新型コロナ感染対策の緊急事態宣言も終わり、京都でもいよいよ観光キャンペーンが再開されてきています。
今回は、そんな観光キャンペーンのひとつである夜間ライトアップを訪ねてみました。
といっても、そんじょそこらのライトアップじゃありません。
訪ねたのは京都山科にある安祥寺(あんしょうじ)です。
このお寺は非常に由緒あるお寺なのですが、普段は非公開で参拝することができません。
それが今回、特別公開となりました!
しかも、夜間はお堂などをライトアップするという初の試みです。
どんなライトアップになっているんでしょうね?
楽しみです。
安祥寺は京都の東の端、京都盆地から東山を隔てた山科盆地にあります。
地図のように近くに鉄道が通っていますので、交通は便利な場所です。
この鉄道はJR東海道線(琵琶湖線)です。
これに乗って京都駅からわずか一駅の山科(やましな)駅で下車します。
ライトアップに合わせて訪ねていますので、山科駅はもう暗くなってきています。
駅から歩いて10分ちょっとで安祥寺に到着します。
駅から安祥寺への道は最初がわかりにくいので、案内を書かせていただきます。
この写真にある改札口を出ると、左手にスターバックスがあります。
そのスターバックスの左手に歩行者と自転車専用のちいさなトンネルがあり、トンネルは鉄道の下をくぐっていますので、このトンネルを抜けて左に折れてください。
あとはしばらく歩いて、右に一回折れるだけです。
トンネルを抜けると標識が出ていますのでわかりやすいと思います。
安祥寺の手前には琵琶湖疏水(山科疏水)があって、風光明媚です。
春は疎水沿いの桜が綺麗です。
秋の夕刻、いい感じの散歩。
疎水を渡ると安祥寺。
あれっ、閉まっているやん!
まだ開門時間には早かったようです。
安祥寺は非公開寺院ですので、普段はこの鉄の門が閉まっていて拝観できないんです。
疎水の上の空が紫になって、かなり暗くなってきました。
さあ、開門!
日が落ちると、境内は木々に囲まれているため急に真っ暗になってしまいました。
門をくぐって進みます。
階段を登ると、安祥寺本堂(観音堂)。
ご本尊は木造十一面観音菩薩立像(重要文化財)。
この写真でも仏像が少し写っていますね。仏像を近づいて撮ることはご法度です。
本堂の周囲が竹の筒でライトアップされています。
これが竹灯籠。
今回のイベントのために作られたもので、京都産の竹を使っているとのこと。
明かりは蝋燭ではなく電気です。
こちらは、細い竹の先に電気がついていますね。
昼間の本堂。
これは、2019年初夏の安祥寺初めての特別公開時に訪ねた際の写真です。
ライトアップされるとかなり趣が違いますね。どちらも素敵です。
このライトアップは、JR東海 「そうだ京都、行こう」のキャンペーン、「ひかりの京都」の一環なのです。
JR東海 「そうだ京都、行こう」公式サイト
ひかりの京都 https://souda-kyoto.jp/other/hikari/
イベントの説明文がありました。
あたりまえだった、旅や観光と遠ざかってからはや1年半。
全国各地の観光産業に関わる方々にとっては非常に厳しい状況が続いております。京都の皆さんと共に歩んできた私たちJR東海は、
「京都が元気を取り戻す日」と「疫病の収束」を願う
“希望の灯り”で、京都の街と人々を照らす
<ひかりの京都キャンペーン>を開催します。この“希望の灯り”が京都の街を盛り上げ、
人々がもう一度京都へ訪れてくれる事、京都の魅力を思い出してくれる事。
そして、京都に住む人々を元気づけてくれる事を切に願っております。JR東海「そうだ京都、行こう」公式サイト
ひかりの京都 https://souda-kyoto.jp/other/hikari/
観光に関係する方の切実な思いが伝わってきますね。
このひかりの京都キャンペーン、CM動画も作られています。
さて、本堂の横から奥にライトアップされた道が続いています。
どこに行くのでしょう?
