二人は、病院の廊下ですれ違った。
懐かしい横顔、30年の歳月が二人の間に流れていたが、すぐにお互いが解った。
私は、伯母のお見舞いでこの病院に来たのだ。
地元で、がんセンターと言えばこの病院。彼は、この病院の外科部長になっていた。
偶然にも、伯母の主治医でもあった。
あれは、彼がまだ研修医だったころ、私は、友人に彼を紹介された。
「彼ね!あなたの話ばかりするのよ!一度会ってもらえないかって」
その時、私も「素敵な人だな~って!」思っていたから、二人はすぐに、付き合いだした。
でも、友人の気持ちは、気づかなかった!
2人を応援してくれているとばかり思っていたから・・・・
付き合いだして1年がたったころには、何となく、友人との関係が悪くなってきて、鈍感な私もやっと、友人の気持ちに気が付いた。
彼女もまた、彼が好きだったのだ!
若さゆえの、三角関係!
泥沼化して・・・
友情は、憎しみに変わっていった。
二人の変わり様に、彼は嫌気がさしたのか、アメリカ留学に飛びついた。
いや、その事で,彼はホッとしたんだろうと思う。
私たちは、自然に別れ!
彼女とも、疎遠になった。
私には、彼と一緒にアメリカへ行くと言う選択肢はなかった。
これでいいんんだ‼と自分に言い聞かせて、地元を離れた。
彼を嫌いで別れたわけではない。
だから、彼とのことは、いつしか、美しい思い出になっていたのだ!
その陰に、泥沼になった三角関係はあったけど・・・忘れてしまった。
30年ぶりの再会。
お互いが、今は幸せであることが手に取るように解った。
色々な事を経験をして、深みのある彼の顔を見て、誇らしく思えた。
そんな私も、今、幸せよ!
だって、傍に、一人息子の成長した姿があったから。
子供の居ない伯母は、私の事を、本当の子供の様に可愛がってくれた。
時には厳しく、優しい伯母が、私は大好きだった。
だから、体調が悪いのを私に隠していたことがとっても、哀しかった。
誰の言う事も聞かない頑固な伯母。
「死んでも、入院は嫌」という・・・・
私は度も帰省して、伯母と話した。
病状が進んでいた。伯母はやっと観念した様に、入院を承諾したのだった。
その病院で、まさか、懐かしい人に会えるなんて・・・
伯母らしいなって、おもうの!
私の大好きな、粋な伯母だから・・・
死ぬ前に、こんな、再会を用意してくれたのだ!と
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