今回は、これまでの記事とは異なり、アンケート調査における研究デザイン、端的に言うと質の高いアンケートを作成するために必要なコトについて紹介していきたいと思います。
※注釈:今回の記事は、3月2日に行われた波多江 崇先生による「統計学セミナー」でご教授頂いた内容を参考とさせていただいております。
❶:目的の明確化
アンケートを作成するとなると、私も含め多くの人が最初にアンケート項目を作成するところからスタートしてしまうと思います。しかし、この時点で既に、アンケート作成は失敗しています。
そもそもアンケートとは、単にデータを集めてくることが目的ではなく、何かを説明するための根拠にしたり、授業の評価を調査するなど、データを収集すること以外に、もっと明確な目的があるはずです。ここが不明確であると、データを集めたところで、調査結果から何が言えるのかがぼやけてしまい、アンケートの質を下げることに繋がります。なので、アンケート調査を実施する際には、アンケート項目を考える以前に、アンケートを実施する主な目的を明確化させることが重要です。
❷:アンケート作成前の事前調査
先ほどアンケートを作成する前に、目的を明確化するように述べましたが、目的を明確化するだけでは当然うまくいきません。
では、具体的に何をするのかというと...論文検索と調査対象者へのインタビュー(何人かに協力してもらい、生の声を直接聞く機会を設けます)、そして自由記述式の小規模アンケートの実施です。
論文検索とは、アンケートに取り入れる項目の質を高めるために、自分が実施したい調査と関連がある、信頼性の高い論文(査読付き論文)を読むことを指します。
ちなみに、アンケートを作成する時だけでなく、研究を行う時も、過去の論文を分析することはかなり重要...というか必ず分析しなければなりません。調査対象者へのインタビューとは、アンケートの本調査を開始する前に、予め数名の方に協力してもらい、調査対象者に直接インタビューすることを指します。
とあるカフェの好感度調査を例に挙げると、予め調査対象であるカフェに出向き、実際にその店を訪れているお客さん数人に直接感想や意見を聞く、ということになります。自由記述式の小規模アンケートは、先述した調査対象者へのインタビューと若干似ている点がありますが、本調査を実施する前の予備調査として行うアンケートのことを言います。
ざっと3つ紹介してみましたが、なかなかアンケートを作成するまでの過程って長いですよね。まだあります。
❸アンケート調査実施者と調査対象者の立場を区別する
みなさんは、アンケートに回答するときに、質問項目の意味を分かりにくく感じたことや、どのように答えるべきか迷ってしまうなどといった経験はありませんか?
このような現象が起きてしまうのは、調査対象者の立場を十分に汲めていないことが原因として考えられます。質問項目の内容だけでなく、質問項目の見やすさやフォントサイズ、逆転項目の有無など...あらゆるものが複合し、アンケートの印象は成り立っていると言えます。調査の対象が子どもなのか、学生なのか、高齢者なのか、ターゲットに合わせたアンケートをデザインできるようにならなければいけません。
❶~❸までが終了したら、ようやくアンケートに取り入れる質問項目を考えるフェーズへと突入します。あと一息です。
❶調査対象の厳密な定義
調査対象は、アンケートを実施する目的によって様々であると思います。
しかし、どんな目的であろうと、調査対象から除外すべき人が出てくる場合がほとんどなので、調査結果から除外する際には、除外する人の条件を厳密に定めるようにしましょう。テストの点数が悪かった人、授業への出席率が低かった人などのように、悪かった、低かったという漠然とした言葉は使わないようにすることを心がけることが大切です。常に客観性を意識します。
❷質問項目の検討
質問項目の検討において大切なことは、実は非常にシンプルです。
質問項目を検討する際には、ブレーンストーミングの考え方を思い出してください。「どんなアイデアも否定しない」、この一言に尽きます。たった一人の力で、質の高いアンケートを作成するのは、ほぼ不可能であると言われています(特に初心者のうちは)。なので、複数人から意見を持ちよってもらい、みんなで質問項目を考えていこう、というくらいの気持ちで臨んだ方が良いのかもしれません。
また、質問項目を取り入れた理由や目的を、文章化しておくことも大切です。これはアンケートの目的を明確化させることと重複しますが、どうしてこの項目が必要であったか、という点がぶれてしまっては、質の高いアンケートは作れません。なので、調査を実施する前に今一度しっかり説明できるようにし、論文などに記載できるとベターです。
❸質問項目の順番
質問項目の順番は、心的負担が少ないものから順に並べていくと良いそうです。
【心的負担の度合い(左:小さい/右:大きい)】
氏名・学部学科、自己評価、他者への評価(授業や教員の評価など)
上記の順番で構成すると、回答者に、心の負担なくアンケートに取り組んでもらえる傾向にあります。
❹アンケート実施後の対応
アンケートに答えた後、アンケートの実施者からフィードバックがもらえたことって、意外と少なくありませんか?時間をかけて答えたあのアンケート、「結局意味あったの?」「アンケート実施前と実施後に何か変わったことあった...?」など、少し釈然としない気持ちを抱いたことが、私自身何度かありました。
恐らく、何となくアンケートに回答したくないな...と感じてしまのは、自分が答えているアンケートの目的が分かりにくいことと、アンケート後にフィードバックがもらえないことが関係していると考えられます。
なので、❹で特に大切なことは、「アンケート後の対応を工夫すること」であるように思われます。このアンケート調査の結果、〇〇を改築することとなりました!というように、自分が答えたアンケートが目に見える形となって、利用されていたら回答者の釈然としない気持ちも晴れますし、何より、アンケートに答える気持ちが向上すると考えられます。
なので、必要なアンケートなのに、どうして回答数が伸びないのだろう...と悩んだ時は、アンケートに回答してもらうように、アンケート後の対応(フィードバック)をしっかり行うことを念頭に置いておくと良いのかもしれません。
今回は、統計学セミナーで学んだことを自分の中で定着させる意味合いも兼ねて、アンケート調査について紹介しました。
自分の記憶が新しいうちに、早く書かないと!という気持ちで、終始焦りながら書いたため、だいぶ文章が荒れてしまっているような気がします、すみません。
しかし、知識をインプットするだけでなく、アウトプットすることで、だいぶ知識が定着してきたように思います。みなさんもぜひ、インプットした知識のアウトプットを習慣化してみてくださいね!
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!