進んでみます。
竹灯籠でライトアップされた道の先に鳥居が…。
この道、写真では明るく写っていますが、実際はかなり暗いのです。
この記事の多くの写真は一眼カメラと少し明るめのレンズ(LUMIX G8 & LEICA 12-60mm F2.8-4)を使っているので、明るくしっかりと写ります。
スマホのカメラではこれくらいの望遠(35mm換算80mm)で撮ると手ブレとノイズがひどく、使い物になりません。
スマホのみなさんは撮れないなーと嘆いていました。
最近、カメラはスマホで十分との声も大きいですが、やっぱりこのような暗い場面に遭遇すると一眼カメラの実力のすごさを感じます。
階段を登った先にあったのは、鳥居と「鎮守 青龍社」。
お寺ですが、鳥居と神社ですね。
この青龍社と鳥居は2021年10月に再建されたものです。
もう、できたてホヤホヤ!
ですので、今回の特別公開がお披露目となります。
青龍社は安祥寺発祥の原点とも言える聖域で特別な存在なので、今回再建されたとのこと。
美しくライトアップされた、青龍社。
この再建は、大きな意味があると思うのです。
安祥寺は昔は非常に大きく力を持っていたお寺でした。
今は小さくなってしまいましたが、かつてあった建物を再建することで昔の姿を再び取り戻そうとする努力がされていて、青龍社はその一歩なのかなと思うのです。
(安祥寺は)875年前後には、上・下両所の大伽藍をはじめ、塔頭の坊舎七百余宇が駢列し、天智天皇陵以東山科一帯の山野に広大な寺領を有したと伝えられています。
広大な寺領田園、所蔵の仏像、経典その他の什宝も夥しく、それらは恵運僧都の書かれた「安祥寺資材帳」に詳しく記載されています。
寺格も高く定額寺(官寺として官米が給与される限られた寺)に列し、年分度者(各宗の諸大寺で毎年人数を定めて一定期間経論を学ぶ僧)三人が派遣されるなど、僧侶養成の国家的機関の役割も担っていました。
大きな力を誇った安祥寺は,その後だんだんと衰退し、トドメとして歴史的にも有名な応仁・文明の乱(1467~1477年)にてお堂がすべて焼き落ち、興廃はその極に達したとのことです。
江戸時代になってから少しずつ復興されてきましたがかつての勢いはなく、現在に至っています。
ですので、かつての規模を少しでも取り戻すことが安祥寺の悲願だと思うのです。
その先駆けとして、青龍社が作られたという経緯があるのではないでしょうか。
こちらは安祥寺の寺務所。
ここにご住職がおられて御朱印を書かれていたので、御朱印をいただきながら少し話を伺いました。
ご住職は、今後もできれば失われたお堂を復元させたいとのことでした。ただし、お金があればと苦笑されていました。現実的ですね。
おそらくですが、少しでもその費用を貯めるためにこのような特別公開をされているように思います。
特別公開は今回で3回目とのこと。僕は最初の特別公開のときにも訪ねています。
特に今回の特別公開はJR東海「そうだ京都、行こう」キャンペーンの一環として行われているので、単に拝観料が入ってくるだけではなくてJR東海によるCMやポスターなどの宣伝効果で知名度アップにもなり、それが寄付などにも繋がる可能性があります。
かつてお堂が点在していたという安祥寺の裏山は今は荒れているようですが、ぜひ再びそこにお堂が建って、山がきちんと管理されることを願っています。
ご住職に書いていただいた御朱印。
十一面観音像(重要文化財)とは安祥寺のご本尊で、先に書いたように本堂に安置されています。
そして、安祥寺は国宝も所蔵しています。
木造五智如来坐像で、京都国立博物館に寄託されています。
僕は京都国立博物館には何度も行っているので、この仏像は見慣れています。
博物館の一階に置かれており、かなり大きな仏像が五体揃っていて迫力があります。
かつて安祥寺が大きな力を持っていた証でしょう。
さて、思いのほか長く居ましたので帰路につきましょう。
山科の街あかりを見つつ、坂道を降って山科駅まで歩きます。
秋の夜の寒さと冷たい色の街灯が相まって、なんだか気持ちが淋しくなります。
かつての安祥寺に思いを馳せて、少し感傷的になりながら電車に乗り込みました。
JR東海 「そうだ京都、行こう」公式サイト
ひかりの京都 https://souda-kyoto.jp/other/hikari/
Camera: LUMIX G8
Lenses: LEICA 12-60mm F2.8-4, OLYMPUS 9-18mm F4-5.6, LUMIX 25mm F1.7
安祥寺が初めて一般公開されたときに訪ねた記事です。
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