぶのが容易です。
ちなみにこの“一億円の腕時計”に対するものとして、中田氏は「金(きん)」を例に挙げています。
金(きん)は、基本的にお金さえあれば誰でも売ってもらえるものです。
しかし金額が大きくなればなるほど、金(きん)に換えた時の重量は重くなりますので、いざという時に大量の金(きん)を持って移動するのはかなり大変です。
これを言い換えると「金(きん)はお金の信用(日本円とか米ドルとか)のみで買うことのできるものですが、“一億円の腕時計”を売ってもらうには、売り手との信頼関係、つまり家や個人の信用が必要」となります。
何代も続く由緒正しい名家なら、そのお家の信用でその腕時計が買えます。
信用がないお家の個人の大富豪は、一代でその信用を築く必要があります。
なので、その一億円の腕時計を売ってもらうために、それ以外の腕時計を買って信用を築く必要があるのです。
このように滅多に売ってもらえないものなので、その一億円の腕時計には希少価値があり、いざという時に売ろうとすると「買った時と同等かそれ以上の値段が付く」わけです。
以上です。
というわけで、高価なものをざっと二種類に分けると「自然の恵みによるもの」と、「人の手によるもの」があり、その例を挙げてみました。
自然の恵みによるものが「金(きん)」であり、人の手によるものが「一億円の腕時計」というお話です。
自然の恵みである「金(きん)」は、いろいろな制約があります(重いとか、かさばるとか)。
そして「美しくて希少な価値を持つ(から、大昔から人に欲しいと思われ続けて市場がある)」以外の「信用(=情報の一種)」を含めることができません。
「一億円の腕時計」には、それを所有している人には「信用」があります。
その信用とは「その腕時計を手にすることができてかつ、その(良い状態の)まま保持できている」ということによるものです。
機械式の腕時計は、何年かに一回のオーバーホールの費用が別途発生します。
これは腕時計に限らず絵画など他の美術工芸品にも言えることですが、良い状態のまま長い間それを保持していくのも、かなりのお金がかかるものなんですね。
たとえ大金持ちであっても、あまり興味がないとか不精だとかなどの理由でこの部分を怠っていると、その持ち主としての「信用」を失うというわけです。
この部分でも金(きん)は「錆びないし銀みたいに変色もしないし、火事でも溶けないし」で、管理が比較的楽と言えば楽です。
しかし先ほどもお話ししましたように、逆にその人物の「信用」をこの金(きん)で見ることはできません。
極端に言えば、金(きん)は市場から買うことができますから。
お金さえあればの話ですが、極端なことを言えばそのお金が詐欺や強盗などの犯罪行為で得たものであっても……なわけです。
上記「一億円の腕時計」は、それが買えるところまでの「信用」を築くのが大変なわけです。
そう言えば、偉大な作曲家のモーツァルトは大の博打好きで、博打の借金を返すために作曲をしまくった話は有名ですが。
その博打に負けてできた借金を決して踏み倒そうとはせず、お金持ちの友人であるプフベルクからお金を借りてしのいでいました。
これは「踏み倒すと信用がなくなり、本業ができなくなる」からであり、つまり「本業であるお金持ちの経済圏から追い出される」ことになるからですね。
というわけで、つまり今回の「一億円の腕時計」は「お金持ち経済圏の中にいる」という象徴的なものでもあるわけです。
金(きん)であれば延べ棒みたいな金そのものではなく、例えばどこぞで発掘された紀元前の宝飾品とかやったらいけるかもですが(どうやってその宝飾品を手に入れたんですか、という話で)。
ただしこの場合も、先ほどの「状態を良く保ったまま保持する」という信用を築く行為が必要になります。
で、ここから余談ですけども。
だから暗号資産ってすごいと思いませんか?
金(きん)やお金、つまりその金属の信用やその国の信用以外に、その人物やその他いろいろな信用をじゃんじゃんばりばり含めることができるんですよ?
金属や国の信用、どこかの企業の信用……そういうものがなくとも、その人の信用やその人の信用を得られたネットワークなど、他のものを信用として使うことができるんですよ?
「自然」じゃなくて「人」の力がここまで来ましたよ?
これって、すごくないですか?
私はすごいと思っています。
「さて、ではこのテクノロジーをどうやって使うかなぁー」
っていうところまで、来ました。
……って、それがものすごーく難しいわけですけれども(´;ω;`)